第15話 最終防衛ライン
「変な語尾のやつばっかだな」
「ですね」
だあ3階層に乗り込んできた10人は早速ウルスとステンノーと戦闘を始めた。
10人は300メートルほど離れた場所にいることステンノーに警戒してるようだ。
斥候部隊の副隊長が早速石化した。
『8900 DPを獲得しました』
すると、敵の1人が石化解除を行なった。
へぇ、人間にも石化解除を使えるやつがいるのか。
『8900 DPを失いました』
「ありゃ?」
「石化は意識も心臓も止まってしまいますからね。ダンジョンコアは死亡と認識してしまうんですよ」
「へぇ」
改めて先頭状態を確認する。
さすがは人類最強クラス。簡単には死んでくれない。
だが、スピードもパワーもこちらの方が上。間も無く決着がつくだろう。
『7800 DPを獲得しました』
『7200 DPを獲得しました』
『8100 DPを獲得しました』
続々と敵戦力が減らされて行く。
「さすがS級モンスターだね!おまけにネームドだから負けるわけないよ!」
俺の胡座の上にジュリアが座った。
ジュリアは上半身を回し、上目遣いで俺に話しかける。
「ダンジョンを突破されるかも、なんて杞憂だったかもね!」
「そうだな。あの2人が負けることなんてあり得んだろう」
俺は楽勝ムードで笑った。
「カケル様!」
リリーが声を上げる。
「見てください!敵が1人階層から脱出しました!」
「なにぃっ!?」
俺は慌てて確認する。
確かに1人の兵士がステンノーの隙を見て2階層へと逃げ出した。
人間が階層内にいる時、モンスターやトラップの移動は不可能。
できれば全員倒しておきたい。こっちの手の内が人間に漏れるのはまずい。
「仲間を呼ばれるかもしれません」
「だ、大丈夫だよ!2人はまだまだ戦えるんだし! それにSSS級モンスターのジュリアもいるんだから!」
「ああ……」
確かに、あの2人よりずっと高いランクとレベルを持つジュリアがいれば問題ないのか?
「お言葉ですが、ジュリアさん。あなたは本当に戦えるんですか?」
「え?」
「疑問に思っていました。あなたは最初から闘おうとしてなかった。それに、『ちょうちょうちょうしんか』も一週間に2回とかなり使用制限があるようですが」
「…………………」
「本当は戦わないじゃなくて、戦えないんじゃないですか?」
「…………戦える……」
「はい?」
「戦えるもん! ジュリアは魔王だよ!? 戦えないわけないじゃん!!」
あまりに必死すぎる弁解だ。子供が逆ギレしているような。
「別に責めているわけじゃありません。ただ——」
「戦える! 戦える! 戦える!」
「ジュリア、すまん」
「え?」
「【鑑定】」
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名前 ジュリア
レベル7896
ランクSSS級
種族 魔王
体力 45/45
魔力2500/2500
知力 130
筋力32
速力41
運 121
きゅうきょくまほう 消費魔力12000
ぜったいいじょう 消費魔力300
かんぜんかいふく 消費魔力7000
ちょうちょうちょうしんか 消費魔力1000
—————————————
「これは……」
「見ないで!見ないでよぉ!!」
ジュリアは紫色の髪を振り乱して抵抗した。
だが、俺の目にははっきり映った。
レベル1の俺より低いステータス。
確かに魔力は高いが、使える4つの技のうち2つは魔力の保有量を上回っている。
「やはりそうでしたか……」
リリーが残念そうに言う。
「サキュバスと同じです。才能は確実にあるのですがそれについて行くだけの体や知識が身についていない」
「うわああああん!」
ついにジュリアは泣き出してしまった。
「おい、リリー。とりあえず今はそれくらいに……」
「ダメです!今じゃなきゃ!」
「うっぐっ……うわあああん」
「ジュリアさん、あなたは弱い!今のあなたはこのダンジョンの最後の守りにふさわしくない!」
「ううっ……」
「だから、必ず強くなってください!!」
「うっうえ?」
「いつか、カケル様が追い詰められた時にあなたが最後の防衛ラインとして、立ちふさがるのです!」
リリーは俺に向き直った。
「2つ目のダンジョンコアのこと、覚えていますか?」
「え、ああ」
もしもここのダンジョンコアが破壊された時のために、もう1つのダンジョンコアを購入し、新たなダンジョンを作ると言う話だ。
「私とウルスさんとステンノーさんはここに残ります。あなたはここから脱出する準備をしてください」
「脱出って……どうやって!?」
「私の部屋のベッドの下に隠し通路があります。気がつかれずにそこか外に脱出できるはずです」
リリーは俺に話す隙を与えず続ける。
「ゴブリンさんの時計がありますね。今日の午後11時までに新たなダンジョン建設予定地に移動してください。11時からダンジョンコアの情報移動を開始します。場所はなるべく目立たないところ! いいですか?」
「おい、待てよ」
「間も無く大量の敵兵が流れ込んでくるでしょう。あの2人なら、簡単に100万DPを貯めるはずです。大和さんはすぐに3つのものを買ってください。『ダンジョンコア 100万DP』『ぶっとびの羽 5000DP』『ダンジョンシークレット 10万DP』です」
「待てよ!」
俺はリリーの腕を掴んだ。
「リリーとウルスとステンノーが残るってどう言うことだ」
「…………………」
「まさかお前ら死ぬ気じゃ……」
「どりゃっ!」
「へぶっ!」
俺は背負い投げされた。
「馬鹿かてめーは!話聞いとったんかボケコラカスコラ!」
「えええ」
「ダンジョンコアは2つ同時操作しねーといけねえって話だったろうが!誰も好きでこんなところ残らんわ!」
「ごめんごめんごめん」
「あの2人残すのもDP稼ぎと時間稼ぎと私の護衛に決まってんだろうが!」
「ですね、すみません」
「カッコつけてんじゃねーこの短命種族が!100年生きてからまともな口きけや!」
「はい、すみませんでした」
俺はペコペコと頭を下げる。そういやこいつのキャラ忘れてたわ。
「ジュリアさん、さっきは強く言っちゃってごめんなさい。カケル様をよろしくお願いします」
「ごめんなさい……隠してて……みんなに失望されるかもしれないと思って……」
ジュリアは涙を流しながら言った。
「何言ってるんですか。私たちがその程度であなたを見捨てると思いますか?」
リリーは笑った。
「うん、ごめんなさい……ありがとう」
リリーはジュリアの頭を撫でると俺に向き直った。
「第2階層に多数の敵反応」
「早いな」
『侵入ポイント 30万DPを獲得しました』
「なあ、ステンノー」
「なんだいウルス」
「最近本編がシリアスだモーな」
「メタ発言は賛否両論あるからなるべくやめたほうが良いよ」
「それこそメタ発言な気もするモー」