第九話 知性的な野性味溢れるぱわぁれべりんぐぅ
そして第一回ぱわぁれべりんぐぅが開催された。
俺のビルドについて色々と議論があったものの、議論自体の時間は三十分も無かった。
今日は一日丸々時間を空けているので、誤差だろう。
「このゲーム、移動は基本的には徒歩なんだけど、うちは生産職クラン…別名金稼ぎクランなので街の賭博にもある程度噛んでいます。なのでこちら、特別に用意しましたお馬ちゃんです」
「でっか…!!」
いつの間にかいなくなっていたディフィが二頭の馬を引いてこちらに来るのだが、馬の大きさがおかしい。
近くに牧場でもあるのか、そこから引き連れてきた為、少し距離がある筈なのに既にいつも見慣れている馬のサイズを越えているし、ディフィが小人に見える。
「うちのクランに北海道出身で、ばんえい競馬でばん馬の調教師やってたじぃじがいてねぇ。あ、御歳87歳ね」
「げ、元気だな」
「歳と体力的な問題で施設に入れられちゃって、馬の世話が出来ずに、暇な生活送ってるもんでゴネてこのゲーム無理矢理始めたらしいんだけど…」
「あ、アグレッシブだな…」
「このゲームに馬がいるって知って「誰か知らんかー!」と掲示板で呟いてたところをクラマスが拾って…あ、オーキ兄ってばん馬って知ってる?」
「いや、分かんない」
「農耕馬なんだけど、普通の競馬の倍以上の体で体重もトン越えるのもいるらしいんだけど、どうせならもっとでっけーのにしようぜ!おい!ってうちの連中が意気込んで馬系のモンスターと交配繰り返して…」
「あぁ、なったと…」
普通の馬の倍かぁ……デカイな。けど、目の前にいるのは軽く想像したものよりもデカイ。
象って言われた方がまだ納得できる大きさだ。あれを解き放つだけでモンスター蹂躙出来ないの?と思えてくる。
「ちなみに体重は…」
「4トン越え。象がだいたい4,5トンで…ゲーム的不思議な時間感覚でまだ二歳半だから…………うん、私も考えるのやーめた」
「あれ以上は手に負えないでござる」
「イサム爺は大喜びで世話してますけどねぇ…」
オーカも俺と同じく諦めたような目を馬とは素直に呼びづらい馬に向ける。
全蔵もマーサさんもどことなく諦めたような雰囲気がある。
「あれに乗って行く訳ですが…どっちがいい?」
「名前とかあるのか?」
「あるよ。右の黒毛の子が『イサムマジカルポーネ』で、白毛の子が『イサムティンクルガール』」
「そのちょっと苦笑いしたくなるような名前は競馬と変わらないのな」
「それもまた一つの趣きでござるよ。うちの妹五人なんて、上から服部ママ、ミミ、ムム、メメ、人魚姫でござるよ。妹をママと呼ぶ違和感と、最近大人びてきてやぶさかでもない拙者…うーん、ジェラシー」
そこはモモじゃないのかよ。とツッコミたくなったが、ボケが多すぎて全部にツッコんでいられないのでスルー。
多分全蔵とクレアさんはスルーするのが一番正しい対応なのだろう。あとバルクとディフィ。
あれ、まともに会話出来る人間が半分もいないぞ?
☆
なんとなく選んだ『イサムティンクルガール』にオーカとマーサさんと相乗りして、マップを移動する。
「うおっ、揺れる!揺れる!!」
「カカッ、このサイズともなると下手なロデオマシーンよりも体が持っていかれるでござるからなぁ。姿勢を極端に前傾姿勢にしてオーカ殿の腰にしっかり捕まるといいでござるよー!」
風を直接感じる為、体感で高速道路を走る自動車よりも速く思える。
オーカ曰く障害物を避けるために50キロほどしか出していないらしい。
視界が目まぐるしく揺れる中、酔いに似た少しの気持ち悪さを覚えながら全蔵に言われた通り前傾姿勢を作り、オーカの腰にしっかりと抱きつく。
ちなみにマーサさんは何故か俺のインナーの胸元に入り、襟首から顔を出して騒いでいる。
それよりも、前傾姿勢がいいと教えてくれた全蔵なのだが、何故か馬の上で直立不動に立っている。
なんで立っているのか、なんで振り落とされないのか色々と疑問はあるので降りてから聞こう。
「これは周囲の索敵の為でござるよ。あと振り落とされないのは拙者が忍者だからでござる」
心を読まれた…!?いや、表情に出ていたのか?けど、今下向いてるし…。
「カカッ、忍者だからでござるよ」
これまた全蔵は楽しそうに喉を鳴らす。
忍者すげー!と少年心を高ぶらせながらも、今は前を向いている余裕は無いのでオーカにしがみつくことだけを考える。
それからゲーム時間で一時間ほど、途中から慣れてマーサさんと談笑しつつ移動をして目的地の場所に着いた。
「ぱわぁれべりんぐぅ用フィールド【鬼ヶ島・中腹】に着いたので、オーキ兄はあそこに隠れてタゲを取らないように身を潜めててね」
「それだけでいいのか?」
「本当は少しでもダメージを稼いだ方がいいんだけど、支援役のヲタちゃんがいないのと、純粋にオーキ兄の装備を議論に夢中になってミサキさんから受け取るのを忘れたので見ててください」
