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《 Infinity Pioneer Online 》~一般人の兄が妹にオタクに染められる話~  作者: いちにょん
第一章 鎖縛の姫に月下のメリークリスマス
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第二十話 回レ!回レ!回レ!狂気のアトラクショ・オルガン・シェイク

「オーキ兄、おいっす~!」

「昨日ぶりでござるな」

「あらあら、お久しぶりですね」

「今日は久しぶりに全員揃ったからね~」

「おはようございます」


 グルメ大会もとい、大食い大会もとい、将棋大会の次の日。

 俺は現実世界で朝から呼ばれたのでログインしていた。現在時刻は朝の四時半。

 部活時代はこの時間に起きており、なんだかんだ野球を辞めた後もこの習慣が抜けなかったので、特に苦では無い。少々、眠いのは確かだが。


「今日はレベリング?それとも素材集め?」

「どゅふふ…今日は訓練ですぞ、オーキ氏」

「訓練?無人島にでも行くのか?」

「訓練(いこーる)無人島ってどこから来たんでござるか」

「オーキ兄、中学時代にシニアチームの合宿中学時代になんやかんやあって無人島に遭難して発見された時に『サバイバル合宿だと思ってました』って名言残してるから」

「なんやかんやがとても気になりますねぇ…」

「拙者、ちょいちょい思っていたんでござるが、オーキ殿って一般人の皮かぶった化け物なのでは?」


 失礼な。確かにフィジカルは日本人離れしている自覚はあるが、俺より化け物じみている人なんて沢山いる。


「だってオーキ兄、二、三歩、壁走るし」

「頑張れば走れるよな、全蔵?」

「余裕でござるな」

「体操選手でも無いのにバク宙するし」

「それくらいはな?」

「出来るでござるな」

「そのまま空中で捻り出すし」

「バク宙できたら捻りくらい出来るよな?」

「七回捻りくらいできるでござるな」

「ボルタリングだー!とか言って握力だけで校舎の壁登り始めるし」

「あれくらい誰でも、なぁ?」

「確かに、ねぇ?」

「「いけるいける」」


 俺と全蔵はハモってオーカに言い返す。

 まるで実の兄を人間じゃないみたいに言って、そんな風に育てた覚えは無いぞ、全く。


「オーキ兄、知性(インテリジェンス)を働かせて」

「俺はいつでも脳内インテリジェンスどばどばだぞ」

「アドレナリンみたいに言われても困るんだけど…」

「ちなみに私とバルクくらいになると、インテリジェンスと共にプロテインも脳内から分泌されます」

「うむ」

「それは病院行け…あのね、オーキ兄…」


 ディフィとバルクに容赦のないツッコミを入れたオーカは俺の手をそっと握り、慈愛に満ちた瞳を上目遣いで俺に向け、聖母のような声で語りかける。


「一般人名乗るなら、忍者(本職)に同意求めちゃだめだよ…?」

「なっ…っ…っぅ…くっ……」

「なんでそんな苦しんでるの!?そんなにショックだったの!?」


 まさか…俺は……一般人じゃないのか…?


