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《 Infinity Pioneer Online 》~一般人の兄が妹にオタクに染められる話~  作者: いちにょん
第二章 堕チタ天使ノ涙ハ昇ル
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第八話 多分、闘技大会

☆ sideーオーキ=ペンデレエーク


「遂にやって参りました第四回闘技大会。今回は前回優勝者のオーカ殿にお越し頂いているでござる」

「よろしくお願いします」

「今回の闘技大会、全三話でお送りしていきたいと思っているでござるが、そこのとこどうでござるか?」

「どうなんですかお兄ちゃん」

「流れるようにコメントし難いキラーパスを寄越すな」


 今日は現実世界では日曜日。待ちに待った闘技大会の日だ。久しぶりに八人揃った…と思ったのだが、ヲタキングが高速が事故で渋滞した関係で今日の午後からしか顔を出せないとのこと。《白帝》戦以来の全員での戦いだと思ったのだが、残念だ。


「最初はビギナー戦とタッグ戦でござるな」

「クレアちゃんはタッグ戦どうする?ヲタちゃんいないけど」

「一人でやる。ソロプレイ…マスター[ピーーー]」

「あ、うん。頑張って」


 タッグ戦は俺とオーカ、全蔵とマーサさん、バルクとディフィ、クレアさんとヲタキングのタッグで出場エントリーしてある。

 俺とオーカは一回戦から出番なので後十分もせず控えに呼ばれるだろう。


「オーキ兄、武器の貯蔵は十分か?」

「試合中、アイテムボックスからアイテムを出すのって禁止じゃなかったか?」

「あ、うん、そうなんだけどさ」


 闘技大会は大きな楕円形をしたスタジアムで行われる。スタジアムの中心には一辺十五メートル程の正方形のリングが六つ並べなられており、二階の観客席どこからでも試合が見れる状態だ。

 先程ちらっと観客席を見てきたのだが、ほぼ満員でプレイヤー、NPC問わず、お祭りのような盛り上がりで試合開始を今か今かと待っていた。

 『アヴストュニール商会』からも応援が駆けつけており、でっかい横断幕に『 welcome to

お兄ちゃん 』と書かれていた。再利用してるんじゃないよ。


「んじゃ、オーキ兄、行きますか」

「おう」



「よろしくお願いします」

「よろ~」

「よろしく」

「ども」


 挨拶を交わし、お互いに武器を構える。

 相手の名前は…《トロント/Lv39/狩人》と《アリババ/Lv40/獣戦士》だ。

 二人ともゲームらしい端正な顔つきの男性で、声音的に俺より少し上くらいだろうか…トロントさんは身の丈近い大弓を、アリババさんは大槌を手にしている。

 狩人は初期職だが、トロントさんの見た目は鬼のような角が生えているので恐らく『上位種』だろう。アリババさんの『獣戦士』は上位職のはず…。レベル的にもトップ層だと言うことが分かる。


