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第31話 誓い

太陽が西に傾き始め、辺りを赤く染め上げる。まともな感性の人間なら美しいと賞賛する事だろう。しかし、今の俺には溢れ出る血液を連想させた。


ジョーフンタウン跡地。その中心にある大広場。

そこにダンジョンモンスター達は集まっていた。


ジュリアがギガに抱えられるリンダに手を伸ばす。

傷だらけのリンダではあるがその表情からは疲労や苦痛は見て取れない。安堵、そして若干の悲痛そうな表情を浮かべていた。


「【かんぜんかいふく】」


リンダの青ざめた顔が生気を取り戻す。だが、やはりその顔にいつもの笑顔は見えない。


「恐ロシイ……相手ダ。俺達ガ束ニナッテモ敵ワナイカモシレナイ」


リンダの気持ちを代弁するかのようにギガがポツリと呟いた。


仲間がまた1人やられた。

【ホワイトフェンリル】のシロ。リンダが赤ん坊だった頃、面倒を見ていてくれた優しいモンスターだった。


シロとリンダを襲った世界の管理者。たまたま通りかかったギガとゴッドスライムが助けに入ったから良かったものの、恐らくあのままだったらリンダの命もなかっただろう。


「天下無敵とはこの事ですな。世界の管理者……我々の最後にして最大の壁となる事でしょう」


【暗黒山脈】から戻ってきたシャーロックが言う。


「リンダ……大丈夫?」


ジュリアが眉を下げた。


「……うん、辛いけどさ。ここで立ち止まってちゃシロに怒られちゃうっしょ…」


リンダは立ち上がる。


「大丈夫。シロの仇を取るためにも、あたしはまだ戦う」


リンダは自分に言い聞かせるように言った。無理をしているのは誰の目にも明らかだった。


「ところでマスター。グラオン殿はどちらに?」

「あいつも世界の管理者と一戦交えてな。だが、返り討ちにされちまって……」

「ふむ、なるほど。誇り高きドラゴン族にとっては敗北は死に匹敵するほど辛い事だと聞いたことがあります」

「最後ノ決戦近イ。相棒ノ(チカラ)……必要ダ」


ギガが淡々と言う。


確かに、SS級モンスターであるグラオンの存在は大きい。だが、心に傷を負ったあいつに負担をかけるのはやはり心苦しかった。


「だったら私がダーリンの代わりに戦うわ!」


名乗りを上げたのはアイスマジックドラゴン。暗黒山脈に封印されていた野生のSS級モンスターだ。


「私とダーリンの強さは互角。問題ないでしょう!?」

「た、確かにそうだが……」


俺は周りを見渡す。シャーロックがコクリとうなづいた。


「分かったよ。よろしく頼む」

「こちらこそよ。マスター」


アイスマジックドラゴンは翼を広げて吠えた。


●○


私の名前はデラ・オスマン。第3中隊の副隊長を務めている。


3ヶ月前、私達は【緑の大草原】に突如現れたダンジョンの調査に向かった。だが、そこにいた二体のモンスターに私達は殺された。その後【神】の力により人間離れした力を手に入れ、この地に降り立った。


俺達の仇。それが私達の合言葉。

盲目の私もその言葉に同意した。


この地に降り立つと私達は四方向に分かれて進軍した。なんでもダンジョンが4つに増えていたかららしい。どれが本拠地かはいって叩かねばわからない。


私の中隊が派遣された先は【最果ての迷宮】というダンジョンだった。


何十階層にも渡る迷宮。疲弊しきった時に襲いかかってくるモンスター。さすがは前人未到の巨大ダンジョン。


だが、私たちの手にかかれば半日とかからず攻略できた。最下層のダンジョンコアを破壊し、転移陣でダンジョンの外へと脱出する。


私達は作戦の成功に肩を叩きあった。

その時、上空から女性の声が降ってきた。


「皆様、作戦成功おめでとうございます」


甘ったるい声。世界の管理者だ。

誰もが口をつぐんだ。


「良いお知らせと悪いお知らせがありますわ。どちらからお聞きになりますか?」

「良い方からお願いいたします」


間髪入れず答える声。この軍を指揮するダンアローグ中将のものだ。


「かしこまりましたわ。良いニュース。敵の本丸の場所を突き止めました」


おおっ、と歓声が上がる。いうまでもないがここ【最果ての迷宮】は敵の本拠地ではなかった。


「場所は【ジョーフンタウン跡地】ですわ」


【最果ての迷宮】【暗黒山脈】【毒の湖】【真紅の樹海】。私達が出兵した場所は全てフェイクだったということか。飛んだ骨折り損だ。


「それで悪い知らせとは?」


ダンアローグ中将が問う。


「他の3つのダンジョンへと向かった兵士たちが全滅いたしました」


え?

一瞬空気が凍りついた後、ざわめきが広がる。

4桁のレベルを持つ、兵士たちが全滅。悪い冗談を聞いたような気分になる。


「本来ならば、貴方達も危なかったのですよ?」


世界の管理者が言うにはこのダンジョンは水攻めにされる予定だったらしい。私達が最下層付近に到達した頃に水を入り口から流し込む。


私は思わず身震いした。敵の作戦を未然に防いでくれたと言う世界の管理者に心から感謝する。


そんな敵に勝てるのか……。何人もの兵士がポツリと呟いていた。


「心配はいりません。これからは私も戦闘に参加いたします」


再びざわめきが起こる。心強いだのありがたいだの、神の力があれば絶対に負けないと豪語する者さえいた。


「それから、あなた達のレベルを更に2倍にいたしましょう」


ざわめきがますます大きくなる。勝てる、勝てる、勝てる……誰もが口々に言った。


「私たちのため、愛するもののため、祖国のため、世界のために、ともに悪の野望を打ち砕きましょう!」


兵士たちが拳を突き上げ吠える。

私は生まれて初めて武者震いをした。


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