第6話 ダンジョンメイク!!
次に俺が行ったのは居住スペースの設置だ。
入口と反対側の壁から通路を伸ばす。
メニュー画面の『リフォーム』で自由自在に通路がしける。便利でいいな。
「えーっと、あんまり大きすぎるのもあれだよな」
俺は道幅1メートル、高さ2メートルほどの廊下を敷いて行く。
「通れないモー」
「…………………」
入口でミノタウルスがつっかえていた。
●○
通路を拡張して横幅3メートル縦5メートル
にする。
20メートルほど通路をを伸ばし大きな部屋をその先に作った。
縦横20メートル四方の部屋だ。
「ここは何ですか?」
「リビングというか、基地というか……とにかくみんなが集まれる場所だ」
「なるほど」
「内装は後で整えるとして……」
俺はさらにリビングの隅に小さな部屋を作る。
「この部屋は?」
「ダンジョンコアの保管場所にしようと思ってな」
俺は白く輝くダンジョンコアを抱えてくると地面に丁寧に置いた。
「ああ、そんなんありましたね。すっかり忘れてました」
「お前ダンジョンサポーターだろ」
廊下に戻って俺は小部屋と少し大きめの部屋を1つずつ用意する。
「こちらは?」
「これはトイレだ。小さい方は俺たちサイズ用、大きい方はミノタウルスみたいなでかいやつ用だ」
『土の床』『土の壁』『土の天井』から『タイルの床』『石の壁』『石の天井』に変える。
更に俺はトイレと手洗い場を設置した。
「随分近代的だな……」
トイレに設置されたものは真っ白な洋式便所。うっすらと記憶にある日本のそれに近い。
文明の発達していないこの世界にこんな物があるのか。
「気にしないでください。魔法の力です」
「……魔法ってすげぇなぁ」
「なんですか、その皮肉った言い方。殺しますよ?」
「いや殺さないでよ」
まあ、中世ヨーロッパみたいにツボにためて道にぶちまけるよりかは断然衛生的だ。
『カンキークン(極小)100ポイント』を設置してトイレを作り終えた。
「次は部屋だな。俺とリリーにモンスターが13匹。全部で15室か。体の大きさがまちまちだからうまく設置しないとな」
「モンスターにまで自室を与えるとは殊勝ですね。ところで、部屋は14室でいいかもしれませんよ」
「ん、何でだ?」
「あちらをご覧ください」
俺はリリーの指差す方向を見つめる。
「あれは……」
サキュバスの赤ん坊とホワイトウルフが身を寄せ合ってお昼寝していた。
「かわいいな」
「そうですけど……そういうことじゃありません」
リリーはため息をつく。
「ホワイトウルフが母性に目覚めたらしくて、サキュバスを引き剥がそうとすると吠えるんですよ。あの2人、いや1人と1匹は同じ部屋にした方がいいかもしれません」
「へぇ、そんなこともあるんだな」
「モンスター同士の交流も結構あるみたいですよ。注意深く見てみると何か分かることがあるかもしれません」
そう言われて俺はモンスターたちを見つめる。
ゴブリン同士が親しく話しているようだ。
「やっぱり同じ種族同士言葉も通じる分仲良くなれるようですね」
他には……ミニアリとグリーンスライムとクレイジーフラワーが見つめ合っている。
「あれはミニアリを食べようとするクレイジーフラワー。クレイジーフラワーの葉っぱを狙うグリーンスライム。そしてグリーンスライムを齧ろうとしているミニアリ。互いに牽制し合っているんですね」
「三つ巴かよ」
俺は三匹の間に入って仲裁する。コラ、仲間なんだから食べようとすんな。
「そういえば、モンスターに名前をつけれることは知っていますか?」
「名前……?ネームドモンスターってことか」