「オーキ兄、打ち合わせ通りお願いね」

「あぁ、その打ち合わせってやつ初耳なんだが、取り敢えず頑張るよ」

「………高度の柔軟性を維持しつつ臨機応変せよ!」

「高度な柔軟性…臨機応変……つまり、俺任せか」

「That's Right」


 何か作戦があるのなら言って欲しかった…。

 えっと…この大会のルールはHP全損するか、降参、制限時間10分を超えた時点でHPの割合が低い方が負け。

 アイテムは試合開始直後に携帯している物のみ使用可能。アイテムボックスから取り出すのは禁止。

 MPは試合開始時、最大値の半分となり、時間経過回復でのMPの量が倍になる。


 ディフィ曰く、殴れば勝ち。とのこと。脳筋万歳。


『 READY 3 2 1 START 』


 少しルールを思い出しているうちに試合開始時刻となり、目の前のウィンドウが試合開始を告げる。


「突撃ーー!!」

「高度な柔軟性を維持できない、脳筋戦法!!!」


 試合開始と同時に俺とオーカは大鎌と槍斧を構えて一直線に突撃。

 対して狩人のトロントさんは後方へ、アリババさんは、俺たちを迎え撃つために前に出てくる。


「『戦気』、『変食』」


 傭兵がLv30で習得できるスキル『戦気』を使って自分にバフを掛け、『変食』で効果を高める。

 ちらりとオーカに目線を合わせると、俺に狩人のトロントさんを任せるようだ。


 俺は走りながら槍斧をアリババさんに投擲する。虚をつかれたアリババさんがギリギリのところで槍斧を大槌で弾く。

 しかし、その間にオーカが懐に潜り込んでいる。アリババさんの鳩尾に肘を突き立て、徒手空拳(・・・・)でアリババさんにラッシュを仕掛ける。


 《IPO》はその手に持っているアイテムが装備武器として認識される。木の枝を持っていたら、装備武器は木の枝だし、オーカの手から離れた大鎌を俺が持っていれば俺の装備は大鎌に変わる。


 徒手空拳でもオーカは強いんだよな…あ、綺麗に鉄山靠(てつざんこう)がアリババさんに決まった。

 身長差を考えると父親と娘が戯れているようにしか見えないのだが、ステータスとオーカの技術でアリババさんの上半身が仰け反るくらいの威力が出ている。


「ちっ…!!」


 アリババさんがフォローに入れないと悟ったトロントさんは舌打ちをしながら俺に一射放つと、距離を取り始める。

 距離の取り方が上手いな…近距離だから詰めれば勝てると思ったんだけど、アリババさんとオーカを上手く使って俺との距離を一定以上に離してくる。


 オーカもSTRが高いとは言え、それは装備由来のもので、本人の基礎ステータスはLucにほぼ極振り。VITとSTR重視の獣戦士相手に攻撃を貰わないように有効打を決めるのはオーカでも苦戦しているようだ。


「ふっ…!」


 動きに緩急を付け、フェイントを挟んでみるが、流石はトッププレイヤー、落ち着いた様子で一つ一つ丁寧に対応され、距離を取られ続ける。


「『アローレイン』」

「オーキ兄!」

「くっ…!!」


 トロントさんの視線がチラリと自分のステータスが表示されているあたりに向いた瞬間、矢を番えていない弓を引き絞り、上空へと放つ。


 『アローレイン』

 狩人及び、装備が弓の時、ステータスに補正がかかる職業の共通奥義。MPが最大時、MPの八割を消費することで広範囲に弓の雨を振らせるスキル。

 一撃の威力は少ないものの、降り注ぐ弓の雨は回避不可能。確実にダメージを蓄積される。

 この狭いステージの中では有利だと思っていたが、場を整えられたら…!!


「『根下ろし』、『変食』」


 スキル『不倒』の通常スキル(NS)はLv1でリジェネ効果のある『自然治癒』から始まり、『状態異常耐性』、『逆境』が続き、この『根下ろし』はLv5で覚えるNS。

 自分のVITを2倍する代わりに、その場から動けなくなるというデメリットがある産廃スキルらしいが…『変食』と『自然治癒』を合わせれば…


「削れたのは二割か…」

「私、3割切った~!」

「くっ、面倒なスキルだな!」

「一点集中のスキルじゃねぇと通らないぞ!!」


 俺のHPは残り七割。オーカは三割、アリババさんは残り五割。

 獣戦士はVIT値が高く、恐らくトロントさんのスキルに合わせて防御系のスキルを使ったのだろう、オーカに削れたHPを考えると『アローレイン』で削れたのは俺と同じく二割程度だ。


