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第7話 とにかく眩しい世界の管理者

「うんうん、それで?」

「」

「えーっと……キャベツ?」

「」

「違うか、あ、わかった!白菜ね」

「」

「だよね!やっと分かった。カケル!グリーンスライムは昼ごはんは白菜が良いって」

「ほんとに喋ってたか? そいつ」


俺はみんなの欲しいものと昼ごはんを用意していた。とは言ってもモンスターの半数以上はヒト語が喋れないのでジュリアが通訳をしてくれいる。


みんなの希望をまとめる。


カケル

欲しいもの 鉛筆とノート(100DP)

昼ごはん ハンバーガー(100DP)


リリー

欲 タロットカード(200DP)

昼 サンドイッチ(100DP)


ジュリア

欲 クッション(200DP)

昼 サンドイッチ(100DP)


ミノタウルス

欲 岩石(1000DP)

昼 草30kg(1000DP)


ゴルゴーン

欲 本(300DP)

昼 菓子パン(100DP)


ホワイトウルフ

欲 おしゃぶり(100DP)

昼 肉(300DP)


バッドバット

欲 止まり木(500DP)

昼 ネズミ(200DP)


グリーンスライム

欲 氷(0DP)

昼 白菜(50DP)


ミニアリ

欲 砂糖(100DP)

昼 砂糖(100DP)


ゴブリン♂

欲 時計(500DP)

昼 肉(300DP)


ゴブリン♀

欲 ほうき(100DP)

昼 魚(200DP)


アカトカゲ

欲 火薬(200DP)

昼 ハエ(2DP)


