第22話 Re ゼロから始まるダンジョン生活
ようやく3人の死から立ち直った俺は次なる世界の管理者からの刺客に備えてダンジョンメイクを始めることにした。
と、その前に。
「メニュー!」
俺はあるものを注文した。
『魔物の生態(全100巻)3万DP』
『大世界沿岸輿地全図 1万DP』
「ナニコレ?」
ジュリアが不思議そうに首をかしげた。
「いわゆる魔物図鑑と世界地図だ」
「はぁ? そんなん買って何する訳? 」
リンダが不審そうに言う。リンダは喜怒哀楽のはっきりした女性だ。
「俺の計画ではな、ダンジョンは更にいくつか増設しようと思ってるんだ」
「ふむ、なるほど。いくら敵が多くても分散させれば脅威度は下がる。運悪く本拠地が叩かれてもすぐさま別のダンジョンに逃げ出せると。一石二鳥とはこの事ですな」
「その通りだシャーロック。それで新たなダンジョンの設置場所を探そうと思っているんだ。」
【大世界沿岸輿地全図 】
最高級の世界地図。
紙面としての世界地図だけではなく拡大、縮小ができるため地方の詳しい地名まで表示できる。
そういえばこの世界の地図は初めて見るな。
俺は地図を広げた。
地図には大陸がぽっかりと1つだけ浮かんでいた。周辺に細かい島々が見えるがどれも大陸からかなり近い。
「この世界には大陸は1つだけしかないんだな」
「ううん、そう言う訳じゃないよ。多分他の大陸が4.5個あるって言われてる」
「ふーむ、そこの大陸は表示されないのか?」
「されないってより、できないんだと思う。人間は海を渡って大陸を渡ったりしないから。海には海洋性の魔物が大量にいるからね。漁業ですらほとんど行ってないよ」
「なるほどな、海を越えようなんてする奴は文字通り命知らずってわけか」
外の大陸にダンジョンを作っても、人が来なければ時期にDPは底をつく。
幸いにもこの大陸はかなり巨大だから、この大陸内にこっそりダンジョンを作ってもバレることはないだろう。
早速それを使って俺たちは新たなダンジョンの設置場所を探し始めた。
まず俺たちの現在位置について。
「最初のダンジョンはここですな」
シャーロックが指差した場所は大陸の中心から少し左に逸れた場所だ。
拡大してみれば『緑の大草原』と書かれている。
ありがたいことにこの地図には用語の解説機能まであった。
【緑の大草原】
ランドール王国北東部に広がる巨大な草原地帯。
遊牧民族(主にサロン族)が多数暮らしている。
出現モンスターは主にE.F級。
「野生モンスターは雑魚、おまけにランドール王国の王都からも近い。ダンジョンの場所としては最悪なんじゃね?」
「全くだな」
リンダが半笑いでぼやいた。
逆に言えば俺たちがダンジョン建設候補地を選ぶときには人里離れた場所で野生モンスターが強い地帯を選べば良いというわけか。
「で、今俺たちはどこにいるんだ?」
「それはずーっと北に向かって……ここですな」
シャーロックが地図を北にスワイプする。
「おそらくこの山かと」
そこには『リギチ山』と小さな文字で書かれていた。
【リギチ山】
暗黒山脈を形成する小さな山の1つ。408メートル。付近に存在する『ソア火山』の度重なる噴火の影響で山肌は荒れ果てており人間はもちろん野生モンスターも生息しない。
裾野には『クレイジーフォレスト』が広がっているが近年減少傾向にある。
「暗黒山脈?」
俺は続けざまに地図の解説機能を開く。
『暗黒山脈』
大陸北部に広がる巨大な山脈地帯。8000メートル級の山々がそびえ立つ。
200年ほど前には多数のドラゴンが目撃されていたが、乱獲により絶滅したと言われている。
活火山が3箇所存在。
野生モンスターは低い山にはほとんど存在しないが、標高に従って野生モンスターの出現率、レベルは高くなる。
A級モンスターも多数存在。
サンピナ連邦は一般人の3000メートル以上の山への立ち入りを禁止している。
「このダンジョンの反対側にある山脈だよね」
この山の反対側には回ったことがなかったからそんな山脈には気がつかなかったな。
「ダンジョンの1つは暗黒山脈に置いときたいところだが……リギチ山じゃ少し心許ないな」
