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《 Infinity Pioneer Online 》~一般人の兄が妹にオタクに染められる話~  作者: いちにょん
第一章 鎖縛の姫に月下のメリークリスマス
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第十六話 三度目の正直、オーキのPvP初挑戦~二度あることは三度ある~

小生、元々バトルオンリーの作品を書いていた為、ついつい久しぶりの戦闘シーンに加筆に加筆を加えてしまい、コメディ要素強めのはずが、気づいたら二万文字を越えていたのでバッサリ切りました。

歓迎会の翌日。

 いつもの商会の裏手の大きな庭で俺とオーカ、全蔵、ヲタキングの四人が集まる。


「では拙者と一騎打ちをしていただくでござる」


 向かい合う俺と全蔵。俺は«魔黒石の槍斧»を握っており、全蔵は短刀を逆手に構えている。


 これが俺の初めての戦闘。

 負けても仕方ないではなく、胸を借りるつもりで全力で勝ちに行こう。


 今ある手札…全蔵に取れるアドバンテージは意外と多い。

 互いに戦闘に関する情報は無いに等しい。恐らく全蔵は手加減をしてくる。全蔵のメイン武器は銃だ。短刀も忍者的なあれで得意なのかもしれないが、銃で戦う全蔵のビルドは中後衛向きのビルド。レベル差があったとしても、近接戦ビルドの俺と全蔵の近接戦のステータス差は情報同じく無いに等しい。下手をしたら俺の方が上かもしれない。


 全蔵の格好は相変わらず忍者衣装。鎧のようなものは身につけず、受けるというよりは、避けるをメインとした動きになるだろう。

 目には自信がある。こちらは槍斧、全蔵は短刀。リーチの差もあるから距離を取って戦うのがベスト。


 俺は、今ある状況と、自分の手札を見直し、勝ち筋を建てていく。


「始めっ!」


 オーカの開始の合図と共に俺と全蔵が同時に動き出す。



「始めっ!」


 オーカの合図でオーキと全蔵は同時に動くが、取った行動は異なる。

 二人の最初の距離は(およ)そ五メートル。全蔵はその距離を詰めようと、オーキは間合いを保とうと、動く。


 この決闘はゲーム内システムを作ったもので、お互いが死ぬ(デスする)事無く対人戦を行う機能だ。


 ルールは簡単に分けて三つ。


 一つ、勝利条件。

 相手の体力を七割先に削る、または相手が降伏する、または制限時間五分が過ぎた時に相手より体力の割合が多いこと、相手が決闘ルールに違反する。の四つが勝利条件となっている。


 二つ、アイテムの使用制限。

 アイテムはバトル開始時にアイテムボックスの外にある物のみを使用可とし、途中でアイテムボックスからアイテムを取り出した場合は強制敗北となる。


 三つ、MP。

 MPは決闘開始時半分となり、時間経過回復でのMPの量が倍となる。


 この三つの主なルールをプレイヤーが設定し直すことも可能で、アイテム使用制限を解除したり、MPを全開の状態から開始することも出来るが、今回の試合はスタンダード。上記のルールで行っている。


(スキルの少ない俺は全蔵にMPを渡す事になる長期戦は不利。距離を取りつつ、攻撃をしかける)


(オーキ殿は間合いを取りつつ、短期決戦を望むはず。拙者は攻めるフリをして油断を誘うでござるよ)