「最初は見て覚えるのも大切でござるよ」
「仲間の戦い方を把握しておくのも大切ですからね~」
「うーん、インテリジェンス」
最後だけよく分からないが、要約すると見て覚えろってことだな。
スポーツ全般どころか、新しいことを覚える上でよくあることだ。
存分に見て学ばせてもらうことにしよう。
「んじゃ、ポーション勿体ないからいつも通り回復無しで最初に死んだ人が残りの全員の蘇生薬の代金持ちでよろ」
「了解でござる」
「負けませんよ」
「唸る我が大胸筋」
皆やる気のようなので指定された岩陰に身を潜める。
これでようやく落ち着いて周りを見ることが出来る。
オーカ曰く【鬼ヶ島・中腹】とのことで、ここは沖から離れた海上にある孤島だ。
イサムティンクルガール達が海を平然と駆け始めた時は驚いたが、ゲームだと割り切って楽しめた。
なんというか、絵本の中の鬼ヶ島そのまんまって感じだな。岩肌剥き出しの地面に、中央に鬼の形を模した大きな山。
大きいといっても下からそれほど見上げなくても山頂が見え、木も生えていないので低く見える。
鬼ヶ島に上陸してからすぐに浅黒い肌の小鬼ぽいのが大量にいたが、イサムティンクルガールが蹴散らし、そのままこの場所にやってきた。
「えーっと…」
岩陰から少し顔を出してモンスターを確認する。
右へ左へ視線を動かしていると、明らかに人では無い生物を見つけた。
じーっと目を凝らすと…
《中鬼/Lv24》
Lv24…!?
なんだかんだ一回も戦闘をしていない俺は未だにLv1。一回でも攻撃を貰ったら即死なんじゃ…。
ちなみにオーカ達のLvは見えなかった。なんでも自分よりもLv30以上高い相手はプレイヤー、NPC、モンスターに問わずLvや職業の情報が隠蔽されるらしく、看破するためには鑑定のスキルがいるそうだ。
「やっぱりゲームなんだなぁ」
中鬼を見ながら俺はしみじみと呟く。
小鬼よりも黒い肌。人間より大きな体躯。修羅のような怖い顔に、額に生える大きな角。腰には鬼だけあって虎のパンツ…ではないな、虎柄の布が巻かれており、手には金棒をしっかり持っている。
《レベルが上がりました。Lv1→Lv2》
《レベルアップによりボーナスポイントを2ポイント獲得しました》
《レベルが上がりました。Lv2→Lv3》
《レベルアップによりボーナスポイントを2ポイント獲得しました》
《レベルが上がりました。Lv3→Lv4》
《レベルアップによりボーナスポイントを2ポイント獲得しました》
《レベルが上がりました。Lv5→Lv6》
《レベルアップによりボーナスポイントを2ポイント獲得しました》
「うおっ!?」
いきなり視界に飛び込んできたインフォメーションに驚いて思わず声を出してしまう。
近くにいた二頭のイサミ達が何事かとこちらを振り返るので気にしないでと笑って手を振っておく。
これがぱわぁれべりんぐぅの力か…。
普通だったらもっと時間掛けて上げるのだろうが、早く戦力として活躍しないといけないからな。
今はオーカ達の好意に甘えよう。
「それにしても、皆バラバラに戦うんだなぁ…」
遠くに見えるオーカ達の姿。
俺のゲームのイメージだと、パーティーは固まって一つの敵に皆で倒すんだけど…ドラ〇エでもそうだったし。
バラバラの方が効率がいいのだろうか…?
自由度の効くVRゲームだとパーティー単位という固定概念に囚われずに柔らかい発想が大事なんだろうな。
オーカはイメージ通り大鎌を振り回して中鬼の首を刈り取っていく。
全蔵は…あれは銃?ハンドガンにも見えるが、見た目が結構近未来的な感じがする。
銃は確かさっき俺のビルドを最終決定する時に弓と一緒に誰かが言ってた気がする。
そのハンドガンを両手に持って二丁拳銃で中鬼の金棒の届かない位置から集中放火を浴びせている。
ますます忍者とは…っていいたくなるな。
マーサさんは、魔法がメインなのか。あの体の小ささじゃ仕方ない気もするが、派手だなぁ。
火に、雷に…今、中鬼の腕を切ったのは風かな?小さい花火がドッカンドッカン
魔法は一つの属性につきスキル一個を使うってオーカが言ってたし、現状でスキルは多くても七個って言ってたからマーサさんは半分近く属性スキルを取ってるのか。
「あれ、ディフィがいない……」
オーカ達三人はすぐに見つかったのだが、ディフィの姿だけが見えない。
再び辺りを見渡しても姿が見えない。
『GRUOO』
不意に頭上から擦り切れたような低い声が聞こえ、思わず上を見上げる。
「うぇおっぇ!?」
思わず変な声が出てしまう。
俺の頭上にいたのは先程までオーカ達が倒していた中鬼だった。
澄み切った青空を背景に黒色の巨体が降り注ぐ。
慌てて避けようとするが、完全に腰を落ち着けていたので数瞬間に合いそうにない。
ここが現実に近いゲームと言うのなら、押しつぶされたら死ぬ…!
