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第13話 人間の力②

第二階層に到達した兵士たちは細い通路を通ろうとすることはなかった。

兵士の1人がロープを取り出し、小柄な1人にきつく結ぶ。

残った9人がロープの端を持つと小柄な兵士は穴の中に降りていった。


「何をしているんでしょうか……」

「……………」


嫌な予感がする。


十数分後、縄が何度か引っ張られ、ロープが引き上げれる。

そして10人の兵士たちは1階層へと戻り、ダンジョンから出ていった。


「諦めたのかなー?」

「だったらいいけどね」

「さっきみたいに何か対策をしてくるのかもしれないモー」


皆不安そうな顔をしている。


「カケル様。お伝えしたいことがあります」

「リリー、どうした?」


リリーが真剣な表情で言った。


「もしもダンジョンが踏破されてしまったら、カケル様はDPをつかって『ダンジョンコア』を購入してください」

「ダンジョンコアって買えるのか?」

「はい。そしてここから脱出し、2つ目のダンジョンを作ってください」

「なんでだ?」

「そのダンジョンでダンジョンマスターとして登録することで、このダンジョンのダンジョンコアが破壊されてもカケル様は死ぬことがありません」

「そんな裏技があったのか」

「こちらのダンジョンコアが破壊される前に新たなダンジョンコアにDPやモンスターを移動することもできますよ」


俺は少し気持ちが楽になる。


「ただし欠点が2つほどあります。1つはコピーに時間がかかりすぎることです。2つのダンジョンコアを同時操作して最短でも1時間かかります」

「長いな。しかも同時操作って」

「はい。その時には新たなダンジョンコアは新しいダンジョン地点で操作しなければなりません」

「じゃあ、誰かがこっちに残っとかなきゃならないってことか?」

「そうですね。その時には私がこちらに残ります。なあに、ちゃんと脱出するので大丈夫ですよ」

「……………」


俺は一抹の不安を覚える。


「2つ目の欠点はダンジョンコアに必要なDPです。およそ100万DP必要です」

「ひゃ、100万!?」


現在のDPは僅か5万強しかない。


「はい。だからあくまで最後の手段。もしもの時はよろしくお願いします」

「うう……」


100万DPもあったらさらに凶悪な階層いくつも作れる気がするが……。


「モー。杞憂だモー」

「そうだよ。そんなことアタシらがさせないさね」


口を挟んだのはウルスとステンノー。


「第3階層では俺たちが戦うモー。いくら人間とはいえ遅れを取るつもりはないモー」

「そうだね。ゼロはいくつあってもゼロってことをおしえてやるよ」


2人はそう言って笑った。


○●


『侵入ポイント 1万9890Pを入手しました』


1時間後、兵士が第2階層に現れた。

さっきと人数が違う。


先行部隊の兵士が先ほどは10人だったのに今度は25人になっている。

その中には第1階層で雨を降らした5人の魔術師も含まれていた。


「何をする気でしょうか」


魔術師達は体にロープを巻きつけると穴の中に先ほどの小柄な兵士同様降りていった。

魔術師は穴の中に並んだ鉄の針の10メートルほど上空で止まる。

そして叫んだ。


「ファイアーボール!」


真っ赤に燃える火の玉が針の床に激突する。

燃え上がる炎と蒸気。

しばらくすると炎が自然に鎮火する。


「なっ!」


俺は目を見開いた。


「針が……溶けている!?」


針山のように敷き詰められた針は見る影もなく、銀色の床が広がっていた。

どうやら鉄が溶け液状になったところで再び固まりかけているらしい。


「ウォターボール!」


今度は巨大な水の塊が地表に激突する。

信じられないほどの蒸気がダンジョンを覆った。


蒸気が晴れると鉄はすっかり固まっていた。

もちろん無力化した針は全体のほんの一部だが、繰り返せば第二階層が踏破されることになる。


「高位の魔術師の『ファイアーボール』は最高温度が5000度を超えると言われています」

「鉄の融点は3000度だモー」

「まずい……まずいぞ……」


魔術師は鉄の床の上に降り立つと第二階層の出口のある方向へと同様に『ファイアーボール』を放つ。

さらに4人の魔術師も合流して破竹の勢いで第2階層を突破していった。


あっという間に1キロの針山は鉄の床に変化する。

兵士の1人がスルスルと崖を登り、上からロープを垂らす。

25人の侵入者はは1時間強で第2階層を突破した。


「まさか、そんな方法で2階層を攻略するなんて……」

「くそっ」

「いよいよ俺たちの出番だモー」

「相手に不足はないさね。最初から全力でいかせてもらうよ」


ステンノーとウルスが立ち上がる。


「待ってください」


リリーが2人を止めた。


「なんだモー?」

「何だか様子がおかしいですよ」


俺は改めて侵入者の様子を確認する。


第2階層出口前の少しひらけたスペースで5人の魔術師が円になってブツブツとしゃべっている。


「なにやってるんだ?」

「自己紹介かモー?」

「どんだけ呑気なのよ」


ジュリアが耳をすます。


「これは……転送陣の召喚魔法?」


5人の魔術師の間に白い魔法陣が形成された。


「転送陣!?」


リリーが驚きの声を上げる。


「なんだよ、転送陣って」

「名前の通り、遠くの場所から人や物を転送するときに使う魔法陣のことだよ……」

「国と国を結ぶ場合や遠い島とつなぐって話は聞いたことあるけどダンジョン内に設置された話は聞いたことがないね」

「ということは……」

「間も無く大量の兵士が第3階層に攻め込んでくるってことだね」


俺たちは顔を青くした。


「なあ、ステンノー」

「なんだい、ウルス」

「俺は結局ウシなのかモー?ヒトなのかモー?」

「知らないよ……強いていうならウシなんじゃないかい? ほら、アンタは『トツゲキギュウ』から進化したから」

「モー、その理論だったらステンノーはヘビということになるモー」

「確かに……私のルックスは限りなくヒトに近いからね」

「俺もウシにしてはヒト語を喋れるし二足歩行もできるモー。俺がウシと名乗ったらウシに失礼な気がするモー」

「確かにそうだねぇ。リリー。アンタはどう思う?」

「え、私ですか!? これってお二人のコーナーじゃないんですか?」

「訳わかんないこというなモー」

「えっと、そうですね。私は普通に2人のことは『バケモノ』って認識してますけど……」

「…………」

「…………」

「(うわっ、めっちゃ悲しそうな顔してる)」

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― 新着の感想 ―
[良い点]  何のかんのいって仲よさげだったステンノーとウルスの間空気を破壊してしまうリリー(笑) 口でも喧嘩腰のエルフ(笑)
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