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第27話 窒息バタンキュー

俺はジュリアとともに戦況を見守り続ける。


兵士たちはジャイアントアントとスノーゴーレムの攻撃により蹂躙されていた。さすがに死んでいるやつはほとんどいないが、戦列はかなり乱れてきている。


「行け行けー!やっちまえー!」


ジュリアが嬉しそうに拳を振り上げる。


「…………」


対して俺は結構冷静だった。

確かに戦列は乱れている。しかし人間は徐々にそれすら立て直しつつあった。


後方から重装備兵が支援に向かってくる。弓兵や魔道士が武器を構える。


そしてついに人間から一歩の矢が放たれた。


矢はアント達にかすりもせず明後日の方向に飛んで行った。しかしそれを機に矢が何本も飛んでくる。


下手な鉄砲も数打ちゃ当たる。

一本の矢がジャイアントアントの体に当たった時。


「キィーーー」


ジャイアントアント達は情けなさそうな声をあげて山の向こう側へと逃げて行った。


そしてそれと同時に山頂に現れた黒い巨大な影。


S級モンスター【ジェネラルアント】。

いわゆるジャイアントアントの女王アリ的存在である。10メートル近いその全長はもはや昆虫という次元を凌駕していた。


「ギルルルルルルルルルルルルル」


空気を震わすようなジェネラルアントの咆哮。いや、実際に空気を震わせたその咆哮は何メートルにもわたって積もった雪を震わせた。


「ま、まずい」


北国生まれの兵達が顔を青くする。


雪山で最も恐るべきことの1つ。


それは雪崩。


もはやどんな準備をしても用心をしてもそれを避けることはほぼ不可能。

ありとあらゆる生命を根こそぎ奪い去る。


高レベル兵士達は雪崩に飲み込まれていった。


「全滅ってわけにはさすがに行かないみたいだな」


魔法を使って上空に飛び上がる者。

なんとか雪崩から逃げ切る者。


しかし9割近くの人間が飲み込まれていった。

生き残ったメンバーは仲間の救助をしようとするも、もちろんそんなことは許さない。


マジックアイスドラゴン、スノーゴーレム、ジャイアントアント、ジェネラルアントが襲いかかる。


雪崩に巻き込まれた場合、18分以内に救助されれば生存確率は91%を超える。


意外に生存率は高いのだ。


だが、35分を越えれば生存確率は34%まで下る。

目標としては被害者の93%が死に至る180分。それまで時間を稼ぐ。


生存者はおおよそ500人ほど。死に物狂いでモンスター達に攻撃してくる。

かなり減らせてはいるが、やはり数が多い。徐々にモンスター達が押されつつあった。


「や、ヤバイよー! このままじゃヤラレちゃうかも……」

「なあに、大丈夫だ。俺たちには『最後の手段』があるだろう?」


〇●


眼下に広がる景色はモンスターと人間達との死闘。


ヴァンパイアロードのシャーロックは上空から戦いの様子を見つめていた。


「ふむ、思ったよりも敵が残りましたか。しかしやることは変わりませんな」


シャーロックは雪崩の堆積地点に向かって手をかざす。


「【死者蘇生】」


シャーロックは手を下ろす。

地表で叩きを繰り広げる人間はそのことに全く気がついていない。


「ふーむ。やはり埋まってしまっている以上、多少復活に時間がかかりますな」


シャーロックが呟いたその時。


雪の中から一本の腕が伸びてきた。


●〇


「最後の手段ってシャーロックの【死者蘇生】のことだよね」

「ああ、死んだ人間をゾンビとして蘇らせる技だ。レベルは生前の1/10になってしまうが、戦場で肩を並べた仲間が襲いかかってくるなんて悪夢以外の何者でもないだろう」

「それに敵は誰が死んでて誰が生きてるかわかってないしね!」


間も無く雪の中から人間が起き上がってきた。瞳孔は開ききり、心臓は動いていない。だが、この混戦状態で仲間の呼吸に目を向ける兵士などどれほどだろうか。


ゾンビということにすら気づかないまま仲間に切り捨てられる者。

半狂乱になり目につくものを片っ端から切り捨てる者。


結局180分を待つこともなく、兵士たちは全滅した。


〇●


同時刻。


大陸南部に位置する【毒の湖】。普通の生命体ならば5分と持たず肺が腐り落ちる死の湖。


その湖に鎮座していたのは2匹の巨大モンスター。片方はオリハルコンゴーレムのギガ。メタリックボディを輝かせ、正面を見据えている。

その傍にいるのは全長5メートルほどの巨大なスライム。伝説とまで言われたスライム族の最終進化系【ゴッドスライム】だ。言わずもがな、S級モンスターである。

このゴッドスライムはもともとカケルのダンジョンのモンスターであったグリーンスライムが進化したものだ。

なお、この2体は呼吸の必要がないため、この毒の湖でも生存できている。


そして、2体の眼前には大量の死体が折り重なっていた。


「敵排除。任務完了」


ギシリと音を立ててギガが立ち上がる。


「オ前達ハ、待機。防衛」


ギガは後ろを振り返って言った。

ギガとゴッドスライムの背後には紫色の液体でできた巨人が数十体直立していた。

さらに紫色のスライムも大量に。


【ポイズンゴーレム】【ポイズンスライム】どちらもA級モンスターである。


ギガとゴッドスライムの技、【創造】にて生み出されたモンスターだ。


なんとか毒ガスを無効化する装備を入手した南方連合軍だったが、まさか毒の湖の水を元にしたモンスターが出るとは思っていなかったのだろう。気体と液体では毒の濃度の次元が違う。

兵士たちは数分とかからず全滅してしまった。


「帰還ダ」

「」


ギガの言葉にブルリと体を震わせるゴッドスライム。

2体のモンスターが立ち去るとポイズンゴーレムとポイズンスライムは湖の中に消えていき、最後には物言わぬ死体だけが残った。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  (ジェネラルアントは)ジャイアントアントの女王アリ的存在>多分指揮者というニュアンスなんだと思いますが、私の脳内ては瞬時にキリッとした女性が華やかな軍服を着て指揮する妄想が繰り広げられ、…
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