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第20話 ラノベの主人公

俺はダンジョン近くの大きな岩の上に腰掛けていた。

このダンジョンの山は案外低いらしく、そこまで遠くまで見渡せない。

眼下に広がるのは石がごろつく山肌と、裾野に広がる雑木林だけだ。


俺は深くため息をつく。


その時、背後から声がかかった。


「あらら、随分と元気がないじゃないかい」

「心持ち痩せたかモー?」

「カケル様、いつまでしょぼくれているんですか?」


「……!?」


俺は慌てて後ろを振り向く。5メートルほど離れた場所に三つの人影があった。

太陽光を後ろに背負っており、その表情や顔がよく見えない。


だが、大きな斧を背負った3メートルを超える巨体。

腕を組みつつ髪の毛を蛇のようにうねらせる人影。

そんな2人の真ん中に佇む耳の尖った金髪の女。


「リリー……ウルス、ステンノー……」

「カケル様、落ち込んでる暇はないはずです」

「いっちゃ悪いけどねぇ、アンタに立ち止まってもらっちゃあ、こちらの頑張りが無駄になっちまうんだよ」

「世界の管理者の狙いはジュリアだモー。世界の管理者はまだ干渉を続けるはずだモー」

「では、カケル様。私たちも陰ながら応援しています。頑張って」


そういうと3人は猛スピードで山肌を登っていった。


「ま、待て! 待ってくれ!」


俺は慌てて立ち上がり3人を追いかける。

全力で走るが3人との差はぐんぐんと離れていく。

俺は何度も転びそうになりながらも必死で3人をおった。


3人はダンジョンの中に入っていった。

30秒ほど遅れて俺もダンジョンに入る。


「リリー!」


そこには3人の姿はなかった。

いたのはジュリアと見知らぬ2人の男女。


「カケル……」

「ジュリア! 今死んだ3人がダンジョンに入って行ったんだ!」


俺はジュリアに問いかける。


「ごめんね、カケル」


ジュリアの身長が伸びていく。紫色の髪はブロンドの髪になり、みるみる顔立ちが変わって行った。


「……あ?」

「これはジュリアの技の1つ【ぎたい】。任意の生物に変身をできるの」

「…………」


視界の隅で2人の男女がステンノーとウルスに姿を変えた。

俺はジュリアの肩にかけた両腕をだらりとほどいた。


「そうか……そうだよな……」

「でも!」


リリーは、いやジュリアは俺の手を掴んだ。


「きっとあの3人も同じことを言うと思う。3人のためにもジュリア達と一緒に頑張ろうよ!」

「…………」

「確かにあの3人はもう戻ってこないけど、私たちの中で生きている!私たちが生きている限り生き続ける!」

「…………」

「カケルは1人じゃない! そうでしょ! 私達がいる!」

「………そうか……そうだよな……思い出した……思い出したぜ」


そう、ライトノベルで仲間の死は主人公の成長フラグ。

そこで立ち止まるラノベの主人公なんで存在しない。


「ありがとう、ジュリア。危うく闇落ちするところだった」

「カケル……」

「俺たちの戦いはこれからだ!」

































「終わってんじゃね〜〜よ!!!」


ステンノーに化けている女が叫んだ。


「いや、ごめんごめん。そろそろ打ち切りかなって」

「何よ打ち切りって!漫画雑誌か!」

「ふっ、まあとにかく、マスターが元気になってよかったですな」


白髪のイケオジがニヤリと笑った。


「カケル、紹介するね。こっちは元々【バッドバット】だった【ヴァンパイアロード】」

「改めましてよろしくお願いいたします」


恭しく頭を下げるおっさん。


「こっちは【サキュバスクイーン】」

「ど〜も〜。サキュバスクイーンです、よろしくね」


にこやかに笑う美女。絵画の中から飛び出してきたかのような美しさだ。


「どっちもSS級モンスターだよ」

「ウルスやステンノーはS級だったよな?」

「うん、モンスターの種類によって進化の限界が違うからね」

「そうなのか……知らなかったな。とにかくよろしくな、ヴァンパイアロードとサキュバスクイーン」


俺がそう言うとサキュバスクイーンがこちらに近寄ってきた。


「ねぇ、マスター。私たちにも名前つけてくれないの?」


そう言って俺の腕にすがりよるサキュバスクイーン。豊満な胸が俺の腕に押し付けられる。


「え、ああ……え?」


思わずキョドッてしまう俺。


「ちょ、ちょっとカケルから離れてよ!」


サキュバスのお尻から生えている尻尾を引っ張るジュリア。


「ちょ、ちょっと痛いって!」


サキュバスの体が俺から離れた。本音を言うと寂しい。

だが、これって『もしかして【ハーレム】』なのかぁ!?

ぐふふふ、ここはやっぱり定石通り鈍感な主人公を演じて……。


「今カケルの生命エネルギー吸ってたでしょ!」

「な、な、何のこと?」

「とぼけたってダメ! いくらダンジョンマスター補正があるからって元は人間なんだから! そんなに寿命削ったら死んじゃうかもしれないじゃん!」

「わかったわかった。もうしないってー。全く、ちょっと味見しただけなのに……」


ん? 流れがおかしいな。


「どういうこと?」

「あ、あははは」

「え、えへへへ」


不自然に笑い出す女2人。

俺は無言でヴァンパイアに目を向けるがヴァンパイアは引くほど素早く目をそらした。


●○


なんだかんだありつつも俺は2人の名前を決めた。


「じゃあ、まずヴァンパイアの方から。名前は【シャーロック】で頼む」

「シャーロック。かしこまりました」


次にサキュバスの方を向く。


「サキュバスは【リンダ】にしたいと思う」

「リンダね。い〜じゃん。気に入ったよ」


俺は改めて周りを見渡す。

人型の3人の他にもモンスターたちが集まってきていた。


「みんな、聞いてくれ」


全員の目線が集まる。


「みんなと出会って一週間が経った。短い時間だが、だが俺たちにとっては人生の全てだ」


話を続ける。


「俺はもう仲間を失いたくない。この中の誰1人として死なせたくはない。だから俺は全力でこのダンジョンを作り上げる」


なるべく夢話に聞こえないように俺は淡々と話す。


「このダンジョンの場所が嗅ぎ付かれるまであと3ヶ月。その間、みんなの力を貸してほしい」


俺は頭を下げた。


「お願いします」


しばらくの沈黙の後、ジュリアが言葉をかけた。


「元々、ジュリア達はダンジョンモンスターとして召喚されたから。カケルの頼みを断れる権限なんてないよ」


俺は少し頭を上げてジュリアを見つめる。


「でも、ジュリアは1人の魔物としてカケルのために命をかけるつもりでいる。他のみんなもそう」


周りを見渡すと全員が頭を上下にうごしていた。

クレイジーフラワーまでもが器用に花弁を動かして同意の意を示す。


「みんな、ありがとう。必ず3人の仇を討つぞ!」


胸に込み上げるものを発散させるかのように俺は吠えた。



「えーっと、シャーロックだっけ? 名前」

「左様でございます。リンダ様」

「リンダ様って……そんな改まらなくて良いよ。リンリンとかで良いから」

「そんなパンダみたいな呼び方は少し抵抗がございます」

「そう? まあ、シャンシャンは結構硬いところあるからねー」

「こっちもパンダみたいになってますぞ、リンリン」

「呼ぶんかい!」

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