「確かに、こんな山だったらその辺のおっさんでも軽く踏破できるっつーの」
「と、なると世界一高い標高を持つ『トスレベエ山』に移転しますかな?」
「はあ? だったら巨大な活火山の『レプー山』しかないっしょ!」
「えーそれなら、この断崖絶壁でかなり登りにくそうな『レートロセ山』が良いんじゃない?」
「まあまあ、とりあえずそこは後で決めよう。だいたいで良いから他の候補地も決めるぞ」
●○
「よし、とりあえずこんなもんで十分だろ。詳細な建設地は実際に現地に行って調べたいしな」
「はあ、やっと決まった」
ジュリアがパタリと地面に寝転ぶ。
建設予定地は全部で4ヶ所。
大陸北部に位置する、高い山脈と氷で閉ざされた『暗黒山脈』。
南部にある『毒の湖』。文字通り有害な瘴気と毒液で満たされた死の湖だ。
大陸東部に位置する『真紅の樹海』。凶悪なモンスターが跋扈しており、中にはS級モンスターまでいるという。
最後に大陸西部の『最果ての迷宮』。誰が何のために作ったのかは謎。人類の歴史より古くから存在していたという謎の迷宮だ。
俺たちが初めのダンジョンで使った可動式迷宮の技術が70階層に渡って作られているらしい。
「さすがに今すぐこんな危険地帯には行けないな。ジュリアの『ちょうちょうちょうしんか』で心強い仲間を増やしてから視察に行きたい」
周りを見渡すと未進化のモンスターたちが嬉しそうに飛び跳ねた。可愛い奴らだ。
「で、そのためにもモンスターの進化後の特性を理解しておく必要がある」
「そのために魔物図鑑を買ったと。準備万端とはこのことですな」
俺は早速索引からページを引いた。試しに引いてみたのは『グリーンスライム』の項目。
『グリーンスライム』
魔動物界、無脊椎動物門、液状生物網、スライム目、スライム科、グリーンスライム属。
出現地帯:草原地帯
レベル:1〜3
ランク:F級
技:体当たり
ドロップアイテム:緑のプニプニ
体から分泌する液体は毒ではないものの人によっては触れるとかゆみを生じる場合がある。
亜種
『ノーマルスライム』
『レッドスライム』
『ブルースライム』
『サンドスライム』
『ポイズンスライム』
上位種
『ハイグリーンスライム』
進化条件:レベルが4を越える。
『マジックスライム』
進化条件:魔力が100を超えた状態でレベルが4を越える。
『スライムつむり』
進化条件:体のサイズにあった貝殻を背負った状態でレベルが4を越える。
「めっちゃ細いな」
「まあ、人類の叡智の結晶だからね」
どのモンスターに進化させれば最も強くなれるのか。また、どんな特徴を持つモンスターがダンジョン建設候補地に適応できるのか。
俺たちの話し合いは一週間に渡って行われた。
「リンダ殿! 暗黒山脈の山々には実際にモデルとなった山があるらしいですぞ!」
「へー すごいね(棒)」
【トスレベエ山】
世界最高の高さを誇る山。山頂付近には凶悪なモンスターが多数存在。
モデル『エベレスト』
世界最高の高さを誇る山。山頂付近には登山者の遺体が多数存在。
【レプー山】
暗黒山脈にある活火山のうち最大のもの。現在も活発に活動しており、炎系のモンスターが存在。
モデル『プレー山』
西インド諸島に存在する活火山。1902年の大噴火時には約3万人が死亡。20世紀の火山災害で最悪の被害を出したことで知られる。
【レートロセ山】
ほぼ垂直の岩壁で作られた険しい山。世界一登頂が難しい。
モデル『セロ・トーレ』
パタゴニアにある山。悪天候と険しい岩壁で有名。フリークライミングでの登頂が最も困難な山の1つ。
【ソア火山】
リギチ山の付近にある活火山。現在も数年に一度噴火している。
モデル『阿蘇山』
熊本県にある活火山。現在も活動を続ける一方で熊本県を代表する名所として県民に広く親しまれている。
【リギチ山】
カケル達が第二のダンジョンを構えた場所。山肌は荒れており、モンスターは生息しない。
モデル『契山』
佐賀県基山町にある山。標高392m。決して荒廃しておらず、春には5万本のつつじが、秋には500本の紅葉が色づく。




