第十九話 月イベノルマは廃人に取っては呼吸~ササキのじぃじとカレー作り~
小話まとめ的な感じです。
ブックマーク、感想、レビュー、評価等々頂けると嬉しいです…!
「こんばんは~」
「おおっ、若様!すまんなぁ、わざわざ」
「いえいえ、美味しいカレーが食べられると思ったら意地でも参加しますよ」
「はははっ、そうかそうか!それは料理人冥利に尽きるってもんだ!」
ゲーム内時間でエミリアさんにマゴチをあげた翌々日。現実世界では次の日の昼前に俺はログインしていた。
今日は以前話していた『うまいもん食い隊』の月例イベントである『大うまいもんグルメ大会』の当日だ。
大きいものを作ってNPCに配って皆で食べるだけだと思っていたが、どうやら違うらしい。
メインはササキさん達『うまいもん食い隊』の大料理で、他にも新作料理や、格好の珍しい料理が食べられたり、今回で開催十回目と言うこともあり、他国からチラホラと参加者も見られるそうだ。
それから大食い大会があるそうで。
いやいや、昨日の大食いは流れでだよ?流れなんだ、決して今日の為の予行練習なんてしていない。
決して優勝賞品の黒薔薇の髪飾りをオーカが欲しかっていたとかそういうのではなく、ただ純粋に気になっただけで…。うん、そう、気になっただけ。
「それで、そのお嬢の面した何それは誰だ?」
「昨日、NPCに余計な事を吹き込んでいたので叱ったところ、謝罪が出てこなかったので呆れて通話そのままお風呂に入っていたんですが、どうやらミュートになっていたらしく、何回話しかけても無音の状況がよっぽど堪えたようで、ログインしてからこの調子です」
昨日のお説教が効きすぎたようで、ログインしてからオーカが俺の服を掴んで離さない。
話しかけても一言「うん」としか返ってこないので放置している。
「あ~~…まぁ、お嬢は世渡り上手そうだから叱られる経験無さそうだもんな。良かったなお嬢、叱ってくれるいい兄ちゃんがいて」
「…うん」
「なぁ若様、やっぱ別人がログインしてないか?セキュリティに問題ないか?」
「…よくよくオーカの年齢考えたら心配になってきました」
「んまぁ、今はそれよりも…若様料理すんだろ?野菜、トン単位であるんだわ、切るの手伝ってくれや」
「……うっす」
玉ねぎ、にんじん、じゃがいも……なにあれ、お菓子の家ならぬ野菜のマンションが出来そうな料あるんだけど。業者?業者なの?
☆
「くぅぅぅ…」
「ほらほら、オーキ殿、どんどんいくでござるよ」
「俺の知ってる料理と違う…!!」
俺は一心不乱に槍斧を振るう。一心不乱に振るう。
皮を向いて水洗いした野菜を次々と全蔵が分身の術で二人に分身して次々と俺に放ってくる。
そして槍斧で真っ二つに切った野菜を、後ろでオーカが大鎌で細かく刻み、途中合流したマーちゃんが空中に散らばる野菜を掴み、大鍋の中に入れていく。
「何を言っているでござるかオーキ殿、二次元の料理は基本空中に食材を投げて空中で斬るのが当たり前でござるよ?」
「え、そうなのか?」
「忍者の里でも同様でござる」
「忍者すげぇ!」
にんじん、じゃがいも、じゃがいも、玉ねぎ、玉ねぎ、じゃがいも、にんじん、にんじん、玉ねぎ、にんじん、じゃがいも、じゃがいも、玉ねぎ、プロテイン、じゃがぁい…!?!?
