第5話 ダンジョンメイク!
S級モンスターへと進化を遂げたゴルゴーンとミノタウルスは30秒とかからず侵入者を一掃してしまった。
ミノタウルスは巨大な斧で逃げる敵をなぎ払い、ゴルゴーンはその追撃から逃げ切りかけた十数人を一気に石化。
ゴルゴーンはどういうわけか石にならなかった兵士も迷うことなく手刀で首をはねている。
2人が俺たちの前に帰ってくる。
「マスター。任務完了だよ」
ゴルゴーンが目を固くつぶったまま言った。この目がひらけば俺も石になってしまうのか。
「モオー、骨のない相手だったモォー」
ミノタウロスが背中に巨大な斧を背負い直す。斧から血が滴っていた。普通に怖いわ。
「強いんだな、2人とも」
「まさか1人り残らず駆逐してしまうとは……」
リリーも唖然としているようだった。
「ふっ……凄いのはのはそこのちっこいのさ」
「まさか1日でこんなパワーが手に入るとは……感動だギュウ」
「アンタ語尾安定してないね」
俺は改めて骸骨マスクのモンスターを見つめる。
「『魔王』……とか言ってたよな? 」
「うん、ジュリアはすべての魔族を統べる魔王様なのだ!」
ジュリアは嬉しそうに答える。
「私はこの世の全てのモンスター——伝説の魔物の名前でさえも——記憶している自信があります。しかし、魔王というモンスターは聞いたことがありません」
リリーは淡々と言った。
「まあ、そうだよね。だって魔王はこの世界には未だかつて誕生したことがないはずだから」
「どういうことですか?」
「魔王が生まれる日は世界の管理者によって管理されているんだよ。本来なら、ジュリアは今から2807年と23日後に生まれるの。でも、世界の管理者すら凌駕する『ガチャ』の力で私は無理やり生まれたんだ」
「せ、世界の管理者? 聞いたことがありませんが……」
「まあまあ、世の中には知らなくていいこともあるんだよ。分からないから面白いこともあるしね」
「………………」
リリーは少し悔しそうな顔をした。
なんの話をしているか分からないが、俺はさっきから気になっていることを尋ねる。
「ところで、その仮面はつけてないとダメなのか?」
「ううん、別にそんなことはないけど……オシャレでしょ?」
「……………………」
「え? オシャレじゃない?」
「ごめん、むしろ不気味」
「え」
ジュリアはしょんぼりと肩を落とすと骸骨の仮面を外した。
ツインテールの少女が顔を出す。
いや、むしろ幼女と言った方が良いだろう。愛嬌のある顔立ちで、紫色の髪の毛が印象的だ。
「モー!牛でも分かる美人だモー」
「ほんとだねぇ。それにしても毒々しい色の髪の毛じゃないかい」
「お前がそれを言うのかモー……?」
ジュリアはぺこりと頭を下げた。
「改めまして、ジュリアです!よろしくおねがいします!」
「ええ子や……」
小さな子供がきちんと挨拶をしているだけでなんだか胸が熱くなる。
ひとしきり眺め回した後リリーが俺に話しかけてくる。
「それはそうとカケル様。ランドール王国の兵士たちを倒したおかげでダンジョンポイント……長いのでDPって言いますね。DPが加算されたようですよ」
「本当か!? メニュー!」
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200763 DP
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「一、十、百、千、万……十万!20万ポイント!?」
「強敵を倒したとはいえ、一気にリッチですね。
「よし……これで本格的にダンジョンメイクができる……。何しよっかなぁ……トラップや迷路を駆使した迷宮!? それともたくさんモンスターを呼んで王道ダンジョン!? あえてモンスターの街を作るのも捨てがたい……」
俺の中で様々な妄想が広がる。
「みんなはどんなダンジョンにしたい!?」
「お腹すいたモー。食べ物が欲しいモー」
「個室が欲しいよ。こんな空間じゃ休みたくても休めないからね」
「とりあえずトイレが欲しいですね」
「小さな入口が1つしかないから空気が悪いよー! 魔力で半永久的に換気できる装置があるからそれを出して!」
ダンジョンメイク意外に生々しいな。
まず俺はダンジョンサイズを調べる。
調べたところによるとダンジョンは200メートル四方と相当な大きさだった。天井までの高さは18メートルもある。
ジュリアの言っていた換気用魔法道具を購入した。その名も『カンキークン』。
天井に取り付け効果を発揮するらしい。
10メートル四方の部屋を対象にしたものから100メートル四方の部屋を対象にしたものまで5段階のサイズに分かれていた。
俺はその中で1番大きい『カンキークン(特大)5000DP』を2つ購入したのだ。
「へぇ、大きいな」
直径2メートルほどの大きな扇風機のようなもの。天井に取り付けても空気の循環しか出来そうにないが魔法の力で空気の排出を行うらしい。
「で、どうやって取り付けるんですか?」
「……………………………」
リリーの素朴な疑問。
すっかり忘れていた。
天井まで18メートル。
巨漢のミノタウロスが背伸びしても届かない。
完全に電球買う感じで購入してしまった。
「あはは、肩車でもする?」
「地獄車ならいいですよ」
「ごめんて」
「キーーーーーーーー」
突然不快な音が脳に響く。
「な、なんだぁっ?」
超音波を発していたのは体長1メートルのコウモリ型モンスター『バッドバット』だ。
バッドバットは『カンキークン』の隣に着地する。
「もしかしてお前がつけてくれるのか?」
「キッ!」
バッドバットが体を折り曲げる。どうやらそのつもりらしい。
「ありがとう! 助かるよ」
「キーーーーーーーー!」
「すいません。その音波どうにかならなりめせんか? ちょっと耳が痛くて」
リリーが口を挟む。確かに耳の大きいエルフにはこの音はより不快だろう。
「…………ギ〜〜〜〜〜〜〜〜」
「うわっ、めっちゃバリトンボイス」
バッドバットは大きな羽を羽ばたかせて数分もかからず『カンキークン』を設置した。
ダンジョン名 未定
ダンジョンマスター カケル
ダンジョン面積 200メートル四方
保有モンスター
F級 11体
E級 6体
D級 1体
C級 0体
B級 0体
A級 1体
S級 2体
SS級 0体
SSS級 1体
モンスター 計 22体
保有ポイント 190763 DP
評価ブクマありがとうございます。