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《 Infinity Pioneer Online 》~一般人の兄が妹にオタクに染められる話~  作者: いちにょん
第一章 鎖縛の姫に月下のメリークリスマス
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第二十七話 鎖縛の姫と白き帝ー4

後半は白帝に関する情報が纏めてあります。そんなもんなんだくらいで読んで頂いて構いません。戦闘になったら嫌でも描写が入るので…。

「あれ、珍しいね。こんな時間に」

「まあ、少しやる事が出来たから色々と準備を」


 一度ログアウトしてトイレを済ませてリビングに行くと香織がソファに座ってぼーっとスマホで動画を見ていた。

 時刻は既に零時を回っている。高校生とは言え、香織は全国で活躍するアスリートだ。自分の体調管理は厳守しているし、夜更かしなんてしない。

 俺も未だに前の生活が抜けず、二人とも十一時には各自の部屋で熟睡しているのが常だ。


「明日も練習だろ?」

「う~ん。6時から~」

「それなんだけど、明日の朝と昼、自分で買ってくれないか?」

「およ?夜更かしでもするの?」

「うん、多分明日の昼までは寝れないかなぁ…」


 勝ったらそのまま『祝勝会だー!』とか言って宴会になるのは目に見えてるし。クエスト終わったら速攻で寝たいのが本音だけど…。


「じゃあ明日の夜は私のリクエストしていい?お寿司食べたい~」

「駄目」

「えー、なんで?」


 少し話が長引きそうだと判断したのか、耳からイヤホンを外す香織。

 スマホに向いていた視線がこちらに向く。


「秘密だな…んぐっ」

「おっと、これは期待していいのかな~?あと、私も飲む」

「いいのか?食事制限とか色々コーチから言われてるんだろ?」

「明日キツキツメニューだからカロリーを今のうちから~」

「はぁ…ほら」

「さんきゅー」


 俺は香織と会話を続けながら冷蔵庫の中の牛乳を取り出してコップに注ぎ飲み干す。

 香織も欲しがったので飲み干したコップに追加で半分ほど牛乳を注いで渡す。


「えっと…これと、これと…」

「うわ、夜中に食べるの?」

「腹ごしらえ。それと頭使うからチョコと、前に桜華が送ってきたエナジードリンクを」

「不健康極まりなーい」

「今だから出来る事だな」

「昔じゃ考えられなかったからね~」


 俺は炊飯器にあったご飯を塩で軽く握る。

 二個ほど作ったら、上からふりかけを掛けて簡単に済ませる。

 それを皿に盛り付けて、お茶とチョコ、エナジードリンクを持って部屋へと戻る。


「う~…お腹減ってきた~」

「お前も早く寝ろよ」

「ねぇ、桜樹、ゲーム楽しい?」


  振り返ると不安そうにこちらを見つめる香織に俺は笑顔で返す。


「でら楽しくてヤバいっ!」



「んぐっ、んぐっ……おにぎりの後にすぐざまチョコって凄い抵抗あるな」


 部屋に戻った俺は、おにぎりをお茶で流し込み、冷蔵庫で冷えたパキッとした板チョコを(かじ)る。

 口に広がる甘さに、先程までのふりかけの味と混ざって少し顔をしかめるが、今はそれよりも《白帝》だ。


 他の皆よりもレベルが半分。スキルレベルも中途半端で知識も足りない。完全な足手まといだ。


 なら俺が皆の為に出来る事は何か。

 役に立てる事は何か。


 他の皆が持っていない俺だけのもの。


 《暴食》と《裏切》のスキル。


 そして俺の人生全てで作り上げたこの体と、この体の動かし方。両親から貰った恵まれた運動センス。


 全部を使ってオーカ達に貢献しよう。


「よしっ、エナジードリンク飲んでログインしよう」


 俺は赤と青のメタリックカラーの350mlの缶を開ける。プシュッと言う音とツンと甘ったるい匂いが鼻につく。


「初めて飲むけど、栄養ドリンクとは違うんだな…」


 一口飲む前に俺は缶の周りを見る。

 『DAA~遺伝子を覚醒せよ~』と書いてある。

 Deoxyribonucleic Acid Awakaの略らしく、直訳でデオキシリボ核酸の覚醒だろうか。副題の通り飲むだけでDNAが覚醒したかのような集中力が生まれるとかなんとか…。

