表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/26

クロとバレンタイン

 節分から二週間もしない内にバレンタインデーだ。

 私は今、悩んでいた。

 場所はスーパーのペットコーナー。ブロガーさん達が悩んでいたのが分かる。

 専門店でもないのに何この商品数。

 世間では猫派が優勢のようで、売り場も猫関連の商品が多い。

 しかし、それはそれとして犬の人気も根強い。

 犬のおやつやおもちゃだけで、目移りする。

 しかし、こうやってクロが何を喜ぶかを考えているだけで、彼氏がいた時よりも楽しいのは何故だ。いや、そもそも仮にも彼氏だった人の事をよく思い出せない。

 かなり迷った末、今日はオーソドックスなものを試してみようと、一番定番そうな牛肉系のジャーキーを手に取った。


 食事の後、くつろぎスペースのラグに寝転がるクロを呼んだ。

「クーロ」

 ぴくりと耳を立てて、こちらを見るクロ。

 喜ぶだろうか。この子は何を喜ぶだろう。食べ物を欲する様子がないクロに食べ物で良かっただろうか。おもちゃとかの方が良かっただろうか。

 どきどきしながら、ジャーキーの袋を背に隠しながら開けた。

 一つ取り出して軽く振ってみる。

 顔の前に差し出すと、クロがふんふんと匂いを嗅ぐ。小首を傾げた。

「食べていいよ」

 ぱくり。

 食べた!

 ぱあっと自分の表情が笑みに変わる。

 犬の表情は分かりにくい。と言うより、人間と同じではない。

 でも、ジャーキーを一つ食べ終えて、目を細めて、口の端をちょっと上げたクロの顔は、確かに笑顔に見えた。

 この笑顔のために一袋全部まとめて一気にあげたい誘惑に駆られた。しかし、今まで何も食べなかったクロがどうにかなっても困るので我慢する。

 見えないように背中側でジャーキーをもう二つ三つ握り込みながら、安心と喜びが混ざった幸福感にゆっくりと浸る。

 喜んでくれたみたいで、良かった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