「ぜ、全蔵…お前ってやっぱりロールプレイだったりするか?」

「残念ながら本物でござる。分身の術使えるでござるし」

「じゃ、じゃあ……コスプレだったり…?」

「しないでござるなぁ…。空蝉の術使えるでござるし」

「……催眠…?」

「どんだけ疑ってるでござるか!?ていうか、オーキ殿、最初にやっぱりって言ったでござるよ!?」

「チッ…」

「あ、この人舌打ちしたでござる!オーカ殿!兄君が拙者に舌打ちしたでござるよ!」

「あ゛?」

「ひっ!マーサ殿、この人、ドスの効いた声で脅してきたでござるよ!絶対女の子が出しちゃいけない声でござるよ!?」

「口を慎んだください」

「うぇぇ!?ディフィ殿、マーサ殿達がいじめるんですが!」

「ではプロテインを」

「あ、遠慮するでござる。……バルク殿~!」

「忍べよ」

「全蔵氏は懲りないですなぁ…」


 十人十色。学校ならいじめ案件の集中砲火が全蔵を襲う。

 うん、やっぱりこういうやり取りは楽しい。香織ともそうだが、こうやって気兼ねなく騒いで、お互いにズケズケと言い合う関係はいいな。

 こっちがボケた時に欲しい反応をくれた時とか凄く満たされた感じがする。


「あれ、そう言えば全員揃ったって言ってたけど、クレアさんは?」

「あぁ、ペット(触手)(たわむ)れてる」


 オーカが指さした方向を見ると…


「何あれ、モザイクの塊?」

「ねぇ、バルク殿、あれって成人設定すると見れるんでござるかね?クール系美少女の触手との戯れ見れるんでござるかねぇ!?」

「いや、モザイクしか見えない」

「成人でもお見せできない何か…」



「じゃあ、訓練と行こうか~」

「せっかくバルクさんがいるので、恒例のオルガン・シェイクですね」

「…私、お腹いっぱいなんだけど」

「クレア殿、今日は何も食べないでって伝えたでござろう?」

「…そうだっけ?」


 え?何も食べちゃいけないの?さっきここに来る時にガッツリ食べてきたんだけど…。


「オーキさん、もしかして食べてきちゃいました?」

「…はい」

「あ~…まあ、いっか。最初はそんなもんでしょ」

「俺は不器用だから手加減は出来んぞ」

「バルクに手加減が出来たら私は泣いて喜ぶよ」

「え、大丈夫?俺、死なない?」

「大丈夫大丈夫」


 何を根拠に大丈夫って言っているんだ。不安しか無いぞ。


「じゃあ、最初はぐいっとオーキ兄行ってみようか!」

「そんなお酒みたいに言われても困るんだが?」

「じゃあバルクよろしく」

「ちょ、まって、バルク、なに!?え、怖い!!なんでみんな合掌してんの!?俺死ぬの!?やだ、怖い!!怖いんだけど!!!」


 (おもむろ)に俺の足を大きな手のひらで掴み、持ち上げるバルク。


 なんか足がミシミシ言ってるし、宙ぶらりんなんだけど大丈夫?本当に大丈夫?


「行くぞ」

「せめて遺言を…」

「辞世の句を聞いてやる」

「やっぱ死ぬんじゃん!?助けてオーカァァァ!!」

「男なら腹をくくれ」

「ついに行く、道とはかねて、聞きしかど、昨日今日とは、思はざりしを………」

「その心潔し!!」


 俺の足を持ってそのまま、その場で回転を始めるバルク。

 最初は遊園地のアトラクションに似た感じだったが、途中から変化が起こる。


 遠心力にかけられ、血が外側の頭に集まり、頭がガンガンと痛む。

 目がグルグルと回り、耳鳴りが酷い。


 この野郎…!途中から前後に揺らして、スピードに変化を付けてきやがった!!


 うぷっ……だんだん気持ち悪く……オルガン・シェイク……楽器(オルガン)じゃなくて臓器(オルガン)かよ…。


「ァァァアアアアアアアア!!!!!」

「いつ見ても凄いですなぁ…というか、オーカ氏、あれ大丈夫なんぞ?」

「…………ねぇ、全蔵。オーキ兄が最後に行ってた「ついに行く」って何?」

「確か伊勢物語の主人公、在原(ありわらの)業平(なりひら)の辞世の句でござったなぁ…」

「在原業平は平安時代の歌人で、この辞世の句は『いつか死ぬとは思っていたけど、昨日今日のうちに来るとは思わなかった』という歌です」

「切実だね……」



「おごっ…うぷっ……おへぇ……」

「オーキ兄、もっと音自重してよ」

「お、音の自重って初めて聞いたぞ…うげっ…ぎもぢわるい…」

「それにしてもよく吐かなかったね。あれ、基本みんな吐くのに」

「い、意地と根性ぉ……」


 はっきり言って『オルガン・シェイク』は地獄だった。これならどんな絶叫アトラクションも鼻で笑えると思えるくらいの地獄を見た。三途の川で白馬に乗る貴志の姿を見た時はもう駄目かと思った。