サキュバス

欲 不明

昼 不明


ロックゴーレム

欲 不明

昼 不明


クレイジーフラワー

欲 不明

昼 不明


「全部で5652DPか」

「意外に安くすみましたね」

「ミノタウルス、あんた頼みすぎだよ。なんだい岩石って」

「筋トレのために決まってるモー」


俺は昼飯をリビングに片っ端から出して行く。


「わーい!美味しそう!」

「じゃあ、手を合わせて」

「手?」


この世界には食前の挨拶の文化はないようだな。


「野菜も肉も元々命なんだ。感謝していただかないとな」

「へぇ、面白い考え方ですね」


みんなが俺の見よう見まねで手を合わせる。


「「「いただきます!」」」




●○



昼を済ませると俺は1つ気がかりだったことを尋ねる。


「ミノタウルス、ゴルゴーン。2人は名前って欲しいか?」

「欲しいモー」

「ないよりあった方がいいねぇ」


2人は即答する。


「じゃあ俺が名付けてもいいか? ダンジョンにはネームドモンスターっていうシステムがあって名前をつけとくといろいろ便利なんだ」

「モー。よろしくお願いするモー」

「問題ないわ」

「よし、じゃあ決めるぞ。まずミノタウルスは……『ウルス』だ」

「ウルス……ウルス……モー!気に入ったモー!」


ミノタウルス……いや、ウルスは嬉しそうに飛び跳ねながら背中に背負っている斧を振り回した。

普通に危ないわ。あ、リリーが飛び蹴りした。


「そしてゴルゴーン。お前の名前は『ステンノー』。『ステンノー』だ」

「ステンノー……いい響きだね。蛇女とか言われたら石にしてやるところだったけど」

「あ、あはは……」


ステンノーは少し顔をほころばせた。


「まあまあ、ケダモノ風情にそんなお名前勿体無いですわ」

「っ!?」


不意に背後から声がした。

慌てて振り向く。


「それにこんな豪勢なお食事。化け物どもにはその辺の糞でも喰らわせておけば良いものの。お人好し……いや、愚かといった方がよろしいですわね」


そこにいたのは天使だった。

透き通った肌。

吸い込まれそうな瞳。

赤く艶のある唇。

全世界で右に出るものはいないと断言できるほど美しい女。

背中から生えた大きな羽が俺を包み込むように光っている。

美しい。

美しい。

美しい。

美しい。


「カケル様!カケル様!」

「何やってんだいマスター!しっかりするんだよ」


リリーとステンノーが雑音を喚き出す。

うるさい。なんだこの女たちは。

そう思いつつも俺は天使から目を離せないでいた。


「カケルーーー!」

「ダァ」


あぐらをかいて座っている俺の太ももにかすかな感覚を感じた。

その瞬間世界が闇に包まれた。

いや、違う。元の世界に戻ったのだ。

森羅万象が光り輝く世界から闇と光が共存する元の世界へと。


足下を見るとジュリアに抱きかかえられたサキュバスがこちらを見上げていた。


「今のは『魅了』だよ。それも超上級のね。虜にされたが最後、飢え死にするまでその場に立ち尽くすという恐ろしい呪い。このおばさんの仕業だよ」

「おばさんとは失礼ですわね。このちんちくりんが」

「失礼なのはそっちの方だよ。『最期の恋(そのわざ)』は740年前にサキュバス族7代女王ジャベールにより永久禁止になったはず。いくら世界の管理者でもその技は使うことは禁じられている」

「ご丁寧な解説感謝いたしますわ。そのサキュバスさえいなければ問題解決できたのでしょうが。今すぐ絞め殺してやりたいですわね」

「やれるものならやってみろ」


ジュリアと謎の女は言い争いを始めた。その間にサキュバスはリリーに連れられ、ウルスやゴブリン♂の体を叩く。


「モッ!?」

「ゴブッ」


どうやら人型に近い2人にも謎の女の魅了がかかっていたようだ。恐ろしい技だな。

赤子とはいえサキュバスが居てくれて本当に良かった。


「ダンジョンマスターのカケルさん。私はあなたにお願いに来たのです」


謎の女はジュリアとの言い争いを切り上げると俺の方に向き合う。


「お願い?」

「はい。このモンスター……魔王『ジュリア』を天界に返して欲しいのです」

「天界? あの怠惰と堕落の権化の国が?」


横からジュリアが口を挟む。

謎の女はそれを無視して話を進めた。


「こちらの魔王ジュリアは人類への最後の試練なのです。今の人類は文明も知識もまだ発達していないません。このモンスターが本気を出せばこの世界など3日とかからず滅んでしまいますわ」

「最後の試練?」

「はい。未曾有の大災害、猟奇殺人犯の誕生。国を挙げた戦争。街を襲う野生のモンスター。これらは全て人類の世界の管理者からの試練なのですわ。もちろん、ダンジョンマスターの召喚も」

「俺も……人類に対する試練の1つ……?」

「その通りです。もちろんタダでとは言いません。100万DP。これと交換でどうでしょうか」


俺は口をつぐむ。


「カケル……」


ジュリアの不安そうな顔。


「本来なら、俺は先の襲撃で死ぬはずだった。いわばジュリアは命の恩人だ」

「………………」


謎の女が眉をしかめる。


「つまり、ジュリアは渡さない!」

「そうですか。残念です」


そして続けてこう言った。


「ならば我々世界の管理者は人類に肩入れいたしますわ。魔王ジュリアを倒すほどの勇者が間も無く何人もこの世界に現れることでしょう」


刹那、女はまばゆく光り始めた。


「くっ……」


あまりの眩しさに目を瞑る。

再び目を開いた時、そこに女はいなかった。



「なあ、ステンノー」

「なんだい、ウルス」

「お互い良い名前もらったモーな」

「そうだね。あんたの『ウルス』ってのは『ミノタウルス』のウルスから取ってるんだろうね」

「覚えやすくていいモー」

「だね。でもアタシの『ステンノー』の由来ってなんだろうね?」

「ステンノー……ギリシア語で『強い女』。ギリシア神話に登場する怪物、ゴルゴーン三姉妹の長女の名前だモー。海の危険が神格化したケートーとその旦那ポルキュースの子。次女のエウリュアレー、三女のメドゥーサ、他にも姉妹関係にグライア三姉妹がいるモー」

「アンタそんなキャラだったっけ!?」

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