「なんか変なの混じった!今絶対違うのあった!!」
「ははっ、色はカレー粉なので問題ないござるよ」
「ココア味確定じゃないか。ていうか今、どこから飛んできた!?」
「こんばんは、お手伝いに来ました」
「おばんでござるディフィ殿~」
メガネをクイッと上げる動作をして、大量のプロテインを担いだディフィがやってきた。
ちょうど時間的にもいいので一旦休憩。
「ディフィ、プロテイン投げ込むのやめてくれよ…あれココア味だろ?」
「色はカレーですよ?」
「他にもバニラ味…」
「色は白米ですよ?」
「イチゴ、バナナ、抹茶…」
「にんじん、ウコン、ローリエですね」
「何が?」
「色が」
「食材と判別を色限定で行うの止めろ」
澄まし顔で俺の質問に答えるディフィ。
明らかにおかしい。知性が足りていない。
「徐々にオーキ殿のツッコミに容赦が無くなってきたでござるな。ネットに染まってきて大変よろし」
「これについて俺に非はない」
「激しく同意するでござる」
「責任の一端は全蔵にもあるぞ」
「うえええ!?」
「何でそこで心底驚けるのか、俺は分からない。知性と筋肉が足りてないぞ」
「毒されているでござる…」
何を言っているんだ。俺は正常だぞ。
☆
「おい、あれ…一昨日、ここらの食事処を荒らした…」
「餃子150個、油そば5キロ、ステーキ2キロ、海鮮丼1.5キロ、唐揚げ3キロ、ドーナツ60個、パフェ2キロを完食したっていう…」
「化け物かよ…」
「オーキ殿」
「ヒトチガイダヨ、キノセイダヨ」
場所は変わって大食い大会。カレーは現在随時配布中で、多くのNPCがカレーを求めて長蛇の列を作っている。
俺の隣に全蔵が。そして俺達を含めて二十人近くの参加者が特設ステージに上がっている。
ところどころから聞こえる噂話、横から飛んでくる全蔵のジト目。
オレ、シラナイ。
全部食べ終わった後、謎の『暴食の罪』とか言うスキルを手に入れたとか知らない。本当に知らない。
「では、一回戦のルールを説明します!制限時間30分、直径60cmの巨大ピザを多く食べた上位十名が勝ち進みます!解説はもちろん、この方、田中吉蔵さんです」
「よろしくお願いします」
いや、誰?
目を凝らして見るとプレイヤーだし…アヴストュニール商会のことだから、多分本職なんだろう。うん。
「ピザでござるかぁ~中々楽しみでござるな」
「飲み物だな」
「ははっ、よく言うでござるからな」
~省略~
「さぁ一回戦が終了し、二回戦!続いてのルールは早食い対決!壺いっぱいの熱々おでんを完食した時点で終了!上位五名が決勝に進めます!」
「拙者、熱々のものを食べるのは得意でござるよ、よくオーカ殿に熱々おでんやらされるので」
「おでんか…飲み物だな」
「そ、そ、そ、うでござるな。お互い、胃の中をたぷたぷにしようでござる」
~省略~
「さぁ、決勝に勝ち残った五名!アヴストュニール商会からオーキ=ペンデレエークさん!」
決勝にもなると歓声の量が違う。
一人一人決勝進出者を紹介し、歓声が上がるので軽く手を振る。
見たこともない人から「若様ー!」と聞こえるのは気のせいかな。
「同じくアヴストュニール商会から服部全蔵さん!」
「うっ…うぷっ…おえっ……」
全蔵大大大かな。鼻から白滝出てるけど。
滞りなく、選手紹介が進められていく。全蔵以外に顔見知りはいなさそうだな。
「そして謎の銀髪覆面美少女!エミリー!!」
そんなこと無かった。プロレスラーのような目と口だけが見える覆面を被った銀髪の女性。
うん、あれエミリアさんだ。ばりばり知り合いいた。マップでもフレンドで表示されてる。
あの人結構重要な職業だと思ってたんだけど、暇なんだろうか。
「そして決勝戦はギブアップ制の時間無制限バトル!ただし、手が止まると失格!最後のお題はご飯とお肉の量が同じ!超盛り牛丼です!!」
「うっ…牛丼でござるか…オーキ殿もそろそろきついのでは?」
「牛丼か…飲み物だな」
「!?!?!?!!?」
☆
「おっしゃ!最後のフィナーレや!!若様、楽しんだか!?」
「ええ、凄く楽しかったです」
明るかった空も赤くなり、そろそろ体に疲れが溜まってきた頃、締めに入るそうだ。
今日は色々あった。エミリアさんと最後の最後まで競い、どうにかこうにか勝つことが出来た。
来月の頭にはオーカの誕生日なので優勝賞品はその時に渡そう。
大食い大会が終わったあと、エミリアさんと一緒に屋台を巡ったり、ディフィと途中参加のバルクのプロテイン料理が案外美味しかったと思ったら、十分後に謎のバッドステータスに侵されたり…。
オーカも無事に立ち直ったようで、安心したが、テンションが上がって騒ぎに騒いでいたので屋台の熱々のたこ焼きを口の中に放り込んでおいた。
そして最後のフィナーレ。なんでも締めに恒例の何かをやるらしく、凄く楽しみだ。
「じゃあ若様!俺と一曲行こうか!舞台の上でやるぞ!」
「えぇ、本当ですか?俺、そんなに上手くないですよ?」
「ははっ、気にすんな。楽しんだもん勝ちだ!」
急に歌と言われても困るが…まあ、ノリに身を任せて思い切り歌おう!
