季節記念イベントSS バレンタイン
「さく兄、ハッピーバレンタイン!!!」
「バレンタインに嫌な思い出しか無いんだが…ていうかここどこだ?あれ、俺さっきまで何をして…」
「ほら、拙者達の世界では真夏でござるが、向こうの世界の今日はバレンタインでござろう?作品の都合上、バレンタインには遠いでござるが、バレンタイン的な話は見たい…そんな読者の皆様の為に作られたのがこの空間、『THE・ご都合主義~季節イベントの話やらないと出られない部屋~』でござるよ」
「ごめん、ツッコミが追いつかない」
『THE・ご都合主義~季節イベントの話やらないと出られない部屋~』に連れてこられた三人。
もちろんここはVRではなく、『THE・ご都合主義~季節イベントの話やらないと出られない部屋~』なので三人とも未だ特に描写の無い現実世界での姿で顔合わせ。
しかし、ここでここで三人の身体的特徴及び、容姿を描写すると二章以降の話のネタがいくつか潰れるので割愛するものとする。
ちなみに部屋の中の描写も書く気が起きないので割愛するものとする。
イメージでお楽しみください。
「ちなみに、桜樹殿と桜華殿は一年半ぶりの再開、拙者に至っては初対面でござるが…安心ください。この部屋を出るとこの部屋の中で起こった記憶の一切合切が消えるでござる」
「怖っ!?なんだよこの部屋、オーバーテクノジローにもほどがあるだろ」
「オーバーテクノロジーでは?」
「オーバー…テクノ…次郎……下ネタ?」
「次郎くん…このあと亡くなったんでござるよね…」
「だ、誰!?と言おうと思ったけど、何故かクレアさんだって分かる。そしてさっきまでいなかったクレアさんが何故ここに?」
「ご都合主義でござる」
「ご都合主義だね」
「ご都合主義万歳…」
「この世紀の怪奇事件をマジョリティーで押し通そうとするのやめてくれない?」
三人の話に割って入るのは『セクシャル・モンスター』略して『セクモン』ことクレア。本名、眞壁紅佳。本編第一章、第二十一話のあとがきにて設定が書かれているので容姿は割愛するものとする。
「取り敢えず、この現状を受け入れるとして」
「受け入れちゃうんでござるか…」
「さく兄、適応能力高すぎない?」
「受け…M……挿れる…S…やはりこちら側の……」
「ここで何するの?」
「チョコ交換?」
「チョコの欠片も見当たらないんだが」
「チ〇コならそこに」
「クレアさん?」
「チ〇コなら二本…立派なのと、粗末なのが」
「クレアさん?」
「え、粗末ってどっち!?拙者!?拙者なの!?」
ワイワイガヤガヤ騒ぐ四人。ちなみに現状を深く把握しているのは全蔵のみ。他の三人が何故ここまで通常運転なのか、それほ三人が異常なだけである。
何故、全蔵が現状を知っているかって?そこになんの疑問があるのでござる?
モルダー、あなたきっと疲れてのよ…。今日は休んだら?
「まぁ、この部屋自体が季節イベントの話をしないといけないというルールなのでござるか、バレンタインの話をしようでござる」
「バレンタインの話かぁ…」
「あ、この場合、拙者達がバレンタインの話をするのであって、拙者達でバレンタインの話を描くわけでないでござるよ?」
「何の話だ?」
「忍術・説明口調でござる」
「忍者ってなんでもできるんだな。すげー」
本当に忍者って凄いよね。今後、パソコンの術とか全自動洗濯機の術とか使う予定なのだもの。
空飛んで、心読んで、分身して、ハッキングする忍者って最強では?
「それじゃあ、さく兄。バレンタインの思い出をどうぞ」
「あー……俺ってチョコ沢山貰うじゃないか…あっぶな……」
「チッ…もう少しで頸動脈をクナイで切れたものを…でござる」
「俺たちの友情はどこに?」
「時には友情を上回る激情があるんでござるよ。殺意とか」
「あなたの殺意はどこから?」
「拙者は嫉妬から」
「そんな貴方にお返しクナイッ!!」
「分身でござる」
「ちょっと待って、ござるはなんで人のお兄ちゃんの頸動脈に向かってクナイを投げてるの?そしてなんでさく兄は本職忍者のくないを平然と掴んでるの?そして投げ返してるの?私、見えなかったんだけど」
「ほら、俺じゃなきゃ見逃してるね…だったか?」
「うん、ネタを覚えてくれるのは嬉しいんだけど、それどころじゃないから。うん。なんで二人共『こいつ何言ってんだ?』みたいな顔してるの?あれ、私が正しいんだよね?」
予備動作無しから投げられた全蔵のクナイ。飛んできた高速のクナイの柄を上手に掴む桜樹。そしてお返しとばかりに投げ返すも、全蔵は既に分身の術で逃げていた。
野球のトッププレイヤーは忍者の投げたクナイを近距離でも掴めるとかなんとか…。信じるか信じないかはあなた次第。
「取り敢えず、話の続きをするけど……ほら、俺って質量のあるものなら何でも食べられるじゃん?」
「虫も?」
「ワンチャン」
「鉱物もでござるか?」
「ワンチャン」
「私…食べる……?」
「ノーチャンス」
「さく兄は質量のあるもの(クレアちゃんを除く)なら何でも食べられるとして、それで?」
