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第4話 ムリゲー

41頭の馬が草原を走り抜ける。

耳をつんざくような馬の蹄の音が響く。

それほどまでに馬は全力で駆け抜けているのだ。


「デラ。前方にダンジョンが見えたぞ」


隊長が私に声をかける。


「分かりました」


私は隊長に向かって返事をする。


私の名前はデラ・オスマン。ランドール王国軍総司令部直轄軍第3中隊の副隊長を務めている。

私はこの中隊で唯一の女である。

昔はいくら努力しても認められなかったが、アーサー隊長は私を見てくれた。

隊長の推薦のおかげで今の私の立場があるのだ。


「しっかりつかまっていろ」

「はい!」


私は隊長の腰に再び強くしがみついた。





「へぇ、ここがダンジョンかぁ」

「くっくっく……まさか、俺たちがダンジョンの制圧を任される日が来ようとはな」

「聞いた話によるとさ、初期のダンジョンは弱小モンスターしかいないらしいよ!」

「果たして我々が相手にするほどの敵なのか……?」


ダンジョンに着くと馬から降りた隊員たちが雑談をしだす。


「おい、油断するな。ここはアビシア帝国の国境線に近い。いつ敵国がダンジョンを狙って攻めてくるかわからんぞ」


私は愚痴っている隊員たちに注意をした。


「はっ!失礼しました」

「…………………………」

「随分心配性だね。過去300年に渡って戦争など起こってないっつーのにさ」

「申し訳ありません、副隊長殿」


隊員たちは思い思いの返事をした。

上官の私にあるまじき返答をする者もいたが、この隊らしいといえばこの隊らしい。

この中隊には少し変わった人間が集まっているのだ。

腕は確かだがその性格や災いして他の部隊からつまはじきにされたものがほとんどだ。


「集合!」


不意に号令が響く。隊長の声だ。


「「「「はっ!」」」」


間髪入れず41人の声が揃う。

隊員たちは訓練通り隊長の前に並ぶ。

私は隊長の隣に立った。


この隊の連中は実力を正当に評価する隊長のことを皆尊敬してやまないのだ。

もちろん私もそんな一員である。


「ただいまよりダンジョン踏破作戦を決行に移す。踏破方法はプランD。フオーメションG。不足の場合にプランS。何か質問は……スティバース大尉」

「ダンジョンは弱小モンスターしか出てこないと聞きます。プランDよりプランEの方が得策かと」

「デラ少佐。説明を」


隊長が私に説明を促す。


「はっ!7年前に確認されたスタファン半島南西部のダンジョンには初日にしてB級モンスターのガーゴイルが確認されています。さらに15年前、ハルグール海岸のダンジョンではC級モンスターのレッサードラゴンとオーガが発見されました。このようにダンジョンはまれに強いモンスターが出現するようです」

