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《 Infinity Pioneer Online 》~一般人の兄が妹にオタクに染められる話~  作者: いちにょん
第二章 堕チタ天使ノ涙ハ昇ル
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第六話 私の名前は佐久間。次回登場予定の無い悲しい女よ

☆ sideー二三桜樹


「えっと、宜しくお願いします」

「はい~!安全運転で行くのでお兄さん、よろしくですよ」

「あーちゃん、よろしくね」

「それでは出発します」


 朝の登校。長時間、電車に揺られて立ち続けるのは個人的には億劫な所。そこで桜華と時間が合う時のみ、登校用の専用車に同行させて貰えることになった。

 運転手は桜華のマネージャーの山宮(やまみや)(あざみ)さん。実は既に《IPO》で面識があり、《白帝》戦でお世話になった『あ、多忙よ』さんだ。

 最初はスカウトマンとして働いていたらしいのだが、桜華のスケジュールを見たりしていたら何故かマネージャーに落ち着いたらしい。


「《白帝》戦、見てましたよ~!大活躍だったじゃないですか!」

「ありがとうございます」

「間髪入れずに、大規模レイドですか!楽しいゲームライフしてますね~!」

「はははっ、大忙しですよ」

「さく兄は面倒事を引き寄せるタイプなので~」

「見た目通りって感じですね!これからも面白いネタ期待してますよ~!!」

「勘弁してくださいよ…」



「おはよう、佐久間さん。その腕どうしたんだ?骨折?」

「あぁ、昨日の帰宅部でな…まだ運のいい方だよ。一瞬判断間違えてたら首から上が消えてたからな、はははっ」

「HAHAHA」


 触れちゃダメだ。何も言わない。何も聞いてはいけない。帰宅部は絶対の不可侵。笑って誤魔化すんだ。頑張れ俺の表情筋、釣り上がれ俺の口角、小宇宙(コスモ)を燃やせ。


 テレテレテテン♪︎テレテレテレレン♪︎


「ん?全蔵からか…もしもし、どうした?」

『桜樹殿、窓!教室の一番後ろの窓開けて欲しいでござる!!遅刻しちゃう!!!』

「あぁ、了解」

『助かるでござる!!……こらぁー!全蔵!!昇降口通れ阿呆ーーー!!!!……ひぃぃぃいい!!桜樹殿早くぅ!!』


 始業まで後一分と言う所で全蔵から電話が掛かってくる。運悪く電源を切り忘れていたので気づけたが、あの馬鹿忍者は何をしているんだ。


 取り敢えず言われた通りに一番後ろの窓を開けると、その瞬間、下から三階であるここまで登ってきたであろう全蔵が顔を出す。


「はぁ…はぁ…おはようでござる」

「あっ」

「あひんっ……なぜぇぇぇぇ!!?」

「顔が近くて…気持ち悪かったから……」


 息を荒げながら至近距離で「おはよう」と言われたらついついビンタしても仕方ない。

 真っ逆さまに落ちていく全蔵。腕を伸ばせば助けられたが、相手が相手なので無視でいいか。


「窓、閉めとこ」

「桜樹って割と鬼畜だよな」

「携帯の電源切っておかないと」

「ふっ~!スマホよりも薄い友情~!」


 全蔵は怪我無く、遅刻した。



「拙者、一回でいいから学園全体を使って隠れんぼしてみたいでござる」

「馬鹿は休み休み言え」

「拙者……ふぅ……一回でいいから……すぅ…学園全体で」

「あ、そういうボケいいから」

「佐久間さん、この後暇?カラオケ行かないか?」

「この怪我じゃ帰宅部の活動も出来ないだろうから、いいぜ」

「帰宅部の活動が出来ないって割とパワーワード」


 放課後、唐突に頭の悪い事を言い始めた全蔵。それを無視して佐久間さんと放課後の遊びを計画する。

 帰宅出来ない帰宅部って学校で暮らしてそう。俺もフレンドしたい。


「むっ、服部、学園を使って隠れんぼをするのか!面白そうだな!!!放送部、橋本!!!」

「ラジャー!!」

「応援部、桜大門!!」

「押忍ッ!!窓開けますッ!!叫びますッ!!!隠れんぼする奴~~!!この指止まれ~~ッ!!」

「広報部、赤松!!」

「既にルールを纏めた資料を作成済みです。緊急連絡を利用して学園生徒全員に送信しますか?」

「行け!私が許可する!!!」


 ピンポンパンポーン


『二年、放送部の橋本です。これより学園を使った隠れんぼを開催致します。参加希望の生徒は第一グラウンドに集合してください』


 ピンポンパンポーン


「お前ら、隠れんぼしたいかーー!!!」

「「「うおおおおおおおお!!!!」」」

「誰にも見つけられたくないかーーー!!」

「「「うおおおおおおおお!!!!」」」

「ミッキー先生はーーー!?」

「「「世界一可愛いよーー!!!!」」」







 なんだこれ。






「遂に始まったでござるか…学園隠れんぼ大会…」

「発案者お前だろ」

「桜樹、これは殺らなきゃ殺られる戦い。逃げ出す訳にはいかないぜ?」

「勝手に殺し合ってて欲しい」


 ピンポンパンポーン


『学園長の厳島です。今回の学園隠れんぼ大会ですが…ルールに乗っ取り制限時間以内に発見されなかった者には食券30枚、鬼には見つけた生徒の数分だけ食券を配布致します』


