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第9話 ダンジョンメイク!!!

「ダンジョンメイクだあああああああああ!」

「うるせえ!」

「ぎゃふっ!」


絶叫した俺をリリーが背負い落としで地面に叩きつける。


「朝っぱらから騒がしいモー」

「同感だね」


ウルスがキャベツを、ステンノーが食パンをかじりながら言った。

ダンジョンマスター2日目。

俺は愉快な仲間に囲まれて朝食をとっていた。


「ううう……。なあ、ジュリア。その辺に落ちてないか?」

「何が?」

「俺の背骨」

「……ああ、さっきぐしゃっと踏んじゃったのはそれだったんだね」


ジュリアが牛乳を飲み干す。


「それで、いきなり大声をあげてどうしたんですか?」

「今日はな、ダンジョンを作っていこうと思ってるんだ」

「そういえばまだ居住区しか作っていませんもんね」

「ああ、今度敵が攻めてきたときにもっとスムーズに敵を倒したいしな」

「それもそうですね」

「というわけで、みんな力を貸してくれ!レッツ ダンジョンメイクだあああああああ!!」

「黙れ」

「ちょ、痛い痛い痛い痛い!!」


リリーのサソリ固めが決まった。


「たしかに、このままじゃいつかDPがなくなっちゃうしね」

「飢え死になんてしたくないからモーな」

「人間がダンジョン内で死んだとき、そのレベルの100倍のポイントを得られるんだったね。全く、うまくできてるもんだよ」

「痛い!まじで!痛い!痛いって!」




それから俺たちはダンジョン構想を練り始めた。

会話や知能の都合から参加者は5人だけだ。


「やはり罠を仕掛けまくりましょう。モンスターは倒される可能性がありますが、罠は何度でも繰り返し使えます」


ダンジョンサポーターのリリー。


「いやいや、強靭なモンスターこそがダンジョンの要だモー。小細工はいらない、むしろ邪魔だモー」


ミノタウルスのウルス。


「発想力に乏しいね、アンタ達は。どちらも兼ね備えたダンジョンを作るのさ。モンスターと戦っていたらいきなり壁から矢。こんなに恐ろしいことはないさね」


ゴルゴーンのステンノー。


「逆転の発想だよ!DPは人間がダンジョンに訪れたとき、そのレベルの10倍のダンジョンポイントが得られる。ダンジョンを娯楽施設に変えて、とにかく人を呼び込むんだよ!」


そして魔王ジュリア。

俺は個性の強い4人のメンバーをまとめつつ議論を進める。


2時間ほど時間が経った頃。


「ゴブゴブーー」


会議を開いていたリビングにゴブリン♂とゴブリン♀が現れた。


「おお、どうした?」

「ゴブゴブ」

「うん」

「ゴブブブゴゴブ」

「ああね」

「ゴブブブゴ」

「なるほど」

「ゴブゴゴブブ?」

「オッケー、全然わからん」


俺はジュリアに通訳を頼む。


「なんかミニアリ達にご飯をあげたいから砂糖をくれって言ってるよ」

「へー、子供みたいだな」

「まあ、このゴブリン達はまだ子供だからね」

「あ、そうなの?」

「うん、人間で言ったら5、6歳かな」


そうか、案外平均年齢低いのかもな、このダンジョン。

俺は角砂糖(1DP)を取り出す。


「ゴブゴブブ!」


ゴブリン達は俺に頭を下げると手を繋いでリビングを出て行った。


「子供といえばサキュバスも早くなんとかしないといけないよな」


まだ歩くこともできない赤ちゃんモンスターを思い出す。


「ジュリアの『ちょうちょうちょうしんか』を使えばすぐに大人になると思うよ」

「あ、そうなの? 便利な技だな」

「ただあの技は一週間に2体にしか使えないから多用はできないんだよね」

「そんな欠点があるのか」

「十分ですよ。S級近いモンスターが月に8体もできればダンジョンなんてアリ1匹通しません」


たしかにウルスとステンノーだけで昨日の兵士達を10秒ほどで倒してしまった。

何万という兵でも来ない限りやられないだろう。


「次はどのモンスターを進化させるんだモー?」

「アタシ的にはサキュバスとスライムだね。行っちゃ悪いけど弱い奴から強化するに限るよ」

「私はバッドバットとクレイジーフラワーが良いと思います。あの2体は未進化モンスターの中でも強い方ですから期待できます」

「ジュリアはねー、ミニアリとロックゴーレムを進化させたい! とっても真面目だもん!」


うーん、次の進化させるモンスターか。おいおい考えていかないとな。


「それは、また今度話し合おう!今はダンジョンの制作だ!」


話し合いはその後も行われた。

転寝(うたたね)をするジュリア。

トイレに行くふりして自室で筋トレをするウルス。

呼びに行った俺も運動不足解消のため一緒に筋トレをする。

ブチギレるステンノーとリリー。

ステンノーに石化されるウルス。(なお、この後『石化解除』をしてもらい肉体的には無事)

