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《 Infinity Pioneer Online 》~一般人の兄が妹にオタクに染められる話~  作者: いちにょん
第一章 鎖縛の姫に月下のメリークリスマス
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第三十五話 鎖縛の姫と白き帝ー12

☆ sideーオーキ=ペンデレエーク


 エミリアさんの参戦で、エミリアさんを主軸にマーちゃんがそのフォロー。俺と全蔵が尻尾を担当、オーカが首元で即死ガチャをするフォーメションにチェンジした。


「オーキ殿!」

「しゃオラァっ!!」


 俺が前で迫り来る八本に減った尻尾を槍斧で防ぎ、全蔵が後方から六丁銃でダメージを蓄積していく。


「オーキ殿、右!」

「ダンダダン!ダダダン!トトン、ダンダンダダン!!『強打』!!」

「お見事!」

「ずっと相手してるんだ、これくらいはなっ!」


 全蔵の声と共に意識を右へ。一斉に俺を狙って迫る七本の尻尾を見据えて、回避行動へ移る。


 右回避、左回避、もう一回左回避、小ジャンプ、大ジャンプ、フェイントからの捻り回避、正面を敢えて槍斧で弾いてイナバウワー、上体起こして本命の八本目の尻尾を振り向くついでに回避&無防備な尻尾にスキル!!!


「よしっ、三本目!!残り七本!!」

『『『グルゥゥワァァァァァアア!!』』』

「オーキ殿、スイッチィィ!!」

「任せた!!」


 『強打』のスキルで三本目の尻尾の切断に成功。《白帝》が痛みで叫び声を上げて怯んだ隙に全蔵と前衛を交代。

 すれ違いざまにMP回復薬を全蔵にぶつけ、槍斧で防いだ時に僅かに減った自分のHPを回復薬を飲んで回復する。


「疾ッ──!!」


 全蔵の体を淡い紫色のエフェクトが包み込むと、全蔵の動きが加速する。

 俺もそれに合わせアイテムボックスから事前に渡されていた銃を八丁、全体的に散らして投げる。


 全蔵はエフェクトで軌跡を作りながら高速で移動し、自分の銃と、俺の投げた銃を先程と同じ要領で次々と入れ替えて撃ち続ける。

 だが、加速した事により、全蔵の撃つ範囲が大きく広がっている。


 縦横無尽。


 様々な角度から振り回される尻尾を避けながら撃ち込む姿はその言葉が思い浮かぶ。


「オーキ殿、七秒後に交代!」

「了解」

「後は任せたでござる!」


 しかし、この全蔵のアクロバティック・エイム(全蔵命名) は、火力が上がったと同時にMPの消費が凄まじく早い。SPもほぼ回復せず、すぐさま全蔵とバトンタッチ。

 個人的にはもう少し頭の中でイメトレと、情報の纏め、照らし合わせなど色々したかったのだが…。


「フッ…!!」

『インターバルまで残り四分』

「了解っと!」


 全体通話を通して聞こえるヲタキングの秒読みに返事をしながら、俺は次々と迫る尻尾の対応に追われる。

 全蔵に攻撃が行かないように丁寧に、体の使い方を意識しながら、一つ一つ理想の動きへ近づかせていく。


 手の握り具合…もう少し軽く握る。STRの補正のお陰で現実では持ち上げられなような槍斧も木の棒のように振るえる。

 イメージはバドミントンのラケット。右の親指と人差し指が基本。左手は狙いがズレないように支えるだけ。インパクトの少し前に握り込むようにして遠心力を最大限に使って切っ先を加速させる。


 足の動き…良し。股関節を柔らかく使って、腰の振りに膝を乗せる。つま先の向きをキャッチボールと同じように狙いの方向に向ける。意識するのは母指球。母指球で地面をしっかり捉えられれば、スパイクでなくとも滑る可能性は少ない。


 腰の動き…修正。ついつい()が出てしまっている。中途半端は良くない。野球とは切り離して考える。振るう時も突く時も威力に差が生まれるのは腰。どっしりと腰をお尻の上に乗せるくらいのイメージで構え、振るう時は躊躇(ためら)わず、勢いを殺す時は慎重に。


 つま先、かかと、足首、ふくらはぎ、膝、太もも、股関節、腰、腹、胸、肩甲骨、首、二の腕、肘、手首、指先、首、意識するところは幾らでもある。


 体と共に呼吸も意識する。なるべく乱すことなく、酸素を身体中に届けるように深く、より深く呼吸をする。

 神経を研ぎ澄ませ、風を感じ、地面を感じ、音を感じ、外から入ってくる情報を余すことなく活かす。


 内と外、一通り意識したら自分の体に呼びかける。


 もっと動き易い体の運びは無いのかと。


 そしてまた修正を繰り返す。


 腋を締め、振りを大きく、全体的に小さくなっているので肘を伸ばし、肩甲骨を柔らかく。


 それを繰り返すうちに歯車が噛み合うように、ガチりと(はま)る瞬間がある。

 歯車が噛み合うように、パズルの最後の一ピースの行方を見つけたかのように。







 ───────きた。








「オオオォォォォォ!!!」


 お腹に力を入れ、喉を振り絞るように上げた雄叫びと共に振るわれた槍斧。



 ズガッッッン!!!!