「オーカ、変わるか?」

「んー、このまま続行で。オーキ兄には、色々と実戦で感じ取って欲しいので!まぁ、死んでも安心して、私が逆転してみせるから」

「現状のHPが一番低いのによく言うよ…」


 自信満々の笑顔でサムズアップをするオーカを後目に、俺は頭の中で次の立ち回りを組み立てて行く。


 トロントさんは俺との常に距離を保っている。

 並大抵のフェイクやフェイントにも慌てず対処できるほど場馴れしている。

 一瞬で距離を詰めようにも、常に一定の距離が離れているので、それがまた中々に難しい。

 正攻法で隙が出来るほど甘くない…なら、思いつくだけ全部試すしかないな。


「よいしょっ!!!」


 掛け声と共にオーカの大鎌を投擲と見せかけて、端をスルチンで巻いておき、手元に残す。

 投げたはずの大鎌が俺の手元に残り、自分に来ないことを悟ったが、既に回避行動に出ていたトロントさんに隙が生まれた。

 その一瞬を見逃さず、俺はトロントさんに全力疾走。もちろんすぐにトロントさんは体勢を立て直し、俺との距離を置きにアリババさんが間に入るように走る。


「スイッチ!」


 俺とオーカ、アリババさん、トロントさんが一直線上になった瞬間、俺はアリババさんの顔目掛けて今度こそ大鎌を投擲。

 オーカの頭のちょっと上を通っていきなり飛んできた大鎌にアリババさんはギョッと驚き、籠手を使って防ごうとする。

 そして俺の声を聞いてオーカと俺の役割が変わると察知したトロントさんはオーカの行動に視線が吸い寄せられる。


「絶好…!!」


 一瞬の隙を逃さずに全速力でトロントさんとの間合いを詰める。

 一気には決めない。まず潰すのは機動力。


 右手をチョキに構え、トロントさんの目に向けて真っ直ぐ放つ。しまったという顔を浮かべたトロントさんは、俺の手を避けるために上体を仰け反らせる。

 避けられたが、あくまでこれはブラフ。俺の左足は踏み込みと共にトロントさんの右足を踏みつけている。腰に下げていた短剣を素早く抜剣。引っ込められないトロントさんの右太ももを切り裂く。


「らぁっ!!」


 これだけでは終わらない。身を素早く屈めての水平蹴り。膝裏を直撃した事で膝カックンのように膝が曲がってしまったトロントさん。

 更に畳み掛ける…!


「後ろ!!オーキ兄、ごめん!」

「っ…!」


 右の拳を追撃として加えようとした途端、後ろから急速にこちらに駆け寄る足音とオーカの声が聞こえる。

 咄嗟にその場を飛び退くと、アリババさんが先程まで俺がいた位置に拳を叩きつけていた。

 意識外からの攻撃には補正がかかるこのゲーム、装備頼りのVITしか持ち合わせていない俺に直撃したら本当に危なかった…。


 肩で息をしながら、一度深く空気を吸い込んで乱れた呼吸を整える。


「ふぅ…危なかった…」

「ごめん、オーキ兄、今のはこっちのミス」

「いや、イレギュラーだ。仕方ない」


 申し訳なさそうに俺の傍に駆け寄ってきたオーカの頭を軽く撫で、同じく並んだアリババさんとトロントさんを見据える。


「もう少しでアローレインのクールタイムが空けるから気を付けてね」

「俺はなんとかなるけど、オーカは耐えられるか?」

「九割五分死ぬね」

「ダメじゃないか…」

「だからそれまでにあの獣野郎をぶちのめすっ!!」

「頼もしいのか…なんというか…」


 オーカと軽口を交わすが、俺とオーカの視線は2人から微塵も動くことは無い。

 経験が無くても肌に触る空気感で決着が近い事が分かる。つまり、大きな決め手を使う為に、お互いを崩し始める駆け引きがこれから始まるということだ。


 一瞬でも思考を間違えれば、その隙を絶対に突かれる。

 相手が何をしてくるか分からない…選択肢は無限大…あぁ、いい…これは野球には無い駆け引きだ。

 自分でも口角が釣り上がるのが分かる。

 カチリと歯車がハマり、集中力が凝縮される感覚。その瞬間、俺の思考は加速する


「『 ロージンアローッ!! 』」


 俺は息を吸い込むと、会場全体に響くような大声で存在しない(・・・・・・)スキルの名前を叫ぶ。

 俺はこの世界でただ一つのスキル『暴食の罪』を持っている。それは相手の二人も知っていて初見の技には警戒しているだろう。そして、『アロー』という名前から矢を放つ距離を詰めない中距離からの攻撃だと瞬時に予想する…はず。

