第六話 クレイジーな仲間達を紹介するぜ!ベースのエロ忍者、キーボードのキモヲタ、ドラムの貴腐人だZE☆
「オーキ兄、取り敢えず一人ずつ紹介していくね。そこに座って」
オーカに言われて俺は地面に腰を下ろす。
奥にいる五人を改めて見る。
忍者ぽい男の人…あと、凄い美人さん。
秋葉原にいそうなオタク……忍者の違和感も凄いけど、これも違和感凄いな。
スーツの似合いそうな仕事できますオーラが凄まじい知的な感じの人。
最後にゴリラ。
サーカス集団かな?
「よいしょっと」
そしていつの間にか用意していた小さな台にオーカが飛び乗ると、わざとらしく「おほんっ」と咳払いすると、自己紹介を始める。
「改めて、オーキ兄が愛してやまない可愛い妹のオーカ=ペンデレエーク…というのは表の顔…私こそッ!『ジェノサイド』のリーダー!【首狩り姫】ことオーカ=ペンデレエーク!」
「おー……(拍手)」
「決まってたでしょ?」
身長的にお遊戯会を見ているような気分になる。
懐かしいなぁと思いながら、台の上でえへんと胸を張るオーカに自然と口元が緩む。
「幼稚園のお遊戯会を思い出した」
「父性の笑顔っっ!!なんかこう格好良いとかないの?」
「うん」
「即答は悲しいなぁ…じゃあ次は全蔵ね」
オーカと入れ替わって台に上がったのは忍者ぽい男の人。
忍装束に身を包み、映画とかで見たことのある忍者のイメージそのままだ。
「拙者、服部全蔵と申す。由緒正しき忍びの血を引き、幼少の頃より忍として育った故、俗世には疎い。ご理解頂けると拙者も心良し」
「オーカ、こういうのってロールプレイって言うんだっけ?」
「本人は頑なに認めないけどね」
「ろーるぷれいとは、兄君はまた洒落た南蛮語を使われる」
「だって俗世に疎いって…これVRゲーム……」
「我が師も拙者と同じく由緒正しき忍なり。飛鳥の頃よりこの血は途切れず受け継がれておる」
全蔵…名前的には服部半蔵から取ったんだとは思うけど、忍者さんは自分の作ったキャラクターを演じるをしてゲームを楽しむ人なのだろう。
それにしては、なんか堂々としているな…。もしかして本物かも…?
「えっと、師匠の名前とか聞いてもいいのか?有名な人かもしれないし」
「フォクス・アヴローラ・トル・ティータムル・オルベール・リリー・イムブライド師匠です」
「がっつり外国人だなっ!」
「頭文字を繋げるとHATTORIになるのですよ!!兄君酷い!拙者の事を疑うんでござるな!!」
「オーキ兄、これがござるの素だから。それに、コイツの扱いは雑でいいよ」
なんか急に安っぽくなったな。
道に入っていた忍者ぽい言葉遣いも、崩れてるし、凛とした佇まいも、一瞬にして馬鹿ぽくなっている。
「ついでに言うと、ござるは下ネタ大好きな歩く俗物だから」
「下ネタが嫌いな男はいないでござる!違いはオープンかむっつりか!それだけの差でござるぅ!」
「年頃の女の子の前で下ネタ連発してる時点でゴミなのよ」
なんかすごい図だな。大鎌しょった童女に睨まれるアホっぽい忍者。
向こうじゃ絶対見れない光景なのに、ありがたみが少しもない。
でも何となくこっちの砕けた方は接しやすい。年齢が近いのかもしれない。
「次は…じゃあヲタキングで。ござるは早く降りて」
「童女に雑に扱われる…これもまた忍的にありっ!」
「死ねばいいのに」
忍者と入れ替わって台に登ったのは先程秋葉原にいそうなオタクな人だった。
なんというか…典型的だなぁと思った。学園にもアニメが好きな友人がいるが、この人は普通の人が描くオタクをそのまま生き写しにしたような見た目をしている。