 なんでも海外プロゲーマー向けのエナジードリンクらしく、従来の日本製のエナジードリンクとは一線を凌駕する効果が望める。らしい。

 俺、エナジードリンク初挑戦だけど、初挑戦がこれだいいのだろうか。

 『※当製品のカフェイン量は合法です』とか注意書き書いてあるし、つまり合法だけど疑われるような効果があるってことだろ?ヤバ谷園じゃん。


 ちなみにこれは俺が買ったものではなく、オーカがコンビニとのコラボで『DAA』を買うと貰えるポスターのモデルに抜擢(ばってき)された際、コネクションを作ったは良いけどダース単位で箱貰ったからおすそ分けと五本ほどアニメのDVDと共に先日送られてきたものだ。


「はぁ…覚悟決めて飲みますか…」



「メンバーは私、オーキ兄、ござる、ヲタちゃん、マーサさん、ディフィ、バルク、クレアの『ジェノサイド』八名の加えてママちゃんと、花宮ちゃんの合計十名。今、ママちゃんが急遽アカウント作らせてミミちゃんに《白帝》の進路を探らせてる」


 時刻はゲーム内時間で午前三時過ぎ。時間通り現実世界で一時に皆が再び会議室に集まっていた。

 それと、俺達が準備をしている間、本当にアヴストュニール商会の皆が起こされたらしく、今は商会全体が慌ただしくなっている。それに伴って異変を感じた夜型のプレイヤーが騒いでおり、掲示板で何事かと荒れているようだ。


「ゲーム内時間で約十五時間後。ゼノ・モンスターがって訳じゃないけど《白帝》は戦闘開始から半径1キロ範囲から出ることは無い。動いてくれるなら死角の多い森からの奇襲戦法を考えたんだけど森の中で動けなくなると逆に不利になるから、今回の戦う場所はここ、《ドミナスの丘》。そしてそこに隣接する《トマホ平原》の二つ」


 マップを全員で共有しながら早速作戦会議に入る。

 と言っても、大体の大筋はオーカとミサキさんの方が決めくれたらしく、こちらは必死に暗記するだけだ。


「何でこの場所を選んだかの前に《白帝》の特徴と行動パターンに付いて分かる事を話そうか」


 オーカの話を纏めるとこんな感じだ。


 《白帝(びゃくてい)

 三つ首と十本の尾を持つ大きな白い虎。白い虎で有名な白虎とは無関係。

 肉食獣特有の寄り目でありながら、三つ首を持つことで草食動物のような広い視野を持つ為、死角が少ない。

 背後に回っても常に十本の細長い尾が動き回っており、それぞれが鋼鉄のような硬さと、鞭のようなしなやかさを持っている為、軌道が読みにくく、一撃で体力を持っていかれる。

 動物の弱点である鼻や目はその大きさから届きにくく、比較的攻撃しやすいアキレス腱などは丈夫な筋肉き守られている為、生半可な攻撃は通じない。

 その大きさ故に、近づきすぎると挙動一つの余波で吹き飛び、触れれば体力が全損する。


・戦闘の流れ

 1.接触。明確な敵意を持った状態で《白帝》を攻撃することで戦闘開始。

 《白帝》を中心に半径1キロ以内に存在するプレイヤー及びNPCが上限48名が強制参加。48名以上の場合、《白帝》から近い48人が選出。選出されなかったプレイヤーは《白帝》から半径1キロ以上、3キロ未満の離れた場所に強制ランダム転移。