 俺の予想通り、アリババさんは瞬時にトロントさんを守るように前に出てVITを上げるスキルを使用する。


 だが、そんなスキルは存在しない。だから硬直も無ければ予備動作も無い。

 打ち合わせもしていないのに、俺と同時に一瞬の隙を見逃さず、オーカが駆ける。


「チッ…!」


 舌打ちを零すアリババさん。俺達は最初と同じくアリババさん対オーカ、俺対トロントさんの構図が出来上がる。

 ふりだしに戻ったが、先程の探り合いとは違い、同時にお互いがお互いの決め技を使用する為に動き出す。


「……」

「させるか…!!」


 俺とトロントさんの距離は最初の距離を取っていた時よりも近い。隙があれば詰められるような近距離型の俺が有利な配置。

 しかし、『アローレイン』のクールタイムが空けるのか、トロントさんの視線はチラリチラリと頻繁にウィンドウに注がれている。


 アローレインが次放たれればオーカは十中八九、HPが全損する。それを避けるためには広範囲攻撃であるアローレインを撃たせないことが俺の役目。

 無理矢理にでもトロントさんとの距離を詰める。


「………」


 駆ける俺との距離を取るために最初と同じ攻防のように俺から距離を取ろうと動くトロントさん。

 しかし、その動きに違和感があった。


 確かに逃げてはいる…けど、距離の詰まり方がさっきと違う。集中力が切れてる?違う…多分、意図的だ…じゃあ何のために…。

 マーサさんのように後衛職でも、近接の切り札を持っている?でもあれは威力の高い攻撃をするためのタメを作れる技術があってこそ…トロントさんもそれを持ち合わせている?いや、持っているならさっきの追い詰めたタイミングでやっているはず。

 だが、アローレインという避けては通れない道がある限り、詰めるしかないっ!


「『アローレイン』」


☆side-out


 オーキが必死に距離を詰めようとするのに対してトロントはある狙いを持っていた。


 違和感を持ったオーキの直感は正しく、トロントの作戦は、体力の少ないオーカをアローレインで仕留めてオーキをアリババと二人で倒すのではなく、HPがほぼフルに近いオーキのHPを一撃で刈り取り、最後に瀕死間近のオーカを倒すものだ。


「『アローレイン』」


 アローレインというスキルは矢を装填していない弓を引くことでモーションが完成する。

 その後、MPの高密度の塊が一本の矢の形を形成し、空に放った後に上昇と共に拡散し、降り注ぐ。


 第一回闘技大会にて、フィールド範囲に降り注ぐ『アローレイン』が不可避の攻撃として猛威を奮った。

 第二回大会では多くのプレイヤーが対策を講じ、『アローレイン』を無力化した。

 そして前回の第三回大会では『アローレイン』が再び光を浴びることになった。


 普通なら上空に向かって放ち、降り注ぐ矢を相手にぶつける『アローレイン』だが、第三回大会では拡散する前の『アローレイン』をゼロ距離で相手に当てるという『ゼロレイン』と呼ばれるテクニックが光を浴びることになった要因だ。


 『アローレイン』の仕様上、消費MP量×【定数】÷矢の数が一本の矢の威力に設定されている。

 それが意味するのは、拡散する前の矢は消費MP×【定数】の超強力な一点攻撃に化けるということだ。

 拡散が始まる5mが射程範囲であり、ほぼ初見技に近いこれは、今大会に参加しているプレイヤーのほとんどは対策を講じていた。


 そう、オーキはこの仕様を知らない。


 この時、観客席では、トロントの狙いに気づいて「やっべww伝え忘れてたでござるww」というムカつく顔をした忍者が目撃されていたとかなんとか。


 既にオーキとトロントの距離は3mを切っており、トロントは空へ向けていた矢をオーキに放つためにオーキへと矢先を向けている。


 そして凝縮された魔力の塊がオーキに向かって放たれて─────


☆sideーオーキ=ペンデレエーク


「『アローレイン』」

「っ……!!」


 スローモーションの如く流れる光景と、それを追い越して高速で働く思考。

 避けなければ『死』…。横っ飛びは足が間に合わない。機動力が無くなれば負ける。

 『アローレイン』の狙いは俺の胸の辺り。上と横は不可能。前も後ろも無理。残された選択肢は下。


 目の前に広がるエフェクトの光を避けて下へ。


 どうやって?