 両者の読み合いは全蔵が有利。ここは経験の差が顕著に表れる。


「フッ…!」


 全蔵は誘いの手としてまず、懐から取り出したサブ武技の苦無(くない)をに二本ノーモーションを心がけて時間差でオーキに投げ付ける。

 続いて、二本目の苦無を投げたと同時にスキルの『強襲』を発動。全蔵の体が前傾姿勢に変わると、瞬間的に駆け出す。


 『強襲』はタメの存在しない高速軽攻撃。全蔵の体は二本目の苦無と並ぶようにオーキとの距離を詰める。


「ッ…!らァッ!!」


 先に届いた一投目の苦無。多少の時間差があるとは言え、全蔵の同時攻撃にオーキは一瞬、反応が遅れてしまう。

 このままだと苦無が直撃する!そう思ったオーキは反射的に迫る一投目の苦無に合わせて槍斧を下からすくうように振るって苦無を弾く。

 そして第二の攻撃。低姿勢を維持したまま突撃してくる全蔵と、二本目の苦無がオーキに同時に迫る。


「まだまだァ!」

「そう来なくてはっ!」


 振るった槍斧を引き戻していては、苦無と全蔵を迎え撃つには遅い。このままでは大きなダメージは避けられない。


 オーキは苦無のダメージを諦め、全蔵を止めるべく、目標を全蔵に絞る。


 オーキは槍斧を握る手前の右手を全蔵に正拳突きをするように放つ。左手が支点となり、槍斧の石突き、柄の後端が押し出される。

 当然、長武器の構造上、長武器の先端の方をわざわざ持つ事は無い。支点の左手より穂先側の柄に比べて石突き側はの柄は短い為、引き戻すよりも格段に早く全蔵に攻撃を当てられる。


 幸いにも『強襲』は速い代わりに真っ直ぐ突撃する武技スキル。それを知らないオーキでも直感的に分かる為、全蔵の突進に合わせるのは百五十キロのストレートを打つよりはいささか容易い。


 全蔵に向かってオーキの槍斧の柄が迫る。オーキは意図していないが、この攻撃には振り抜いた動作の延長線上にある。

 この勢いならば、鎧を着込んでいない全蔵ならば、オーキのSTRを考えると動きを止める所か


 全蔵は弧を描いて斜め下から迫る柄を無視(・・)


 『強襲』の武技スキルを自分の少し前に飛ぶ苦無目掛けて振るい、武技スキルを強制終了。

 武技スキルの発動が終わったことで全蔵のスピードが元に戻る。

 オーキの全蔵の武技スキルに合わせた攻撃は空を切り、全蔵は完全にフリーの状態でオーキの懐に飛び込む。



「うわっ、あれこの前私が闘技大会で使ったマントで相手の武技スキル(FTS)封じた奴の応用じゃん」

「あの後、マント着ける人が急増したですからなぁ」


 全蔵の武技強制終了をさせる裏技を見てオーカは顔をしかめる。


「防御テクニックのつもりだったんだけど、本当器用なことするわ」

「純粋な体の動かし方で全蔵氏に肩を並べることが出来るのは服部姉妹くらいでしょうからぬっ!」

「ござるはゲーム要素絡んだ方が弱いというか、リアルのアドバンテージを詰められるからトップに立てないんだよ。ま、あの調子乗りぃな性格のせいもあるけどね」

「どゅふふっ…全蔵氏は未だにオーカ氏に一度もPvPで勝てていないですからなぁ」


 リアルでも付き合いの深いオーカもヲタキング。

 傍目から見ればゴスロリ幼女とキモオタが二人きりの危ない状況なのだが、中身は二人とも美少女である。


 大変和やかな雰囲気で全蔵とオーキの決闘を見守る二人であるが、現在進行形で戦う二人は和やかと言う雰囲気とは掛け離れている。



「『強襲』」


 オーキの懐に飛び込んだ全蔵は音声入力方式でスキルを発動する。

 オーキと全蔵の距離は既に一メートルを切っており、この距離ならば狙いを定めずとも攻撃を当てられる。そう全蔵は確信した。


「ぐっ…!」


 オーキは視界から飛び込む多くの情報に思考を加速させながら、全蔵の『強襲』を防ぐのは無理だと確信した。

 そしてすぐに次の動きへとシフトする。

 腰に刺してあった«魔黒石の短剣»を抜剣し、全蔵の手にある短刀に合わせて刃を立てる。

 そして、防具に魔力を注ぎ、短剣が短刀とかち合う瞬間、思い切り後方へ飛ぶ。


 短剣と短刀がぶつかり合い、甲高い音が響く。


(防がれたでござるが、体勢は崩れたでござろう!このまま押し切るでござる!)