「いや、なんかチョコに変なものが結構入ってることが多くて……一回、受け取った手前、今後受け取らないってこともしにくくて…貰うには貰うんだけど……その、な?色んなものが混入してるわけだよ。何故か封の開けていない市販品にも」
「oh......」
二三桜樹という人間はとてもモテる。桜華のような華やかさはないものの、快男児という言葉が似合う整った顔立ち。高身長、将来有望、勉学も一番で無くとも進学校の上位をキープし、この人当たりの良さ。野球に一生懸命取り組み、休日はやる事が無いので学校の緑化活動に手を加える勤勉さ。
一流の野球プレイヤーにして、屈託の無い笑顔、ノってくると八重歯を見せて獰猛に笑う男らしさ、インタビューで見せる天然。
属性の欲張りセットとも呼べるこの男、全国各地、はたまた世界大会で海外のファンも獲得している。
野球に興味は無いけど二三選手は好きという人も多くいる。
滅殺・アビスナート・貴志四世の並んで高校野球界のツートッププリンスである。
ちなみに貴志は試合中などは良いが、人が多い場所で写真を撮ろうとすると照れと緊張から人にお見せできない変顔を披露する。特技、睨めっこ。
「まぁ、それが結構トラウマになっていてあまりいい思い出が無いんだよな……チョコ割ったら結婚指輪と両親のハンコが押してある婚姻届が入ってた時は戦慄した」
「ふ~ん、中々におもしろ…おっと、愉快な人生を送ってるのね。はい、これチョコ」
「隠せてませんよミサキさん。いただきます」
「適応能力…一万五千…二万…ばかな、まだ上がるだと!?私でも何故みさきちが急に現れてお茶を啜っているのか一瞬疑問に思っているのに、平然と…!!」
「これは適応では無く、開き直りでは…?」
いつの間にか桜樹の横に鎮座していたミサキこと、戸問美咲。確か一章のどこかで紹介したはずなので割愛するものとする。
「ちなみに私はさく兄が高校上がるまで毎年手作りでチョコあげてました」
「毎年、水をがぶ飲みして泣きながらチョコ(のような何か)を食べてました」
「感動の涙KA☆NA」
「おかしいよな…食べてると悲しくも嬉しくも無いのに涙が溢れてくるんだ……」
「桜華殿の美味しいの幅は桁違いでござるからなぁ…」
ここで説明しておくと、桜華は極端な味音痴である。A5ランクのお肉を食べればそれが高い、美味しい。ということが分かるのだか、常人が不味いと感じるものまで『これはこれで美味しい!』と思う人なのである。
つまり、桜華は味見して美味しいと思ったチョコを桜樹に渡しているのだが、桜樹的には非常に泣きたくなる味をしている。
アニメに登場する料理下手より味見しても不味さが伝わらない分、タチが悪いんですよ、この妹さん。
「桜華って料理下手じゃなかった?」
「そう…聞いてる」
「カップラーメンとお茶漬け、スムージー、サラダ、チョコ、ケーキなら作れるよ」
「前半に料理下手が、中間にモデル的な最低限が、後半にブラコンが詰まってるでござるな」
「あ~…そう言えば、ケーキは毎年、桜華が母さんと一緒に作ってたな」
「桜樹殿達の母上は料理上手なのでござるか?」
「うちの父さんの高校時代から付き合ってて、プロ野球選手になると分かってたからバランスのいい料理を作れるようにって覚えてたらしいぞ」
「拙者の所も料理上手ではあるものの……洋食しか出ないんでござるよねぇ」
「前にござるの家にご飯食べに行ったけど畳の和室でちゃぶ台の上にフレンチ料理乗ってる光景はなかなかに笑えた」
「え、忍者の家いったのか、すげぇ、絶対秘地にある里じゃん」
「いや、エ〇キホームでござる」
「なんなら家から5分くらいだよ。ほら、前のタバコ屋さん」
「あそこか…本当にちけぇな!」
桜樹にも覚えのあるタバコ屋さん。昔、タスポも無い時代に遊びに来た叔父にお釣りをやるからとパシらされたあのタバコ屋さん。
その距離、5分どころか徒歩2分。ベランダから見えるまである。
「そう言えば、みんなチョコってパキッと冷やす派?少し溶けた感じのが好き派?」
「冷蔵庫から取り出したての方が好きだな」
「拙者は溶けた感じが好きでござるな。舌に絡まる感じが特に」
「ドロドロ…ベチャベチャ……いい…バキバキも好き」
「私は桜樹と同じでパキッと派ね」
「やっぱり分かれるよね~…」
「それでこの質問の意味は?」
「そろそろ話落として終わりたいけど、バレンタインの話全然してなくね?仕方ないからチョコの話、無理矢理やるか!って感じだね」
本当は全米が大爆笑するネタを用意していたが、文字数の関係上割愛するものとする。
「で、これいつ開くの?」
「さぁ?」
「条件だけなら桜樹がバレンタインの思い出語った時点で開くはずよね」
「謎…」
「あ、これ元から開くでござるよ」
ガチャりと飄々とした顔でドアを開けて見せる全蔵。
「これが言葉巧みの術でござる」
「チッ…騙された」
「俺、話損じゃないか…」
「これ…またやるの…?」
「もちのろんでござる。多分次は…ひな祭りでござるかな?」
「次は騙されないようにしないとね、さく兄」
「だな」
部屋を出ると共に全蔵に一撃を加えて出ていく桜華達。
お忘れ無ければ、この部屋、出るとこの部屋であったことを全て忘れるのである。
次回、また同じことになると予言します。