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第35話 スーパー三つ巴ブラザーズ

「キシャーーーーーーーーッ!」


ジャイアントアントが牙をむいて吠える。

世界の管理者は脂汗を流しながらアント達を睨みつけた。


「このクソ昆虫どもめ……」


いつもの丁寧な口調を忘れ、世界の管理者は口汚く罵った。


「見せて上げましょう……私の本気を!!」


世界の管理者は右手で目の前のジャイアントアントをを指差す。


「【ビームⅡ】!」


その途端、世界の管理者を中心に、四方八方へと光線が飛び出した。


「シャアアアアアアッ……………………」


警戒していた目の前のジャイアントアントは避けきれたが、ほかのアント達は直撃し、断末魔をあげて消し炭になる。


たった1回の攻撃で5匹のジャイアントアントが死んだ。


「シャーーーーーーー!!!」


残っているのはジェネラルアントとジャイアントアントが3匹。

そのうち1体のジャイアントアントは瀕死の重傷を負っていた。


「ジジジ……シャー」


瀕死のジャイアントアントは頭だけをもたげてそれでも世界の管理者に威嚇する。


「ふ、ふふふ……。何匹が残ってしまいましたか。万全の状態なら逃さなかったものを……」


世界の管理者はうっすらと笑みを浮かべる。左肩から流れる血は止まりつつあった。


「シャー!」


ジェネラルアントの号令とともに、動ける三匹のアントが世界の管理者に飛びかかる。


「もういいですわ。【ビームⅢ】」


ジェネラルアントの牙は世界の管理者に届くこと無く、辺り一帯が光に包まれた。


●○


「やれやれ、ですわ」


世界の管理者は自分の左肩から右手を外した。

血はすでに止まっているがかなり痛みが残っている。失った左手を取り戻すためには元の世界に戻る必要がある。


「少し面倒ですわね。さすがにこれでは部が悪いですわ。一度戻りましょうかしら」


世界の管理者はジョーフンタウン跡地に背を向けた。


辺り一面は焼け野原だった。


アント達はもちろん、クレイジービッグツリーもゴッドスライムも人間達も皆蒸発してしまったことだろう。


世界の管理者が使う【ビーム】という技はこの世界では類を見ないほど高い攻撃力を持つ。


【ビーム】は正面に光線を放つ。

【ビームⅡ】は8方向に光線を。

そして今しがた使われた【ビームⅢ】は128本のビームを全方位に放つ技だ。射程こそ短いが回避する方法は無く、もはやそれは爆発に近いものがある。


半径1キロの生物は敵味方問わず全て吹っ飛んだ。

はずなのだが。


「」

「…………」


世界の管理者の目の前に二体のモンスターがいた。


片方は世界の管理者の頭ほどの大きさのスライム。

もう片方はD級モンスターのクレイジーフラワー。


そういえば、ゴッドスライムの防御力は世界の管理者のビームを凌ぐほど高い。

世界の管理者がビームを使った瞬間、クレイジープラントはクレイジーフラワーに姿を変え、それをゴッドスライムが盾になり守った。

が、ゴッドスライムはさすがに体の大部分を失ってしまい、今やただのスライムに毛が生えた程度の形状しか維持できていない。


世界の管理者はそこまで計算すると黙って右手を二体のモンスターに向かってかざした。


おそらくこの二体のモンスターでは【ビーム】に耐えきれるだけの体力は残っていないだろう。

取るに足らない雑魚モンスターではあったがそれを見逃すほど世界の管理者は甘くはなかった。


「【ビーム】」


「」

「…」


スライムとクレイジーフラワーは悲鳴をあげること無く、光線の中に消えた。


世界の管理者は、唾を吐き捨てるとスタスタと歩き出した。左手を失ったのは痛いが、相手も多くのモンスターを失った。今回のところは引き分けだろう。


そんなことを考えつつ、世界の管理者は歩みを進める。


「ガボッ!?」


いきなり世界の管理者の視界が暗くなる。

その途端鼻と口から液体が体内に流れ込んできた。


「ガボッボボ!? ブボボッ」


世界の管理者は右手で必死に顔にまとわりつく何かを払いのけようとする。

顔にまとわりつくものは柔らかく、ぴったりと張り付いて離れなかった。


世界の管理者の顔に張り付いていたものはスライムだった。


ビームⅢを生き延びたスライムは二匹いた。一匹はわざと世界の管理者に殺され、油断したところを残った一匹が襲う。

世界の管理者の不意をつく巧みな作戦だった。


「ガ……」


世界の管理者は地面に倒れる。

スライムは鼻と口を通って器官にまで達そうとしていた。激しい嘔吐感が世界の管理者を支配する。


世界の管理者は顔面を地面に擦り付け、スライムを引き剥がそうとする。

しかし、スライムは渾身の力で世界の管理者の顔に張り付く。


世界の管理者の力が徐々に弱まり、パタリと仰向けに倒れた。

そして、震える手で自分の顔を指さす。


「ブビッ、ビッ…【ビー()】」


光線が世界の管理者の上半身を包む。

世界の管理者の下半身が痙攣した。


「ゼェッ…ゼェッ…ゼェッ…」


スライムは光線に耐えきれず蒸発してしまう。


世界の管理者の美しい顔は涙と鼻水と涎でぐちゃぐちゃだった。

また、ビームをもろに受けたせいで、体力の9割近くが削られていた。


だが、生きていた。


「ゼェッ……ゼェッ……ゼェッ……」


体力は休めば戻る。

死の恐怖は時間が経てば敵への復讐心へと変わる。

戻らないのは左腕とこの屈辱だけ。


世界の管理者は右手一本で立ち上がる。

そして顔を上げた。


「…!」


世界の管理者の目の前に2つの山。

世界の管理者は人生で初めて絶望を知る。


山のように見えるそれは巨大なモンスターだった。


「なんとか間に合ったわね。ダーリンの仲間の仇、討たせて貰うわ」


SS級モンスター【アイスマジックドラゴン】


「………………………………」


SS級モンスター【ファイアーマジックドラゴン】


二体のドラゴンは眼光鋭く世界の管理者を睨みつけていた。


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