 戦闘開始と共に《白帝》の戦闘開始時位置を中心に半径1キロのフィールドが展開。内外含めてそのフィールドから出ることも、入ることも出来ない。


 2.攻撃パターン。(未確定有)

 >>雄叫び(仮名)

  5~10秒間の大音量による硬直(スタン)。確率麻痺。


 >>従魔召喚(仮名)

  参加人数に合わせたMob(通常モンスター)が《白帝》を囲むように召喚。

  召喚されるのは《直歯虎(サクスタイガー)》Lv10~Lv15。

  現実世界の絶滅動物である、サーベルタイガーの特徴的な湾曲した歯(サーベル)では無く、真っ直ぐ伸びた歯が直刀(スクラマサクス)に似ているところからその名が付けられたと予想。

  噛み付きではなく、直刀のような歯で斬り付ける攻撃を好み、口に2本の剣を持っていると思った方がいい。


 >>絶対魔法防御(仮名)

  魔法攻撃を弾くオーラを体に纏う。持続時間2~?(途中で全滅)


 >>その他

  噛み付き、引っ掻き、跳躍、尻尾による攻撃などの基本攻撃。


「それを踏まえて取る作戦は前衛スイッチ戦法。TA(タイムアタック)なんて気にしない。制限時間いっぱい使って削り切る。今ここにいる10人を3つのパーティーに分ける。1つは支援組。支援役(バッファー)のヲタちゃんと、回復役(ヒーラー)の花宮ちゃん。この2人には後方からの支援を担当してもらう」


 凄く長ったのでこれも纏めると、攻撃を二組に分けて役割分担をローテンションしようということだった。


 《白帝》の従魔召喚はその召喚されるレベルの低さから一定時間事、15分から20分に再出現(リポップ)するのではとオーカは予想している。

 その予想を元に、再出現(リポップ)を合図として《白帝》を相手するチームと、再出現した従魔を相手した後に後方で休憩する役割を回すということだ。

 その休憩をする為に死角となる部分が《ドミナスの丘》。戦う場所が《トマホ平原》となる。


 今回の戦いは『アヴストュニール商会』の皆がアイテムを金と立場に物を言わせて大量に高価で高品質な回復薬を初めとした物を大量に用意して貰っている。

 なので死なない事を優先し、チクチク少しずつ時間を掛けてHPを削って行くのが大まかな作戦だ。


「タンクはバルク。そして避けタンクとして全蔵とママちゃん。この3人を主軸にチームを組み立てる。タンクが2人いる全蔵の方にオーキ兄、レベル差を見てこの中で1番レベルが高い私もここに入る。バルクの方は残りのディフィ、マーサさん、クレアちゃんの4人ね」

「大筋はこんな所でござろうか?」

「うん。後は連携を確かめながら敷き詰めていこう。さっきフレで『あ、多忙よ』を含めた夜型共を呼び出しておいたから相手には困らないよ」

「おぉ、攻略組でござるか!それは中々」

「まあ、横やりを入れたがらない人に厳選したから人数はそこまでだけどね」


 凄い。アヴストュニール商会以外の人達も協力してくれるのか。

 それもオーカ達とタメを張る高レベルプレイヤー達に。


「ギリギリまで付き合わせて、はい負けましたじゃ超格好悪いからね!」

「いいでござるなぁ。可能性としては未だ零。小数点の彼方を探しても0以外は見つからない。でござるが…何故か負ける気がしない。燃えてきたでござる」

「語尾が安っぽくなければ、ちょっと格好良かったのにな」

「うえっ!?酷いでござる!?結構今、格好つけてたのに!!?締めのムードだったじゃないでござるか!」

「まあ、ござるだし」

「全蔵氏じゃ仕方ないですぞ」


 そう言って笑い合いながら俺たちは裏庭へ向かう。

 未だ動かぬ不可能を可能へと変えるために。少しでも強くなるために。

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