ササキさんと歌うってことで有名曲かな?それとも昭和の名曲とかだろうか、楽しみだ。
ササキさんと共に壇上に上がり、歓声に手を振り、頭を下げながら壇上の真ん中で向き合う。
司会ぽい女性からマイクを渡され、意気込みを一言と勧められる。
「オーキ=ペンデレエークです。最後の締めを任されて責任重大なのでちょっと緊張してますが、フィナーレに相応しいように精一杯盛り上げたいと思います」
無難な一言を告げると、司会の女性が俺のマイクを取り上げてササキさんに渡す。
ん?俺のマイクは…?デュエットじゃないのか?
いや、大食い大会みたいに点数勝負って可能性も!
「若様とは初めてだからな、互いに恥じぬ戦いにしたいと思う」
いや、恥じぬ戦いって歌バトルにどれだけ本気なんだササキさん。
だが、相手もやる気の方が燃えるってものだ。よし、ノリノリな曲を歌ってみんなを盛り上げてやるぞー!
「ではお座りください。互いに礼」
ん~~~?
ーーーーー
…。
「先手、オーキ=ペンデレエーク無冠、一、四、歩」
パチリ。
「後手、ササキ二冠、一、七、歩」
パチリ。
「先手、オーキ=ペンデレエーク無冠、同じく、香」
……。
「投了だ。いやぁ、若様本当に初めてか?すげぇ筋いいぞ」
一曲じゃなくて一局かよ…。
大食い大会の締めが将棋って、それでいいのか。
こうして『大うまいもんグルメ大会』は幕を閉じだ。
え、本当に終わり?
《後書きのコーナー》
[今話の感想]
オーカ「くひ、いひゃい」
オーキ「正直すまんと思ってる…」
オーカ「まさか、あーんって言った瞬間に熱々のたこ焼きを口の中に放られるとは思って無かったよ…普通、フーフーしてくれるじゃん?冷ましてくれるじゃん?」
オーキ「今度はちゃんとするから許してくれ」
オーカ「あ、じゃあ、オーキ兄の大食い大会の優勝賞品欲しいなぁ~?」
オーキ「…い、いや、…ちょっと、あれは…そう、知り合いに先にあげる約束しちゃったから…」
オーカ「ふ~ん、知り合いって誰?」
オーキ「あ、え、マー(オーカの鋭い眼光が飛んでくる)…エミリ(オーカの殺気を肌に感じる)……な、なんか全蔵が女装したいとか言っててさ、それでこっそりあげようかなって」
オーカ「うわ、ござるきもっ」
オーキ「(ごめん全蔵。今度埋め合わせするから…!)」
全蔵「はっくしょん!また誰か美少女が拙者の噂してるでござるなぁ~!」
[登場人物紹介](アニメを見ようが再開するまでの代わり)
パーティーメンバー
名前:服部全蔵
キャラネーム:服部全蔵
性別:男
年齢:16(高校二年生)
誕生日:12月25日
出身地:三重県某市
好きな食べ物:激辛料理
初恋の相手:隣のくノ一のお姉さん
交際相手:実は有り
好きな人:鵜飼六
家族構成:祖父、祖母、父、母、姉、妹、妹、妹、妹、妹
備考:イギリス生まれ、父はドイツと日本のハーフ、母は純イギリス人の日本人の血が四分の一しか流れていない。
父方の祖父(服部卍蔵)が由緒正しき忍の血を引く者。
桜華には主従の契約を結んでおり、桜華の高校入学と共に愛知県に引越し。全蔵一人では不安ということでママと、母が一緒に同居している。
実は彼女有り。甲賀の血を引く鵜飼の一人娘と恋人関係にあるが、昔から続く因縁関係により、ロミオとジュリエット状態。いつか両家の因縁を取り払う為、《IPO》をしながら世界各地の裏で暗躍する。
全蔵、ちゃんと描写すればおめーが一番主人公だぞ。ただ、作者にはネタキャラで使い潰す予定しか無い。
[次回予告]
オーカ「修行回だってばよ」
オーキ「え、早くない?明確な敵もいないけど…」
オーカ「オーキ兄、一番の敵はいつも自分自身の中にいるのさ…(ドヤ顔)」
オーキ「それで、修行ってなにやるの?」
オーカ「オルガン・シェイク」
オーキ「へー、なんかアトラクションみたいだな」
オーカ「…う、うん。次回、『回レ!回レ!回レ!狂気のアトラクション・オルガン・シェイク』」