 俺の雄叫びに応えるように唸りを上げて《白帝》の尾に槍斧が命中。


 ボールをバットの芯で捉えた時の感触に似た確かな手応えが全身を駆け巡る。


 全身が湧き立つのが分かった。血液がグツグツと沸騰したように熱く、細胞が歓喜の声を上げ、脳内に快楽物質が溢れてくる。


「ああ…これは、気持ちがいいな」


 直感的に分かった。


 これがクリティカルの感触。


 これがクリティカルの快楽。


  下手をしたらホームランを打った時よりも、強打者から三振を取った時よりも、試合に勝った時よりも心地好い。


 ならもっと。


 もっとこの快楽を。


 爽快感を、達成感を、全ての快感を…。


「フッ!!!」


 振り抜いた槍斧の勢いを利用して一回転。槍斧の重さに体が持っていかれ、体が宙に浮く。

 体幹とこのゲーム内の強靭な体を使って体勢を無理矢理キープ。


 ぐるりと視界を巡らせて見れば左右から二本の尻尾が迫っている。


「ッラァァアッ!!」


 勢いを付けた左足を右足に重ねるように動かし、それに合わせて全身を半回転。

 槍斧もそれに追随して体より一拍遅れて大きく円を描いて二本の尻尾に当たる。


 そしてまたあの快楽が全身に。


 二本の腕よりも太い尻尾が宙を舞う。

 全身に《白帝》の血液を浴び、視界が真っ赤に染まる。そしてすぐに成人設定を行っていない為、血が真っ白なポリゴンに変わって空への昇る、ふっと消える。


 ゆっくりと落ちていく視界と、空へと昇るポリゴン。

 以前テレビで見たマリンスノーのような幻想的な光景だ。


「オーキ殿!まだ終わってないでござるよ!」


 ふと、割り込んで来る『雑音(ノイズ)』に顔を歪める。


 それと同時に何も無いと錯覚する程スッキリとした頭の中が急激に働き始める。

 全身の熱が少し覚めたのを感じ、狭まっていた視界が広がる。


「うおっ!?」


 視界の右端から迫る《白帝》の尻尾。


 これは避けられない…!!!


 全身に衝撃が走り、脳が揺さぶられる。鈍い痛みが体を襲い、とてつもない浮遊感が全身を包む。

 視界が暗く染まり、体から力が抜けていく。


「あ~、おはようございます。蘇生薬です~」

「お、おはようございます」


 だが、次の瞬間、目の前に光が差し、花宮さんの整った顔がドアップで映し出される。

 ふんわりとした口調で挨拶をされるので、思わず返してしまった。


 ふむ、この体勢。俺の頭を包み込むように頭を優しく撫でる花宮さん。

 俺はそれを見上げている。

 後頭部にはふわりとした……ふわりとした……雑草と土の感触。


 傍に座ってるだけですか。出来れば膝枕が良かったです。


「簡単に状況を説明しますと~、クリティカル出して調子乗ってしまったオーキさんが《白帝》の尻尾の接近に気付かずに吹き飛ばされて一撃で死んでここまで飛ばされてきました~。それはもう面白おかしい位の吹き飛ばされようで~」

「た、助かりました」

「集中するのはいい事ですが、お気をつけください~」


 余りの快感に軽く思考がトリップしていたようだ。

 空きっ腹に極上のステーキを流し込んだように、久々の食事(快感)(本能)が暴れだし、理性で抑えられなくなった。


 どうにも感情の制御が上手くいかない。

 無理矢理にでも押さえないとな…。


「花宮さん、助かりました。行ってきます。あ、俺の槍斧ってどこにありますか?」

「吹き飛んだ時に手放したようなので《白帝》の近くにあるかと~」

「ありがとうございます」


 俺は起き上がると、アイテムボックスから馴染みの«黒魔石の槍斧»を取り出して《白帝》目掛けて走り…あれ、《白帝》どこだ?