 全蔵の読み通りオーキは体勢を崩したが、それを認識するよりも早く、全蔵の手には予想していたよりも遥かに軽い手応えが伝わった。


「軽いッ!」


 思わず口にするほどの手応えの軽さ。そして、すぐに全蔵は悟る。


(ママの作った空竜の防具効果でござるか…!それと同時に上手く後ろに衝撃を流されているでござる。ほとんど思考する時間を与えていないというのに、なんという情報処理の速さでござるか!)


「ぐっ…!」


 空竜の装備に魔力を流し、自身も飛んだことにより、オーキの体はトラックに跳ね飛ばされたかのように宙を飛んでいく。

 元々全蔵のSTRが高くないこと、後方に飛んだことで上手く衝撃を受け流した事により、HPは一割も減っていない。


 だが、空中に身を投げ出され、狂う平衡感覚を必死に制御し、地面を視界に捉え、オーキは左手に握られた槍斧を地面へと投げる。

 槍斧の石突きの部分と、オーキの左手首には全蔵から貰った装備であるスルチンが巻き付けてある。

 現実世界ならば熊を持ち上げられるほどのSTRに物を言わせ、深深と突き刺さった槍斧に引っ張られ、オーキの体は空中で急停止するも、まだ勢いのあるオーキに引っ張られて槍斧が地面から抜ける。


「いっ!?」


 慣性の法則に従い、左手首が引きちぎれそうな痛みに襲われる中、減速した体を持ち前の体幹でどうにか体勢を建て直し、地面に着地。両足にじーんと痛みと痺れが響くが、HPに動きは無い。


 オーキは一瞬、ぐるぐると回る頭の中で決闘の事を思い出し、バっと前を向く。


「あれ?」


 距離を取り、いざ仕切り直しとばかりに前を向いたオーキだったが、目の前にはただただ広い庭が広がって…。


「それは格好悪いでござる…」


 後ろから声がし、首がねじ切れるのではと言いたくなるようなスピードで振り返ったオーキ。


「いてっ!?」

「斬り捨て御免!」


 急に振り返ったことで首の筋を瞬間的に痛め、ズキンとした痛みに顔を顰めたオーキの視界に映ったのは、なんとも申し訳なさそうに短刀を自分の首へと振るう全蔵の姿だった。


(こんなところまで現実なのか…)


 首の痛みにそんな事を思いながら、オーキは全蔵に首を切られ、HPが目に見えて減っていく。

 足に力が入らなくなり、倒れていく視界の中でオーキの目の前には《 You Loss 》の文字が映し出される。


「くくくっ…くふっ…くくっ…あははっ……あははは!もう無理!!あはははははっ!!!」

「っ…っぅ……っ…っ」


 オーキの耳にはこちらを指差しで大爆笑するオーカと、育ての良さ上か必死に笑いを堪えるが、小さく可愛らしい声が漏れるヲタキング。


 意気揚々と「さぁ、俺達の戦いはこれからだ!」とばかりに全蔵向かって構えたオーキだったが、実は吹き飛ばされていた時に全蔵とは逆方向に着地したオーキ。

 他人から見たら吹き飛ばされた後、必死な顔で構えるも、敵に背を向けるイケメンの姿が映っていた。


「いやぁ、オーキ殿、災難でござったなぁ」

「おめぇは調子に乗りすぎだってのっ!」

「うぼらっ!?」

「オーキ兄が飛んだ瞬間、状況確認に必死になって距離詰めるの遅かったよね?ね?オーキ兄がしっかり着地してたら仕切り直しだったよね?わかりゅ?」

「んああああああ!痛い!痛い!かかとが拙者の鳩尾にぃぃぃ!!!」


 羞恥に包まれるオーキの肩に手をぽんっと置いてニヤニヤする全蔵。

 だが、次の瞬間、全蔵の体が真横に吹き飛ぶ。

 オーカが真っ黒なフリフリスカートを(ひるがえ)し、その場で垂直跳び。半回転しながら、短いあんよが全蔵の顔あたりまで伸び、眉間につま先がクリーンヒット。

 それだけで済まず、オーカは倒れ込んだ全蔵の鳩尾にぐりぐりとブーツのかかとを乗せる。 


「っていうか、オーキ兄」

「ん?」

「ござるにはバフと武器縛りさせてたけど、オーキ兄もうレベル17まで上がったんなら傭兵の自バフ使えるよね?『戦闘準備』は当然使えるとして、『戦闘態勢』どころか『戦闘開始』も使えるでしょ?」