肥満的な体型。なで肩に、自信の無さが現れている猫背。
顔の大きさに合っていないフチなしメガネに、油ぽい肌。
服も上はチェックに、下はジーパン。背中に背負われたリュックは中学生が通学で使っていそうなシンプルな機能性に長けた黒色。そこからポスターであろう丸まった紙が飛び出ている。
「我輩…そ、その…ヲタキングと、も、もうし、まま、すぅ…えぇ…仲良く…いや、我輩なんかがおこがましいですよね!も、申し訳ないです!!は、はい!!」
「あれ……?」
なんとも『らしい』挨拶だったが、俺が驚いたのは挨拶の内容ではなく…
「女の人?」
「オーキ兄、ヲタキングは私と同じ雑誌のモデルなの。中学時代の後輩で、見た目は大和撫子って感じの凄い可愛い子なんだよ」
違和感を覚えた俺に、オーカがこそっと見打ちしてくれる。
「ヲタちゃんの所の家、凄く厳しくてね、モデル活動も社会経験だって言ってやってるけど肌の露出は一切無いし、箱入り娘って言葉がぴったりなんだけど…ヲタちゃんは筋金入りの美少女オタクで、周りの目を気にしないあぁいう典型的なオタクに憧れて今のあのキャラメイクでロールプレイしてるの。コンセプトは『異世界に迷い込んだコミュ症オタク』なんだって」
「なるほど…ロールプレイとしては完璧だけど、ここじゃ声が変えられないから」
結論から言うとヲタキングことヲタちゃんの声は凄く可愛らしかった。
こう、頑張って低い声を出そうとしているのは分かるのだが、どうにも隠せていない。
「みんなヲタちゃんのこと頭おかしいとか色々陰口叩いたりするけど、本当にいい子だからよろしくね?」
「実害があるわけじゃないし、ここにいるってことはオーカが仲間?として信頼してるわけだから、何も言うことは無いよ」
「流石オーキ兄、わかってるー!」
「拒否権が無いので強制的だけど、これから世話になると思う。よろしく頼むよ」
心配そうにこちらを見つめるヲタキングに握手を求める。
「よ、よろしく…お願いします…」
「その声辛いなら普通にしてていいぞ?」
「あ、はい…」
「凄いでござる。イケメンとキモオタが握手して、友情を育んでいるはずなのに、キモオタの顔が完全にメスの顔してる光景まじぱねぇでござる。拙者、厠で吐いてきても宜しくて?」
「ほら、オーキ兄って大人気のソシャゲ、『お前の穴を埋めてやる~擬人化ネジ達とすうぃーとな時間~』のヲタちゃんの推しである、ステンレス製六角穴付ボルトM10×50mmネジくんにそっくりだから…」
「それキャラクター何体いるんでござるか…」
「八百万」
「神様か何かでござるかな?」
後でオーカと全蔵が何か言っているがよく分からないので無視する。
オーカ、俺にネットの闇はまだ早いよ。
「んじゃ、次はマーサさんね」
「よろしくお願いしますね、お兄さん」
「うぇっ!?え、どこ?」
名前的に奥にいた美人さんかと思って美人さんを見ていると、唐突に耳元から声がする。
思わず変な声が出るが、声のした方を見てもオーカがにししっといつもの笑顔を浮かべているだけで他に誰もいない。
「オーキ兄、肩」
「肩…?」
「あら、見つかってしまいました」
オーカがちょんちょんと自分の左肩を指さすので、ふと左肩に視線をやると、くすくすと口元を上品に手で隠した妖精がいた。
「改めまして、マーサです」
「よ、よろしくお願いします」
ふわりと背中にある四枚翅で飛び上がったマーサさんは、俺の目の前で空を飛びながら制止すると、俺の小指ほどの小さな頭を下げる。
