#2
不定期更新です。すみません。
なお、不定期更新は標準仕様です。ご了承くださいませ。
落穂拾いもひと段落した後、本営天幕では部隊長以上が集まって会議です。
それ以外の人間は撤収準備。
「篝火は前後二列で前列は倒れないようにしとけ!」
私は後で説明を受けるので副長のヴェルン様と撤収の指揮を執ります。
私は新規説明の指導教官です。生徒さんは新人さんが三人、元帝国の徴兵歩卒の方々です。
「うちは週給制です。略奪、強姦は禁止、仲間内での諍いも認めません。あと一番重要な事は団長の指示には絶対に従う事と団長の情報は酒の上での話にも漏らさない事。」
「「「はいっ!」」」
「もし破ると一律 馘です。…物理的に。先週も落穂拾いで小銭くすねた方が亡くなりましたので、そのような事の無いように。よろしくお願いしますね。」
「「「イエッサー!」」」
皆さん農家の三男以下なので大人しく聞いてくれて今日は楽チンです。
「それではあの方が副長のヴェルン様です。指示に従って作業に掛かって下さい。」
三人共駆け足で行ってしまいました。
そうこうしてると、ゆるふわルチカちゃんがふらーっと近づいて来ました。
「導師様〜、帝国の死にかけ 加減間違えてみんな治しちゃいました〜。……どうしましょう〜?……導師さまだけに?………うふふ…うふふふ」
とても綺麗な顔立ちをしているだけに 色々ととても残念です。
早く元気になってくれると良いのですが…。
それにしても帝国の方々にはこのタイミングで元気になられると少し困った事になります。
どうしたものかしら?
「どうもこうも無えな。釈放希望は持ち金半分、うちに転職なら二割、ユウの指示通りだ。」
ヴェルン様はそう言いますが彼らには撤収準備を見られてます。
「まあ、その辺は大丈夫だ。それより本営に行って話聞いてこい。」
きっと何か方策があるのでしょう、詳しく聞くのは精神衛生的に問題ある筈なのでサラッと流して本営に出頭します。
本営では会議は終わってたようでユウ様だけです。
先程の帝国兵の回復の件を報告すると、
「こちらの陣で解放はしても 帝国の陣まで無事に辿り着けるかは自己責任だからねえ。」
あーなるほど。察しがつきました。なんというかユウ様らしいですね。
ヴェルン様が言ったのを聞いたならショックを受けそうですが 言ったのがユウ様だと『ああ やっぱり、』となるから不思議です。
「で、これがここに残る残留部隊名簿。あとで通達頼むわ。それと作戦だけど……。」
と、ここからは防諜の為、筆談になります。
かな文字、と言う異世界の文字での遣り取りです。
この文章、実は事情があってかなり特殊な書き方をしてあるそうです。
なんでも普通に書くと勝手にこちらの文字に変換されるのだとか。
今のところは私とヴェルン様だけが簡単な単語を並べる程度には習得しています。
おっと、今日はカクカクした文字も使って書かれてます。頑張って覚えなきゃ。
【合図のファイアボールを確認後、爆裂術式20連。目標は後列篝火と本営周り】
どうやら残留部隊ごと吹き飛ばす計画のようですね。酷い話です。
この作戦が 作戦と呼ぶには悍ましい別の何かに感じるのは 私に軍学の知識が無い所為でしょうか?
「流石に可哀想では?」
と聞くと、内訳は 間諜の疑いあり:3名、酒場で団長の話を語った:5名、だそうです。
なんでも帝国の使者さんの「80名そこそこ」と言う発言から間諜の候補を割り出したそうで、今晩の夜襲警戒に繋がってるみたいな話でした。
酒場の5人は団長の英雄譚を給仕の女の子に語ったんだとか……新人ゆえの失敗ですか。
新人教育時の話を軽く考えたんでしょうかね? 憐れですね。
「まあ、俺も一緒に吹き飛ばされてやるから良いさ。この手柄話をあの世での酒の肴にでもして貰おう。」
「間諜の場合、通達後に逃げ出したりしませんかね?」
懸念を口にすると、
「通達の時に『部隊新設の為の部隊長選考』って言っといてくれ。」
正規軍の下っ端兵士でももう少しくらいは生存率が高いでしょうに…。
うちの団はこの辺りの思い切りが良すぎてちょっと引きます。
本来、勇者をされる方というのはこういうものなんでしょうか。
私はおとぎ話の勇者様しか知らないのでかなり違和感があります。
「俺は勇者廃業したポンコツだからな。」
あの教えられた魔術の威力や不死身の身体があってもダメだったのでしょうか?
勇者業って大変なんですねー。
そろそろ日が暮れ始めました。
食事をしたら後方の森の傍まで撤収です。
お読みいただきありがとうございます。
勇者の壊れた感じが出てないので次はもっと頑張ります。