「なぁ、オーカ」 

「ん?」

「バフって何?」


 沈黙が生まれる。


「あれ、職業スキル教えてないっけ、ござる!?」

「はぁ…はぁ…やっと解放されたでござる。拙者が知っているのは武技スキル(BTS)と食堂の時にMPを自然使用するやり方と、加重のような魔力操作系の通常スキル(NS)だけでござるよ…」

「ヲタちゃん…」

「う、うん…わ、我輩も知らない故…」

職業スキル(JS)教えるの忘れてた………」


 いたたまれない視線が二つ、オーカに向けられる中、オーキはただ一人。


(BTS…NS…JS………後で調べておこう)


 話に着いていけていなかった。

《後書きのコーナー》


[アフターストーリー~台詞抜粋~]


オーカ「オーキ兄!次は私とね!」


オーキ「うおっ、はやっ、つよっ」


オーキ「(あれ…けど、動きが分かる)」


オーカ「なんで当たんないのぉぉぉぉぉぉ!!!」


全蔵「一撃も当てずに負けたでござる」


ヲタキング「最後自バフ、マルマルモリモリだったのにノーダメで負けましたなぁ…」


オーキ「兄より優れた妹などいない(キリッ)」


オーカ「それ私が昨日の通話で教えたやつぅぅぅぅ!!」


オーカ、昔からの(リズム)が抜けておらず、オーキに動きを尽く先読みされ敗北。


この後、PvP無敗のお嬢が決闘でレベル差二十以上の相手に負けたと掲示板が荒れたとか何とか。


[登場人物紹介](アニメを見ようが再開するまでの代わり)


・主人公

名前:二三(いちなし) 桜樹(おうき)

キャラネーム:オーキ=ペンデレエーク

性別:男

年齢:17(高校二年生)

誕生日:6月24日

出身地:愛知県某市

好きな食べ物:小倉トースト、スガキヤラーメン

初恋の相手:中学時代の新任の養護教諭の先生(短大卒21歳)

交際相手:無し

好きな人:無し

家族構成:父、母、妹

備考:希望ヶ丘リトル→愛産シニア→明日ヶ丘学園野球部。


高校一年生:夏→甲子園準々決勝敗退

      秋→WBSC Uー18野球ワールドカップ 背番号1 日本国初優勝

高校二年生:春→準決勝敗退


実は中学三年生の春まで体が小さく、そこまで目立つ選手では無かったが、ポテンシャルは高かった為、希望ヶ丘リトルの時からそのポテンシャルを見抜いた高橋監督(後日登場)に熱心に勧誘されていた。当時は愛知県下の強豪校にいた高橋監督だったが、明日ヶ丘学園に監督として引き抜かれた為、桜樹も明日ヶ丘へ。


運動神経の塊で、勉強は父親のある行動により、無視出来ず上位の成績をキープ。

鍛え上げられた体幹と、持ち前の目の良さ、フィジカルが売り。

調子の波が激しいが、0~100ではなく、75~120を発揮する安定感のある選手。


[次回予告]


オーカ「次はリアルに戻ろう」


桜樹「え?ゲーム主体の話じゃないのか?」


桜華「いや、名前だけだして登場してないあの人がいるじゃない。みんなも気になってるでしょー?」


桜樹「誰だ…」


桜華「次回、『滅殺・アビスナート・貴志四世との再会は、妹との再会を上回る。』」


桜樹「!?!?!!?!?」

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