 ピンポンパンポーン


「ふっ、佐久間さん。これは殺らなきゃ殺られる戦い。逃げ出す訳にはいかないぜ?」

「食券に釣られたでござるな」

「だが、この大会、そう甘くはいかないぜ……毎回唐突に開催される学園大会、上位勢は帰宅部の俺でも苦戦する奴らばかりだ」

「前回の雪辱、晴らすでござるよ」

「「「「「「「学園大会四天王をお呼びかな?」」」」」」」

「俺の一声で全てを動かす、放送部───橋本!!」

「近付いた奴は拳で黙らせます、応援部──桜大門!!」

「僕の辞書に不可能の文字は……78件ヒットしました!広報部──赤松!!」

「クレーンゲームは苦手です。ギャルゲなら簡単に落とせるのに…ゲーセン同好会───高梨!!!」

「私に触れた者はホモォへと誘われる…BL愛好同好会──浜崎!」

「敵も味方も審判さえも金で解決します。金持ち──金成!!」

「え、えーっと、多分、風紀委員長──早乙女!!」


 学園四天王が七人居ることに突っ込めばいいのか、大半が顔見知りな事を突っ込めばいいのか、ボケが飽和し過ぎてよく分からないので俺は無視する方向でいきます。こういう相手は構うと懐かれて家まで着いてくるから良くない。


「王者の私をお忘れじゃないかしら?」


 う~わ…また増えた。


「私は前回の学園ケイドロ大会、十八代目チャンピオン…佐久間。次回登場予定の無い悲しい女よ」

「佐久間って…」

「俺の双子の姉貴」

「次回登場予定が無いとは…」

「私は少しでも爪痕を残したい。多くの読者にインパクトを植え付けたい」

「そんなひな壇芸人みたいな」

「あわよくば読者人気キャラクター投票で『登場回数少ないのに異様に人気が高いキャラ』に私はなりたいッ!!」

「桜樹殿、メインキャラクターの拙者達からあの御仁にかける言葉はござらん」

「ごめん、本当に意味がわからない」


 ピンポンパンポーン


『これより、学園隠れんぼ大会を開催します』


 ピンポンパンポーン


「俺、ルール把握してねぇ!!?」

「桜樹殿、急いで隠れるでござるよ!!」


 そんな事言われてもあの人達、放って置いていいの!?まだ全部捌ききれて無いよ!?

 と、取り敢えず、ロッカーに隠れて…!!


「あ、どうも」


 鉢合わせた…それも前回チャンピオンと…。

 何故こんな微妙に狭い清掃道具の入ったロッカーの中で一緒になるんだ。


「佐久間さんのお姉さんでしたっけ?二三桜樹っていいます。よろしくお願いします」

「佐久間怜です。女の子と二人きり、こんな状況でよく平然としてるわね」

「あ、ルール確認しないと」

「よくこの状況で冷静さを保っていられるわね!?」

「あ、食券欲しいので静かにお願いします」


 学園の食堂のランチは一律500円。それが30枚だから15000円分…これを逃す訳にはいかない。

 まずはルールを知ることが大切だ。俺は携帯を開いてメールから今回のルールを確認する。


 制限時間は二時間。15分ごとに鐘が鳴り、鐘が鳴ったら隠れる場所を変えなければならない。鬼は相手が見えた状態で見つけた宣言をすれば確保となる。

 鬼は───────二三桜樹


「俺のランチB定食見つけたぁ!!」

「せめて名前で呼んでくれるっ!?」


 これでチャンピオンは潰れた。後は手強そうな四天王(七人)をどれだけ短時間で見つけられるか…


『おい、押すなよ。狭いだろ』

『し、仕方ないだろ!おい、どこ触ってんだよ!』

『隣から感じるホモォの波動』


 あ、これ全員、隣の個人ロッカーにいるわ。


 取り敢えず端からロッカーを開けていき、捕まえたのは八人。残り1時間50分、獲得食券は8枚。


「四天王が敗れたようだが、まだこの学園には裏四天王である俺がいる!!園芸部部長ッ!!轟だぁ!!いざ尋常に勝負しろッ!!」

「スタミナ丼定食見つけた」


 廊下を歩けば裏四天王だの、十英傑だの、十二神将だのよく分からない奴らが次々と姿を見せてくれる。この人たち、隠れんぼを知らないのだろうか。

 これで開始から三十分で食券47枚。入れ食いとはこの事だな。


「一番厄介そうな全蔵は…」


 今日のアイツの昼ごはんはカツサンド。あれはロ〇ソンのサクサクのやつ。昼から経った時間から逆算して匂いの掠れ具合は…


「そこだな」

「んなっ!?」


 匂いを頼りに壁に擬態していた全蔵を捕まえる。馬鹿め、相手は素人じゃない。飢えた獣だぞ。


 ついでにベージュ色の廊下の壁に森の迷彩色を使って隠れている佐久間さんも確保して食券49枚。

 ふははははっ!人が全てランチに見える!!