「オーキさん、後ろです~」


☆ sideーオーカ=ペンデレエーク


「残り一割ってところかな…」

「エミリア殿が来てから一気に事が進んだでござるからな!」

「恐縮です」


 戦闘が始まってから既に一時間半を越え、遂に《白帝》のHPは残すところ一割。


 《白帝》の体は既にボロボロだ。


 左端の顔はディフィに集中的に殴られて骨格が歪むほどボコボコというよりも、ボッコボッコにされている。

 真ん中の顔はマーサちゃんに集中的に魔法で狙われて、火魔法による火傷や氷魔法による凍傷、風魔法による切り傷などで…成人設定をしてなければR指定まっしぐらか状態になっている。

 最後に残す右端の顔はエミリーちゃんによって矛で貫かれて右目が潰れ、舌も切り離されている。


 体に目を向ければもっと酷いね…。


 首は私のガチャガチャの爆死の後が刻まれ…うっ…金礼装…青色の宝石…ペンライトが…ペンライトがぁ…ふぅ、あの傷を見るだけで歴戦の古傷(トラウマ)が疼きやがる……。


 胴体も裂傷が酷く、尻尾に至ってはオーキ兄が全部斬り落としたお陰で、視界的にゴチャゴチャしていたのがスッキリ。これが匠のビフォーアフター。


「というか、オーキ兄…なんでそんなにクリティカル出してんの…?」

「いや、なんか調子が上がってきて…多分、カフェインが(DNAが)効いて(覚醒して)きたんじゃないか?」

「いや、エナドリ摂取したの七時間前…」


 最初にクリティカル出したと思ったら派手に吹っ飛ばされて…その後、20回に1回くらいクリティカルをポンポコポンポコ出しやがって…私、一時間半でまだ1回も出てないんだけど?

 お陰で火力不足所か一丁前にダメージ稼いで、ガチャガチャしてるら私よりも総与ダメ上だし…!!


「あ、HP削り終わるでござるよ」

「おっと、まじか」

「さて、ここからが本番だね…」

 

 ござるの声と共に待機組が全員、《白帝》に目を向ける。


 丁度、ディフィの拳が《白帝》に突き刺さり、《白帝》のHPが爆ぜる。

 それと同時に《白帝》の体が輝き始める。


 ま、予想通りだよね~。ここで死んだら拍子抜けだし。


 この夏休みの終わるタイミングでユーザーを離さないために明らかに怪しいゼノ・モンスターの伏線をババンと登場させ、街を崩壊させる。

 そうすれば嫌でも食いつくよね…けど、倒されたら意味が無いからリリース当時からこの時点でのプレイヤーの平均レベルじゃ絶対に倒せない難易度にしてあるだろうし…ほんと、嫌になるほど運営の意図が見え透いてるよね。


 けど、ここで倒したら気持ちいいだろうかな~…これで倒したらIPO(これ)やる前の《BBT》もミサきちや、ござると一緒にやった伝説のエンドクエストフィールド爆破事件をした時よりも気持ちいいだろうなあ…。


 あの時の運営の慌てようは最高に面白かったから二度と忘れないけどね。


「お、おぉ…ここまで予想通りだと拍子抜けだな」

「分かりやすく減ってるでござるなぁ」


 《白帝》の体を包んでいた輝きが消え、新たな《白帝》が姿を表す。

 全身の傷が癒え、尻尾も再生している。ただ一点を除いて全てが巻き戻したように綺麗さっぱり無くなっている。


「頭が一個減ったってことは…残りの頭は2個2個(にこにこ)にー」

「それ4個に増えてないか?」

「くっ…そう言えばまだオーキ兄にはラ〇ライブを見せていなかったか…」

「…?」


 不思議そうな顔を浮かべるオーキ兄を放置して、私は再び《白帝》を見る。


 三つあった顔が二つに減った。

 再生は残すところ二回。ゲージが三つあるボスだと考えれば、まぁまぁ、現状打破できる難易度では無いよね。

 しかもそれって、首が無くなる度に強くなるパターンでしょ?王道でベタだよね。


「だがしかーし、私達も第二形態を残している…!」

「忍者の第二形態って何になるんだ?」

「ドラゴンになるでござるな」

「忍者すげー。めっちゃ西洋じゃん」


 …。


 馬鹿は放っておいて。


 終わりが見えた事で色々余計な事を気にせず戦える。


 目に見える変化があったことで皆の戦意も上がってきている。


「んじゃ、第2ラウンドいきますか」

「ゴングはどうします?」

「オーキ兄、もう1回飛ぶ?」

「I can fly」

「ヲタちゃん、バルク達に退却命令。ここから全員攻撃で行くよ」

「了解ですぞ」


 せいぜいシナリオブレイクで慌てて泣きながら修正してろ運営様!!いい加減情報渋らずに吐き出せコラァ!!





「Is everyone ready?殺戮(ジェノサイド)…Start!!」







 

10話で終わる予定が、12話にしてようやく半分(仮)。なげぇよ…予定通りに進まねぇよ…。

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