「ナビPCが正体不明の魔女の時のみ選べる妖精族っていう種族で、このゲームの中でも三人しか遭遇してない超激レアなの。オーキ兄のももしかしたら未出現のナビPCかもね」
「なんていうか…凄い凝ってるな」
「優遇感凄いよね…」
少しでも疑問があると、すぐにオーカが耳打ちで教えてくれる。ありがたい。
それにしても、マーサさんは本当に凝ってるな…。
奥の美人さんも、儚げというか、氷のようにも思えるが、マーサさんは神々しい。
おっとりとした口調に、上品な佇まい。
清楚という言葉が似合う枝毛の無いエメラルドブルーの髪に、吸い込まれそうな程透き通ったエメラルドグリーンの瞳はトロンと目尻が下がっている。
…そう、これは…
「これは…」
「うんうん、分かるでござるよ。四、五十の髭の良く似合うイケおじ様と並んでるおっとり若奥様って感じでござろう?」
「美人教師…」
「オーカ殿、ネットによって汚れた拙者をそんな目で見ないで…!」
「まだ何も言ってない」
いつの間にか隣に並んでいた全蔵に、優しい瞳で共感を求められたが、そこまで具体的なことは考えていない。
「先程は美味しく頂きました。ありがとうございます」
「美味しく?」
「あー、マーサ殿は貴腐人なのでごさるよ」
「貴婦人?」
「腐ってる方でござる。男同士の絡み合いを楽しむ趣向の持ち主でござる」
「イケメンとオタクの禁断の恋…ぐふふっ…失礼しました。はしたないところを…ぽっ」
ぽっと口で言って頬を染めるマーサさん。
けど俺は見逃していない。途中で、凄いだらしない顔でヨダレを垂らしながら笑みを浮かべていたマーサさんの姿を。
「オーキ兄、マーサさんには騙されちゃだめだよ?ただの腐女子ならいいけど、向こうでの趣味が近所の男の子の憧れのお姉さんを演じて恋に落とした後、耳元でBL的なあれを囁いて心を折ることだから」
「BL的なあれ…?」
「僕、学校でマサトくんと仲がいいのね。その子は中もいいのかしら?それとも不良のアキラくんが恋人なのかな?二人と織り成す三角関係。ふふ、お姉さん楽しみ。今度[ピー]して[ピー]な[ピー]を[ピー]に挿れて[ピー]出して[ピーーーー]の後に[ピーーーー]が[ピーーーーーー]で、お姉さんに[ピーーーーーーーーーーー]してね。とか」
「それ、不審者として捕まらないの?」
「後半ほとんどNGワードに引っかかってピー音しか聞こえなかったでござる。うーん、近所のお姉さん
にそんなこと言われたら…忍的に興奮する!」
「淫者は黙ってて」
「淫の里の最強忍者、淫影とは拙者のことでござる!」
「それ、怒られないか…?」
取り敢えずマーサさんへの警戒を強めよう。
下手に惑わされると取って食べられそうだ。
「純粋な青年を……あれして…こうで……ぐふふっ…」
今もギラついた目で俺を見ながらヨダレを垂らしている。
オーカの知り合いなので油断していたが、あれは怖い。
「ちなみにマーサさんは戦闘になると、ヤクザも裸足で逃げ出すほど狂気じみた戦いをするから気をつけてね」
気をつけることが多すぎるよ…。
《後書きのコーナー》
オーカ「ようやくこれからの仲間を紹介出来ると思ったらまだ半分だよ!」
オーキ「キャラが濃すぎる…」
オーカ「濃厚キャラクターって響き美味しそうじゃない?」
オーキ「じゃない」
オーカ「ぶーぶー」
オーキ「あと残りの人達はどんな人達なんだ?」
オーカ「ということで次回、『筋肉ときどきドMのち有田みかん』!!お楽しみに!」
オーキ「嫌な予感しかしない終わり方!!」