「おっと、申し訳ありません。広背筋が滾ってしまいまして」
そんな中、視界の端からスーツを改造したような戦闘服に身に纏った男が倍近くの巨体を殴り飛ばす。
「大丈夫ですか?」
「あ、はい。ありがとうございます」
掛けていないメガネをクイッと上げる動作をして、スタイリッシュに着地したのはディフィだった。
さりげなく安全を確認してくれるところは本当に紳士だよなぁ。
全蔵やマーサさんと違ってディフィやバルクとはあまり交流が無い。
同性なので呼び捨てでと頼まれたので呼び捨てにしているが、糊の効いたパリッとしたスーツ型の戦闘服を着ていると、どうしても歳上だと意識してしまう。
級友というよりも、学園の先生を思い出す。
「では…トドメを刺しましょうかね…知性的な拳」
そう言い残して俺から視線を外すと、ディフィは吹き飛ばした中鬼に向かって走っていく。
知性的な拳…どんな拳なのだろうか。現代の格闘技の総合技とか?合理を突き詰めた最強の拳とか…人の知らない人体の弱点を的確に突く殺人拳…どれにしても凄そうだ。
「ふっ!!」
ディフィは仰向けに倒れる中鬼の上に跨り、マウントポジションを取ると拳を中鬼の顔に叩きつける。
「知性的な拳、知性的な拳、知性的な拳」
次々と鼻頭目掛けて右、左、交互に拳を打ち下ろしていく。
鮮血が飛び散り、すぐ様ポリゴン化して空中に散っていく。
成人設定をしていないのでこういった残酷的な光景もマイルドになるのだが、獰猛な笑みを浮かべたスーツ姿の男性が人にも見えなく無い大柄の中鬼を嬉嬉として殴る姿は……。
「ふぅ……どうですか?私の知性的な拳は?」
中鬼の体力が完全に無くなり、中鬼の体がポリゴンとして鮮血と同じく散っていく。
モンスターを倒すと稀に手に入るらしいドロップアイテムの角を拾い上げると、ディフィは一息つく。
そして爽やかな笑みを浮かべてこちらに視線を向ける。
知性的ってなんだろう…。
「知性の欠けらも無い原始的な拳でした」
俺は遠い目をしながらそう返した。
《後書きのコーナー》
[今話の感想]
オーカ「ようやく戦闘を…!と思いきや、忘れちった!てへっ☆」
オーキ「とは言っても、ダメージ与えられそうに無いけど…」
オーカ「ほら、ディフィみたいに力任せに急所を殴れば問題無いよ。股間蹴りあげたり、目ん玉抉ったり、喉潰したり」
オーキ「こら、女の子が股間とか言わないの」
オーカ「じゃあなんて言えばいいのさパパ」
オーキ「パパちゃうわ。お上品に言いなさい」
オーカ「お股間をお蹴り上げして悶絶させるわよ!」
オーキ「もう何も言うまい」
[オタク化計画・アニメを見よう]
オーキ「ノラ〇ミ全部見たぞ~」
オーカ「おぉー、どうだった?」
オーキ「漫画買い始めた。うん、漫画買ったのなんてコ〇コ〇コミック以来だよ」
オーカ「うむうむ、いい傾向だね。言ってくれれば漫画全部あげたのに」
オーキ「いや、さすがに買ってもらう訳には…」
オーカ「布教用だから」
オーキ「いや…」
オーカ「布教用だから」
オーキ「あの…」
オーカ「布教用だから」
オーキ(布教用ってなんだよ…)
オーカ「次のアニメは萌えアニメ!やっぱアニメはラノベ原作が至高だよね!2008~2013あたりのラノベラッシュは最高だZE☆ということでオススメするのは、《織田〇奈の野望》!ノラ〇ミ同様馴染みある名前、戦国武将の名前がいっーぱい出てくるし、作画も良き、そしてなんと言ってもキャラが可愛くてね!ロリから美少女まで女の子の詰め合わせみたいな感じで!もうほんと、最高!!あー、半兵衛ちゃんぎゅーってしたい!!」
オーキ「う、うん、見ておくよ」
[次回予告]
オーカ「はぁ…はぁ…語ったら疲れた…」
オーキ「暴走機関車…」
オーカ「オーキ兄、早いとこ次回予告しちゃお…」
オーキ「次は俺のステータス更新&新しい装備を確認するよ」
オーカ「次回、『話進んでないのについつい見ちゃうよねステータス回』」
オーキ「お楽しみに~!」