「視線……横…違う、上か…!」

「桜樹殿、とうとう気配察知までし始めたでござるな」

「ミッキー先生が凸凹の無い天井に貼りついてることに対して何か一言」

「あれは入学式の時からなのでセーフでござる」

「その隣にいる君の妹について一言」

「あれは一流のくノ一なのでセーフでござる」

「一流のくノ一と同等の技術を持つ女性教員…」


 視線を感じて上を向いたら天井に張り付いた変態二人を発見。駄目だ、最近常識とはなんなのかと再確認が必要なほど俺の中の当たり前が崩れているせいで女性教員が天井に張り付いていても特に何も思わなくなってきている。


「ちっ、見つかったか…」

「だが、こちらには全国模試三位の永山がいるッ!侮るなよ後輩!」

「ふっ、この永山に掛かれば隠れんぼなど……隠れんぼの公式をまだ授業で習ってない…」

「そこは予習しとけよ永山ァ!」


 教科書のどこを探してもそんなトチ狂った公式載ってないと思う。

 場所は変わって第一グラウンド。機関銃や小銃のエアガン(だと思いたい)を持ってグラウンドに(ごう)を作っていた諸先輩方を発見。全蔵を盾にしてなんとか捕まえた。

 グラウンドに壕を作るとかカタギの発想じゃないが、ここの学園、カタギを俺以外に見た覚えが無いのでスルー。


「参加者何人だっけ?」

「125人でござるな」

「鬼は?」

「桜樹殿一人」

「見つけた数と残りの人数は?」

「124人見つけたので、後1人でござるな」


 あと一人か…激闘の末、残り時間は二十分。こちらは特に何も言わなかったが着いてきているボロボロの全蔵と無傷の俺。先の戦いがどれほど苛烈だったがよく分かる。

 くっ…俺が怪我をしているばっかりに、全蔵に無駄な負担を…。


「そんな悔やんだ顔されても、ノリノリで拙者を前面に差し出してたでござるよね!?ね!?」

「そんなことないよ」

「『見つけたと言うだけで相手を殺せる最強の矛である俺を守る最強の盾!この盾、貫けるものなら貫いて見せよ!!』とか言いながら拙者の両手拘束して突撃してたでごさるよねぇぇ!?友人を盾にした気分をどうぞ!!」

「気のせいだよ。俺は友人を盾になんてしたりしない」

「おっと、遠回しな友情破断宣言」


 残り一人…メールに載ってるリストなら最後の一人は……誰だ。名前が分からない。

 橋本、桜大門、永山先輩などは分かるが、他が本当に分からない。

 山元、市橋、田辺、太田、幹、服部、教頭先生……最後の一人教頭先生だわ。


「最後は教頭先生か…」

「普通に行けば職員室に居そうでござるが…」

「全蔵、教頭先生の電話番号分かる?」

「分かるでござるが…なにするでござる?」

「交渉」


 残り時間も少なく、この敷地全体から一人を探し出す事は不可能に近い。まだ部活で残っている生徒もいるし、少し服装を変えれば紛れられる。

 ここまで来たら全員見つけたい。ということで見つけずに交渉に持ち込もうと言うわけだ。


『私だ』

「初めまして、二年生の二三桜樹です。隠れんぼの件でご相談があります」

『ほう。聞こうじゃないか』

「幹先生を生徒指導室に誘導するので見つかってください」

『私個人から食券をプラスで10枚用意しよう。では上を見てくれ』


 教頭先生と連絡を取り、無事に交渉成立。それどころか食券が増えた次第。ミッキー先生を捕まえるだけで食券40枚なんて……ミッキー先生が札束抱えた天使に見える。


 上を見ろとの事なので上を見上げると三メートル位ある(たこ)に張り付いた教頭先生を発見。

 生徒が変人なら纏める先生も変人なのだなと思いました。


『もしもし、世界一可愛いミッキーだよー』

「あ、二三です。ミッキー先生、お願いがありまして」

『なんでも言ってくれ!火の中でも、グリードアイランドでも、暗黒大陸でも私は喜んで行くぞ!』

「生徒指導室まで来てください」

『分かった!!!!私が直々に危ない生徒指導をしてやるから待ってろ!!!!』


 これで無事に隠れんぼは俺の一人勝ち。食券125枚+10枚で135枚。暫く昼飯には困らないだろう。


 明日もまたやらないかな…。


 赤く染まる空、生徒達の掛け声、ミッキー先生の悲鳴を背に俺は帰宅した。


《後書きのコーナー》


[今話の感想&次回予告]


桜華「出番が無かった…あんな楽しそうなイベント逃した…」


桜樹「明日、氷鬼大会やるって」


桜華「やるしかねぇ!桜華ちゃんの運動神経見せたらァ!!」


桜樹「次回『波乱の幕開け!?何事もない闘技大会-1』」


桜華「ゲーム戻るんじゃん…今更ゲームやるの?」


桜樹「作品タイトル思い出せ…」

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