リリーに投網式原爆固めフィッシャーマンズ・スープレックスをくらう俺。(なお、2時間気絶した)



○●


「ゴブゴブ」

「ゴブブブゴゴブ」


ダンジョンのモンスターであるゴブリン♀とゴブリン♂は仲良く廊下を歩いていた。


「ゴブゴゴブブ」

「ゴブ」


少し2人の会話を聞いてみよう。


『お砂糖もらえてよかったね!』

『うん。そうだね』


暇を持て余した2人はミニアリの観察をしていた。

ミニアリ達は最初こそは部屋中を歩き回ったり、巣穴を作るため地面を掘ったりと観察しがいがあったが数時間もすると巣穴に潜ったきり出て来なくなった。


クレイジーフラワーやバッドバットは見た目が恐ろしい。

サキュバスに近づけばホワイトウルフに吠えられる

スライムやロックゴーレムはほとんど動かない。

アカトカゲに近づくと尻尾を切り離して逃げ出した。尻尾だけがビチビチと動く様はかなり気味が悪いものだ。


2人は原点に戻り、彼らの好物を携えてミニアリの観察をするのだった。


『これじゃ大きすぎるから細かく砕いて……』


ミニアリの個室に入った2人は巣穴の近くに砂糖を置く。


『食べるかなー』

『もう少し近い方がいいんじゃない?』

『あ、アリさん出てきた!』


1センチにも満たないアリが巣穴から出てきた。

アリは触覚で砂糖を認識すると巣穴に引き返す。


『あれ、取らないのかな?』


ゴブリン♀が不安そうな声を上げる。

するとすぐにぞろぞろとアリ達が巣穴から出てきた。


『うわぁ! 仲間を呼んだんだ!』

『1.2.3.4.5.6.7.8.9……あれ、1匹足りないな』

『ほんとだ。巣の中で休んでるのかも!』

『そうかなぁ、サボってるんじゃない?』

『そんなことないよ!アリさん達は働き者だからサボったりしない!』


そうこうしてる間に砂糖は全て巣穴の中に運び込まれた。


『あ、もうなくなっちゃった』

『まだ砂糖は余ってるよ』

『今度は巣穴から遠くにおいてみようか』


いそいそと2人は角砂糖を少し削り細かく砕く。


「」

「……」


その時背後に視線を感じた。

2人は振り返る。


「」

「……」


そこにあったのは自分の身長の2倍近い巨大な真っ赤な花。

花弁が曲がりこちらを向く。

花弁の中には何本もの尖った歯が見えた。


『『ギィヤああああああ!!!』』


ゴブリンコンビは大慌てで部屋を逃げて行った。


「」

「……」

「。」


部屋に取り残されたミニアリ。いきなり部屋に現れたクレイジーフラワー。そしてクレイジーフラワーの陰に隠れていたスライム。


「」

「……」

「。」


こいつらの声も聞いてみよう。


『驚かしちゃみたいだねー。フラワーの顔が怖すぎるんだよー』


体をぷるぷると震わせるスライム。


『どうしてくれるのだね!せっかく砂糖にありつけるチャンスだったのに!』


クレイジーフラワーに向かって文句を言うミニアリ。


『あー、俺は何もしてねえだろ。あっちが勝手に驚いただけだ』


クレイジーフラワーは肩を……ではなく葉っぱをすくめる。


『何を言ってるんだ!どっからどう見ても君のせいだろう!』

『なにを……だいたいてめえらだけ食い物にありつけるなんて不公平だろーが!』

『そだねー。スライムもおかし食べたいよー』

『僕たちは大家族だから余分にあった方が都合が良いのだ!』

『はあ? そんな小さな体じゃ余分に持ってたところで意味ねーだろ』

『ところでクレイジーフラワーは水さえあればいいから便利だねー』

『フッ。全く、安上がりな男だよ』

『ああん? なんか言ったかコラ……』


こうして三つ巴トリオは互いに罵り合いつつも仲を深めていくのだった。


●○


3日後。

話し合いは二転三転してようやくまとまった。


「よし!とりあえず完成だ!!」


ついにダンジョンは完成した。

『ところでクレイジーフラワー君。君はどうやってこの部屋まで来たのかね』

『確かにそれは気になるよー。普通植木鉢に入った植物って動けないもんねー』

『あーそれはだな……こうするんだよ』


○●


●○


『『ええええええええええええええええ!』』

『何だその技は……何と言う名前だ!?』

『あ?名前なんてねーよ。植物だったら誰でもできるぜ』

『でもさースライムは見たことないよー?』

『けっ、お前らが見ようとしてねーだけだ。植物は動かない……って決めつけてるのは動物(おまえら)の悪い癖だぜ」

『………………』

『………………』

『なんて、嘘だけどな。これはクレイジー植物しかできねーよ』

『何だねその無意味な嘘は!!』

『しねー』

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