 しゃがむ…倒れ込む…正解はそこにしかない。


 動け、動け…。


 思考に追いつかない体に苛立ちを覚えていると、ふと、体全身の力みを感じた。

 優勝のかかった試合のように、初めて公式戦でマウンドに立った時のような、ガチガチに固まった体。


 解決策は知ってる。簡単だ。力を抜けばいい。


 ふわり。と、体が軽くなった感触がした。


 あやつり人形の糸を切ったかのように、体が重力に従って落ちていくのが分かる。

 そして、もう大丈夫だと言うことがステータスウィンドウを見なくても分かった。


 相手は撃った。


 俺は避けた。


 次は俺の番。


☆ side-out


 観客席に座るプレイヤー、NPCの視線は漏れなく一つのステージに注がれていた。

 クランメンバーを、友人を、推しの選手を、全てを置いて誰もがそのステージを見ていた。


 見覚えのある光景。

 前回大会で猛威を奮った『アローレイン』の零距離接射。

 対するはゼノ・モンスター『白帝』を倒した立役者オーキ・ペンデレエーク。


 誰もが決まったと思った。


 誰もが最強(ジェノサイド)の敗北を期待した。


 そして、誰もが正反対の一縷の期待を抱いた。


「うそぉ………」


 会場の中で真っ先に間の抜けた声を上げたのはディフィ。

 普段のクールな声とは裏腹に、素で出てしまったその声。

 そして次の瞬間には観客席から身を乗り出して、満面の笑みでオーキの次の行動に目を向けた。




『 『 『 ─────── !!! 』 』 』



 ディフィに遅れて一瞬の静寂の後に会場は沸いた。

 手に持っていた物を思わず投げてしまった人が多数。観客席には多くの物が宙を舞い、そしてそれを誰も気にしない程に人々は目の前の光景に声を上げ、熱気を感じていた。


☆sideーオーキ=ペンデレエーク


「ありがとうございました」

「こちらこそ、まさか……あそこで避けられるとは思いませんでした。また来月、リベンジします」

「次『は』勝ちます」

「次『も』私たちが勝つよ」


 『アローレイン』を避けた俺は、スキルで硬直していたトロントさんを追い込み、最後は俺とオーカの二人でアリババさんを完封。

 数時間とも思えた十数分の試合は、俺とオーカの勝利で幕を閉じた。


「やったね、オーキ兄」

「あぁ、やったけど、お前…『アローレイン』のこと隠してたな?」

「てへっ」

「俺が避けられなかったらどうしてたんだよ?」

「にしし…オーキ兄は絶対避けるでしょ?実際、避けたわけだし」

「確かに…避けられたな…あれ?そういう問題か?」


 オーカの理論に首を傾げながら、控え室で駄弁る俺とオーカ。次の試合まで三十分程。話しながらも、頭の中では次の相手のことをシミュレーションする。


「おい…」

「…ん?」

「次の試合、俺達との勝負だ。首を洗って待っておけ」


 次の試合まで残り十分を切った頃、バルクよりは少し小柄だがオーカと並べると巨人と言いたくなる風貌の男と、小柄な女性が俺達に話しかけてきた。

 その視線と言葉から分かるように明らかな敵意。この場合はライバル視…の方が適切かもしれないが、それを向けてくる二人組にオーカはにひるに口角を持ち上げる。


「受けて立つよ…かかっておいで」

「ふんっ」


 オーカの挑発に鼻を鳴らしてその場を去る男と、その後に続く女性。


「今のは?」

「上位ランカー…『剛鉄』ダグズと『弓姫』サーニャだね。二人ともトップクランのリーダーだよ」

「そうなのか」

「油断出来ない相手だし、こっちのこと随分と意識してたみたい。研究されてると思った方がいいよ」

「ああ…」


 胸の奥に突っかかる違和感に俺は不安を覚えながら、ダグズさんとサーニャさんの背中をじっと見つめた。

オーキ「次回、『迫り来る闇』」

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