「なるほど、低いとはいえ危険性がある以上まとまって行動すべきということですね。失礼しました」


スティバース大尉は素直にひいた。


「それでは行くぞ。油断をするなよ」


隊長の念押しなど正直言って無意味だ。私達は決して油断をしていなかった。

ただ、まさかあんなことになるとは隊長を含め、誰も予想していなかったのだ。




ダンジョン内は想像より何十倍も広かったようだ。こんな広いダンジョンは聞いたことがないと隊員が口々に言う。


「おい、あそこに人影があるぞ」


ヘクター中尉が言った。


「男と女。子供もいる。ああ、それぞれ1人ずつだ。牛とコウモリ……あと花がある。クレイジーフラワーかもしれない」


隊で1番、目の良いヘクターは小声で言った。


「デラ、何か聞こえるか?」

「すみません。この距離では……しかし何か言葉を交わしているようです」

「知能はあるということか……」


隊で1番耳の良い私は必死に耳をすますが、100メートル近く離れた人間の言葉は聞き取るのは困難だった。


「捕虜か?」

「まさか、この近くに村はない」

「くっくっく……じゃあモンスターってことだな」

「ダンジョンマスターの可能性もあるぞ」

「どちらにせよ近づかなければ意味がない。慎重に行くぞ」


私達は慎重に奴らに向かって足を進めた。

50メートルほど進んだ時。


「モオオオオ!」

「シュルル!」


モンスターの雄叫びが聞こえた。


「な、なんだ」

「分からん! 進軍やめ!」


隊長の号令がかかり、皆一斉に足を止める。


「お、おい!あれを見ろ!」

「な、なんじゃありゃ!」

「敵が巨大化してるぞ!」


私も空気が変わったのを肌で感じた。


「あ、あいつはなんだ!?」

「『ハカイギュウ』……いや、『ジュウリンギュウ』だ!」

「隣の蛇は『ヘッドズスネーク』じゃないか!?」


誰かが叫んだ。


「A級モンスターがなんでこんなところに……」


隊長がそう言った瞬間。


「モオオオオオオ!」

「シャアアアア」


反射的に隊員は声の方向に顔を向けた。


「な、なんだあれは……」

「バ、バケモノ……」


歴戦の兵士達が皆呆然と佇む。

強大なモンスターが再び現れたようだ。

私は訳もわからずただただ隊長の指示を待つ。


「トリンガル。撃て」

「はっ!」


トリンガル少尉はうちの中隊一の弓の名手である。

トリンガルは素早い動作で矢をつがえると敵に向かって弓を放った。


「なっ!」

「矢を素手で止めただと……?」


どうやら相手は相当の実力者らしい。

ざわつく隊の中で隊長の言葉を聞き漏らすまいと耳をすますと、


『賢明な判断を頼むよ』

『あ、ああ。あいつらを殺して来てくれ』


モンスターの声がかすかに私の耳届いた。


「目標こちらに来ます!!!!」

「撤退!撤退だ!」


隊長が私の言葉に対し、ほぼ条件反射のように叫ぶと全員脇目も振らず逃げ出す。


幸いにも出口までは50メートルしかない。私も風の感覚を頼りに私も地面をけった。


「遅いモオオオオオオ!」

「ギィヤああああ!!」

「ごぎゃっ!」

「ぐはっ!」

「うごっお!」

「おごがあっっ」


背後から怪物の雄叫びと仲間の悲鳴が聞こえた。

どうやら巨大な斧で後方部隊が薙ぎ払われたらしい。モンスターは50メートル以上離れている距離を数秒で詰めて来たようだ。


「振り返るな!! 走れ!」


第2分隊長のモッドの声。


「グガアッッ!?」


しかし1秒後彼の声は悲鳴に変わる。

モンスターは迷うことなく私たちの背後から襲いかかって来てるのだ。

それから4秒間で29人の悲鳴が聞こえた。

幸いにも隊長は健在らしいが、残り生存者は13人しかいない。


「先にいけええ!」

「隊長!」


隊長が逃走陣から離脱し背後の化け物に立ち向かう。

私も一緒に残りたかった。

せめて感謝の言葉を伝えたかった。

それでも、私は軍人である。

祖国のためには情報を伝えねばならない。


「走れえええええええ!」


私は軍規通り戦線を離脱した隊長に変わり、指揮をとる。


「ガァッ」


風をきる音の中にかすかに隊長の断絶魔が聞こえた。


出口まであと5メートル。

私は背後に迫る気配がないのを確信した。あのモンスターは隊長が文字通り体を張って足止めしたのだ。

あと、3メートル。

その時。


「石化」


突然目の前に人が現れた。

途端に今まで一緒に走って来た仲間の気配が消える。


私は足を止める。

人影は私の目の前にいるようだった。


「あんた、あたしの石化が効かないんだね」

「…………………」


こいつは強い。間違いなく。

私の聴覚が、嗅覚が、勘がそれを教えてくれる。


「ああ、なるほどね。アンタ目が見えないわけね」

「死ね!」


私は剣を抜く。


「かわいそうに」


それより早く私の首が跳ねられた。


ダンジョン名 未定

ダンジョンマスター カケル

ダンジョン面積 東京ドーム1個分

保有モンスター

F級 11体

E級 6体

D級 1体

C級 0体

B級 0体

A級 1体

S級 2体

SS級 0体

SSS級 1体

モンスター 計 22体

保有ポイント 0

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