「さすが、よくご存知ですね。ジュリアさんや私はもう名前を持っているので新たに名前をつけることはできませんが、ゴルゴーンやミノタウルスは名前をつけることができます」
「そういや、あれって種族名だったか」
俺が『人間』って言われるようなもんか。あんまり気分良くないかもな。
「ネームドモンスターにすることでメリットがあります。それはフロアボスやダンジョンボスに任命できることです。
更にメニュー画面からネームドモンスターのステータスも直接見ることができます。
その上ネームドになることでステータスが跳ね上がるんですよ。あの2人がネームドになったらもうこの世に敵はないかもしれませんね」
「いいこと尽くめだな。名前かぁ……ゴルゴーンなら………………………蛇女なんてどうだ?」
「私がゴルゴーンなら貴方を石にしてますね」
「じょ、冗談だよ……」
そんな話をしながらも俺はちゃっかり全ての部屋を作り終えた。
俺、リリー、ジュリア、ゴルゴーン、ミノタウルスの部屋は『フローリングの床』に『ビニールクロスの壁』、『ビニールクロスの天井』にかえた。リビングと廊下も同様にしてある。
それぞれの部屋にはとりあえず『ベッド(2000DP)』と『照明(500DP)』を設置。各自欲しいものはおいおい増やしていこう。
他のモンスターたちの部屋は『土の壁』『土の床』『土の天井』のままにしておいた。
リリー曰く、彼らはまだレベルが低いから自然の状態に近い方がいいらしい。
それからホワイトウルフとサキュバスの部屋は同室にしておいた。
2匹ともレベルが低いから部屋には手をつけないつもりだったが薄暗い洞穴の中で身を寄せ合う2人を想像してしまい、とりあえず『毛布(500DP)』を置いてきた。
最後に俺のこだわりはお風呂。
ミノタウルスは「フロ? なにそれ美味しいんだモー?」って言ってたから人間サイズのもの。
だが足を伸ばして入れる大きなものだ。
ここには1万ポイントも使ってしまったがリリーには内緒である。
「いいじゃないですか。きっとみんな喜びますよ!」
一通り見て回ったリリーが笑顔で言った。早速俺はみんなを集める。
ジュリア「うわーー!すごい!え、私の部屋もあるの!?嬉しーーーー!」
ゴルゴーン「ありがたく使わせてもらうよ。アタシらみたいなモンスターに部屋を作ってくれるとはいいマスターを持ったね」
グリーンスライム「」
バッドバット「キィーーー」
クレイジーフラワー「グガウッ」
ミニアリ「…………」
ミノタウルス「モー」
ゴブリン♂「ゴブゴブ」
ゴブリン♀「ゴブブゴ」
ホワイトウルフ「zzz」
サキュバス「zzz」
ロックゴーレム「。」
アカトカゲ「シュロロッ」
「何でしれっとミノタウルスも鳴き声だけなんだよ」
みんな喜んでくれたようでよかった。
かなりDPをつかったが、まだ半分以上残っている。
せっかくだから少し奮発するか。
「よし、みんな!1人1個欲しいものを言え!あと今日の昼飯もな!」
「キィーーー!」
「コブゴブゴブ!」
「本当に!?えーっとなににしようかなぁ!」
「」
「ガ………ガ……」
「モオオオオオオ!」
「おんぎゃあ!」
「アタシの頭の蛇も人数に数えていいのかい?」
「ワオーーーーーン」
「シュロッ!!」
「タロットカード」
「コブ!ゴブブゴ!」
「……………」
「全然わからん!」
「なあ、ゴルゴーン」
「なんだい、ミノタウルス」
「ゴルゴーンは自分の頭に生えてる蛇のこと鬱陶しく思ったりしないのかモー?」
「ああ、これかい。別に気にならないね。こいつらは生きてるわけじゃなくて私の意思で動いてるから。要は体の一部なんだよ」
「なるほどだモー。俺が俺の体に沸いてるダニを気にしないのと一緒なんだモー」
「一緒にすんじゃないよ!」