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第30話 別れ

なだらか丘陵地帯を走り抜ける、巨大な狼。

白い毛並みが輝く太陽を反射して輝く。


それにまたがる1人の女性。ピンク色の髪をなびかせ下半身をうまく使い狼を乗りこなしている。


優雅に気高く走る狼はシロ、と言う名前をもらったS級モンスター【ホワイトフェンリル】。

それに乗るはSS級モンスター【サキュバスクイーン】のリンダ。





この1人と1匹が爆走する原因が『逃走』などとは誰が予想するだろうか。




「くっそ! ど〜してこ〜なるのよ!!」


ピンク色の髪の毛を振り乱しながらリンダは悪態を吐く。


15分前、ダンジョン【最果ての迷宮】に突如飛来した世界の管理者。

世界の管理者はリンダの顔を見るなり究極魔法クラスの攻撃をして来た。


なんとか回避できたものの任務は放棄。勇者達を一掃するため3ヶ月間練られた作戦も水の泡だ。


リンダは再び唇を噛み締めた。


「待ってくださいませー!!」


その時、女の声が聞こえた。リンダはハッとして後ろを振り向く。


「そんなに急いでどこに行こうと言うのですかー!?」


はるか地平線の彼方から迫ってくる黒い点。

その点は徐々に大きくなっていく。


金色の髪。真っ白な服。背中から生えた大きな羽。


世界の管理者だ。


「シロ!! 」


白の足の回転がさらに早くなる。

リンダは空気抵抗に顔を歪ませながら後ろを振り向いた。


「さあ、鬼ごっこはここまでです」


手を伸ばせば届きそうな場所に世界の管理者はいた。

世界の管理者がシロの体を指さす。


「シロ!右!!」

「【ビーム】」


ほぼ脊髄反射でシロは右へ大きく飛ぶ。その刹那、世界の管理者の指から光線が発射された。


「ぐっっ!?」


【ビーム】。そう呼ぶにはあまりにも強烈すぎる代物。

グラオンの鱗でさえも突き破ったそれは地面をえぐり、直線上の草木を焼き尽くした。


あまりの衝撃波にシロとリンダは紙屑のように吹き飛ばされた。

しかし、そこは高レベルモンスター。受け身を取り臨戦態勢をとる。


「ってあら。あの時のサキュバス。随分と大人になりましたわね」


世界の管理者はにこやかに笑いかける。

隣でシロが低く唸った。


「さて、死になさい。【ビーム】」


生死をかけた戦闘が始まった。


●○


「はあ……はあ……はあ……。あなた達中々やりますわね」


世界の管理者がひたいの汗を拭う。


「歴戦の盟友のようなコンビネーション。ダンジョンモンスターだからといって油断しておりましたわ」


上がった呼吸を整えて、世界の管理者はリンダとシロを見据えた。


「で、もう終わり?」

「ぐっ……ぐぐ……」


地面に倒れたリンダが歯ぎしりをした。

リンダはすでに満身創痍だった。

距離を取れば【ビーム】で射抜かれる。

近づけば肉弾戦に持ち込まれとても太刀打ちできない。


ビームがかすった右肩からどくどくと血が流れ出ていた。


「ガルルルルルル……」


低く唸るシロ。


シロも地面に横たわっていた。右脚が刈り取られ立とうにも立てないのだ。


「さーてと、じゃあそろそろとどめいっちゃいましょうかしら?」


そういって微笑む世界の管理者。


「グググ……」


リンダが立ち上がった。


「あらまぁ、安静になさった方がよろしくてよ」


リンダが骨折した足を引きずりながらシロの元へと歩んでいく。

そして、倒れるように白の体にもたれかかった。


「シロ……ごめん……」

「……クーーン」

「……ありがと」


リンダは目を閉じた。


「種族を超えた愛情! わたくし、感動いたしましたわ!」


世界の管理者は2人を指さす。


「てな訳で、死ね」


ビームが発射された。


土埃と爆音をあげビームが2人の姿をかき消す。

黒煙と土煙が辺りに蔓延し視界が閉じられる。


その様子を見ながら世界の管理者は呟いた。


「飛び入り参加とは……興ざめですわ」


土煙と黒煙が風で流される。

そこに立っていたのはシロとリンダを両脇に抱える【オリハルコンゴーレム】のギガだった。

隣には同じくダンジョンモンスターの【ゴッドスライム】もいる


「…………………憤怒」

「」


ギガはそっと2人を地面に下ろすと拳を握った。ゴッドスライムも体をプルリと震わせる。


「おほほほ! ゼロはいくつかけてもゼロ。おバカなゴーレムには分からないかしら?」

「…………」

「まあ、わたくしには時間もありませんし、今日はこんなところで許してあげますわ」


世界の管理者はニヤリと笑うと踵を返した。


「…………」


ギガは少しも油断することなく世界の管理者の背中を睨む。


世界の管理者は翼を広げると数メートル上空へと舞い上がった。


「あ、申し忘れていましだが……その犬はもう長くありませんわ」


世界の管理者は空の彼方へと飛び去っていった。


「シロ! シロ!!」


リンダが白の体にすがりよる。

シロは四肢を大地に投げ出し荒く呼吸をしていた。


「シロ! しっかりして!」


リンダがシロの頭を抱きかかえる。


「シロ!」


シロが立ち上がった。かけた左脚を補うようにうまくバランスを取りつつ、空を見上げる。


「シロ……?」

「ワオーーーーーーーーーン」


どこまでも響く遠吠え。瀕死のシロが出したその音は地平線の彼方へと吸い込まれていった。


シロはリンダを見つめた。深い緑色の瞳がリンダの泣き顔をうつす。


「………………シロ」


リンダは笑った。


「ありがとう、さようなら」


しかしその両目からは後から後から涙が流れ出す。

シロはゆっくりとうなづくと、再び地面に横になり目を閉じた。




そして、二度と目を覚ますことはなかった。


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