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第38話 魔王軍四天王

『ジョーフンタウン跡地』。タウンという名はつくものの、そこは人口5万人を越える巨大な都市でかつては最も活気がある町の一つだった。

しかし、領主の後継者争い、宗教上の対立など様々な原因が複雑に絡み合い内乱が勃発。

町は領主の息子を推す西部地区と弟を推す東部地区に分断され8年の争いのあと、西部地区が辛くも勝利。

しかし、市街地をメインに行われたその紛争はジョーフンタウンの治安は乱れ招き、結局5カ月と持たずその町は崩壊した。


「繁栄の先にあるのは衰退のみ……といったところでしょうか。 あら、いまのは名言ですわね?」


眼前に広がる廃墟郡を見つめつつ世界の管理者は誰ともなしにそうつぶやいた。純白の白い羽がゆっくりと羽ばたいている。


空中に浮かぶ世界の管理者は血色の良い唇をなめた。


「さてと、あまり時間がありませんわね。早く片付けないと気づかれてしまう……」


世界の管理者は町の中央に位置する教会を指さした。


「【ビーム】」


巨大な光線が教会を包み込む。教会の影がみるみると消えてなくなった。


「手ごたえなし……ですわね」


世界の管理者は自分の左肩を撫でた。その肩の先には本来あるはずの腕がない。

先の戦闘で多くのダンジョンモンスターたちの命と引き換えに失われたものである。


「S級程度のモンスターたち相手にこの様……高すぎる代償ですわね」


世界の管理者はゆっくりと後ろを振り向いた。


「あなたもそう思いませんこと? ドラゴン」


世界の管理者の背後にいたのはファイアーマジックドラゴンのグラオン。

グラオンは牙をむきだして吠えた。


「仲間たちの仇だ……楽に死ねると思うなよ!!! 」

「絶滅危惧種が無茶するものではありませんわよ?」

「【業火の炎】!!!」

「【ビーム】!!!」


大空を覆いつくす爆炎と光線を合図に戦いの火蓋は切られた。


狙いは大雑把ながらもドラゴンのブレスの攻撃範囲は広大だ。ブレスが放たれた後回避に移っては遅い。

ドラゴンの息遣い、目線の向き、体の動きを読み直撃を避ける。


世界の管理者にとってもドラゴンとの空中戦は困難を極めた。


「【ビーム】!」


爆炎をかき分け光線がグラオンに迫る。


「遅いっ!」


その巨体に似合わぬすさまじい速さ。

グラオンは難なくかわす。


「ぐうっ!」


グラオンの長い尾が鞭のようにしなり、世界の管理者を叩き落した。


世界の管理者はその勢いを全く殺せることなく、廃墟になった家の天井を突き破り地面にたたきつけられる。


「くっ……」


濛々と舞う埃に顔をしかめつつ世界の管理者は何とか立ち上がった。


「!」


世界の管理者は殺気を感じ地面を転がる。


耳をつんざくような破壊音。先ほどまで自分の立っていた場所が瓦礫で埋まる。


「失敗」


世界の管理者を家屋の壁もろとも吹き飛ばそうとしたけた外れのパワー。

オリハルコンゴーレムは真っ赤な瞳を輝かせる。


「【創造】」


地面に積み重なる瓦礫が人間の形につながり合う。


S級以上のゴーレム族のみが使える【創造】。あたりの資源を利用し新たなゴーレムを生み出す技だ。


世界の管理者の周りをロックゴーレムが取り囲む。

「【ビームⅡ】!!」


世界の管理者を中心に全方位にビームが発射された。

一撃でロックゴーレムたちは元の石へと朽ち果てる。


世界の管理者は頭上を見上げた。

そこにはギガのこぶしが迫っていた。


「【破壊】」


世界の管理者は体をよじり直撃を回避する。

ギガの拳は地面を叩いた。


その刹那、世界の管理者の全身に衝撃がはしる。ギガが地面を殴ったことで起きた衝撃波だ。

世界の管理者は反対側の壁を突き破り家の外に弾き飛ばされた。


「なんという……!」


世界の管理者は地面に這いつくばった。


「!?」


背中に何かが乗っている。


世界の管理者は慌てて立ち上がろうとしたがもう遅かった。右腕を絡み取られ首の下を通して左肩に回される。


「ぐっっっっあああ…………か」


世界の管理者は極められていた。


「ラッキー。もう動けないっしょ」


背中の上から聞こえてくる。のんきそうな声。


「た、たす……」

「ちょ、ここにきて命乞いとかマジやめろって。萎えるから」


世界の管理者の背中にまたがるのはサキュバスクイーンのリンダ。彼女は軽い口調とは裏腹に鋭い目つきで世界の管理者を見下ろしていた。


「シロの仇だから。覚えてるよね」

「はあっ…………」


世界の管理者の目に涙が浮かぶ。更には口から泡を吹きだした。

それでもリンダは力を緩めない。世界の管理者はぴくぴくと痙攣した後意識を失う。


「……勝った。案外あっけなかったな」


リンダは手を離した。

世界の管理者の持ち上げられた上半身が重力に従ってどさりと落ちた。


「リンダ殿、詰めが甘いですな」

「ふぁ?」


気が付けばリンダはシャーロックの腕の中に納まっていた。

リンダはシャーロック横顔をまじまじと見つめたあと、視線を世界の管理者に向ける。


「あらら」


世界の管理者は両足で立ち上がり、ファイティングポーズを構えていた。口の端についた泡を荒っぽくぬぐう。


「演技だったってこと? とんだ女優ネ」

「危うく殺されるところでしたぞ、リンダ殿」

「ありがと、ほっぺにキスしてあげよっか?」

「年寄りをからかうものではありませんぞ」

「あたし等おない年だけどね」


リンダが地面に降り立つ。


世界の管理者は眉をしかめた。


「さすがにSS級モンスター相手は骨が折れますわね」

「そのようで。絶体絶命とはこのことですな」


グラオンが上空から地面に降り立つ。

ギガがガシャガシャと音を立てながら歩いてきてシャーロックの隣に仁王立ちした。


世界の管理者の前に立ち上がる4人のモンスター。


「さしずめ、【魔王軍四天王】といったところですかな」


シャーロックが冗談交じりに言う。


「ならば私は勇者ということでしょうか」


世界の管理者はにやりと笑った。

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