 なんでも、レベルが上がり、戦闘中の自身の移動速度が上がるに連れてこれに似た症状が出るとか。VITが上がることで体の内部の強化はあれど、スキルなどでVIT(耐えられる数値)を越えた動きをするら場合もあるので、戦闘中に気絶する人もいるらしい。

 そこでこのオルガン・シェイク。三半規管の強化と、この気持ち悪さに対する慣れを作るそうだ。


 他にも後は高速戦闘中に目まぐるしく変わる戦況を正しく把握出来るか、それを鍛える為にオルガン・シェイク中にフリップに数字を書いてそれを答えたり色々と幅を利かせるそうだが、絶対無理。次やったら絶対に吐く。


「さんじゅぅぅぅぅにぃぃぃぃぃぃ」


 俺が終わった後、オーカが、今はディフィがフリップにら書かれた数字を読み上げている最中だ。

 それにしてもバルクはよくあんなに回って平気だな…。


「この後マーサさんとクレアちゃんが終わったらもう一セットね」

「……うっす。…あれ、全蔵とヲタキングは?」

「あの二人はこんなことしなくても出来るから…」

「あぁ、なるほど」


 全蔵は忍者だし、ヲタキングについてもなんとなく聞いている。なんでも実家が古武術の家で、相当な腕前だとか何とか。


「これはバルクがいないと出来ないからねぇ…出来る時にやっておかないと」

「あぁ、確かに忙しそうだもんな」

「皆、リアルが多忙だからね。ほら、私、学生しながらモデルのお仕事してるじゃん?」

「うん」

「ヲタちゃんもお稽古ある日は体力が残ってる時しか来ないし、全蔵もあれはあれで何か裏で忍者的な何かしてるみたいだし」


 凄く忍者的な何かに気になっている(少年心)がいる。


「マーサさんはOLしながら家事もしてし、ディフィもあぁ見えてオーキ兄でも知ってる有名大学に通ってるから勉強あるみたいで」

「え、T大?」

「イエース」

「めっちゃ知性的(インテリジェンス)じゃん」


 まさかT大とは…スーツに似た服着てるしてっきり社会人かと思ってたけど、予想を遥かに越えてきたな。


「クレアちゃんは普通に大学生。薬学部だっけな。資格勉強か何かで最近忙しくてイン率低いね。まぁ後はバルクだよねぇ…」

「山暮らししてそうだもんな」

「うん、バルクは社長だよ?」

「うぇ…?」

「超有名IT企業の若社長。ましゃちゅ…まちゃ……マサチューセッツ工科大学出身で、学生時代に企業してそのまま流れに乗って大成功。今は日本支部で仕事してるらしいけど、定期的に本社のアメリカに行くからイン率低いんだよねぇ」

知性的(インテリジェンス)よりも野性的(インテリジェンス)じゃん」

「オーキ兄、語彙力にインテリジェンスがないよ」


 てっきり山でクマに育てられたか、動物園でゴリラに間違われて飼育…とまでは行かないけど、あれだけの筋肉の持ち主だからジムのトレーナーとかかと思ってた。


 ちなみに、オーカ達はお互いのリアル情報をある程度共有しているらしく、俺の情報も俺の正体がうっすら推測できるくらいには話してあるそうだ。少し自己防衛が足りないかと思ったが、オーカが自分のことを話している時点で俺の個人情報もある程度漏れているので、気にしないことにした。

 もちろん、他では他言はしない。


「なんでも7カ国語ペラペラらしいよ」

「脳筋どころか、筋肉まで脳みそじゃん。脳筋かよ」

「原点回帰してるからそれ」

「ところでオーカは何ヶ国語話せるんだ?」

「二か国語」

「日本語と英語?」

「日本語と肉体言語」


 いつからうちの妹はこんかに野蛮になってしまったのだろうか。


「オカロット…お前が一番筋肉(ナンバーワン)だ……」

《後書きのコーナー》


オーキ「今回は諸々お休みです!申し訳ない!」


オーカ「次回、『あのスキルを見てみよう。その1』」

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