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未来を変える絶望

前半部分はやや理論めいた事が多くなっています。読みにくいかもしれません。すいません。後半は恋愛を少し入れていますので読みやすいと思います。

過去の自分と未来の自分、全ては現在に影響を及ぼし流転する。


宇宙には宇宙の反発性修正力が存在する。誤差や矛盾を修正する力だ。だが、これは仮説でしかない。矛盾の修正を繰り返した世界はやがて滅亡すると謳われた。昔からよくあるタイムパラドックスやバタフライ効果も同じ扱いと判断できる。


 それだけ時間の改変はこの世界という括りにおいて予想を遥かに超える壮絶な問題を引き起こす可能性を秘めているのだ。


 ここにいる俺というひとつの可能性として並行世界上に存在する喜多見光真という人間もまた同じ意味を有する。


 俺という存在も改変において生まれた改変を引き起こすもの。最悪な形で過去を未来を今を、世界を壊しかねない最低な可能性だ。

 

 2018年。八月七日。改変の起きる二年前だ。俺、喜多見光真は2045年の未来からタイムマシンを使用し未改変世界に極力近い世界に辿り着くことに成功した。だが、この世界の結末もまた俺のいた世界と同じように運命は収束する。同じ結末とは言わないがループは避けられない。この時間軸には並行世界を含めれば数え切れない俺という存在がいるはずだ。そう未来を変えることに失敗した俺は必ずこの時間に辿り着く。そして過去の俺を利用するのだ。


 もはや俺だけのためではない。複数の並行世界の俺にも影響を及ぼす。正しい未改変世界。朱葉がだれも殺さない世界。正しい死のみが存在する未知の世界。決して救いとは言えない。だが、可能性はある。少なくともこのループしてきた、俺が見てきた世界よりかはマシな世界があるはずだ。


 そんな小数点以下の本当に本当に淡い僅かな光に賭けるしかないのだ。


 笑える話である。改変を止めるためには改変が必要なのだ。

 正直な話この真実を知った時俺は笑った。いや、笑うしかなかった。もしかしたらこの世界は自分と同じになるなんて可能性はほぼ無いのに自分の世界のために他世界にまで改変を齎すなんて。一番最初の俺はとんだ馬鹿だと思った。そしてその馬鹿だと思った俺もほかの世界の俺に希望を託すしか出来ないことにも苛立ちというよりかはあきれが襲ってくるほどだ。


 というかこれは希望ではない。関係の無い世界に破滅を齎しにやってくる。最悪の存在。


 そうだ、この俺、喜多見光真こそが黒幕なのだ。


 この滑稽とも言える俺の末路。この最悪なループを止めてくれ。

 

 「この社会を作り変えたいと思わないか?吉崎牙醒羅」


 目の前の青年は震えている。

 「いいだろう?今更俺を利用するくらい」


 「ちがう!俺じゃないだろ!お前の世界の俺と一緒にするな!」


 「いずれするんだよ。はやいか、遅いか、どうする?」


 「やらない!そんな未来認めない!!」


 「はぁ・・・これがいわゆる改変ってやつか・・・うぐっ」

 嘘だろ・・・このタイミングで・・・


 俺の脳が悲鳴を上げた。

 牙醒羅を利用しようとしていたがどうやら利用されたのは俺だったらしい。


 刹那。光真の脳に新しい世界が保有されたのを感じた。

 

 俺は今まで通りのやり方じゃあ改変のループを繰り返すだけだと踏んだ。だから俺は吉崎牙醒羅を利用して改変のタイミングを早め尚且つ俺の世界により近づけようと考えたが、セオリー通りに行動するべきだったのかもしれない。より最悪な方向で結果的に改変を起こしてしまった。俺の世界に近づけることで改変の余地を見つけ改変を起こさずにこの場にいる俺を否定しないのではないかと思ったが・・・・・・。いや、待て改変をせずに改変を止める?


 これはまさか・・・


 そんなことを牙醒羅に意識を持っていかれる前に考えついてしまった。


 思ってしまったのなら、こんなところで諦めるわけには行かない。


 やはりそうだ。セオリー通りにやっていては結局なにも変わらないのだ。


 この世界はなにかを、なにかを変えられるはずだ。

 俺と同じ運命を辿るなよ。俺・・・


 そして俺の意識は未来の世界で植え付けられた吉崎牙醒羅のものと入れ替わる。

 

 「何する気だ?お、おい!!」

 予め用意しておいた俺の記憶データを青年に移植する。


 「未改変世界からの誤差は・・・意外と離れちまったな。」


 まあいいだろう。肉体は手に入った。


 「俺を利用して未改変を目指すとはな。危ないことするぜ。俺たち二人で改変を起こそうじゃないか。光真?」


 目の前の過去の俺は俺を見て光真と呼ぶ。

 「その呼ばれ方気に食わんな。」


 「そうしないと騙せないだろ?」

 嫌味っぽく過去の俺が言う。


 「同じ俺とはいえ、くだらねぇ事考えるなあ」続けて過去の俺が呟く。


 「未来の自分をみたあいつが楽しみだな。」

 俺はそんな下らないことを口にする。


 「絶望するシナリオの完成だよ。」

 付け加えように過去の俺が賛同してくれる。


 「あの娘にも頑張ってもらわないとな。」

 光真という青年との長い長いループに変化が訪れようとしている。どうやら今回は楽しくなりそうだ。

 

 『お前らを俺は・・・絶対に許さない』

 

 「ん?なんか言ったか?」

 「いや・・・」


 「じゃあ計画に取り掛かるぞ。」

 「ああ。」と相槌を打つ。

 どうやらまだアイツは俺の意識と戦ってるらしい。

 

 「さーて。この絶望が未来を変えるものとなるか、絶望のままおわるかどうか。楽しませてもらおうか。」

 

 俺はその時確信した未来という世界においての俺の罪は過去の犠牲を厭わなかった事だ。


 その結果牙醒羅に利用され最終的にはこの世界に破滅を齎す危険性を高めたのだ。


 絶望したこの世界の俺はどんな改変を起こすのだろう。

 それが救いに転じるのを意識の底に沈められた俺は願うばかりだ。

 





 

 2025年現在。


 STPの日本組織から抜け出した俺と朱葉はカレンさんの計らいで学生では一生お目にかかることの出来ない施設兼高級ホテルみたいな所で束の間の休息を取っていた。


 まあ、休息と言っても俺の方は刃蘭によって付けられた傷の治療。朱葉は精神面のカウンセリングをしていた。


 朱葉は平気そうにしていたが平気なわけはないのだ。自分の手で両親や祖母を殺した記憶を保持してしまっている。


 本当なら俺にも必要なのだが、俺はカレンさんのカウンセリング提案を断った。


 今の俺にそんなことをしている時間はないなのだ。


 嘆いたり悲しんだりしていては彼らの死は無駄となってしまう。そんな感覚に俺はいた。

 

 本当のところ今日の予定も断りたかったがどうしてもやらなくてはならないことらしい。


 今日は吉崎牙醒羅と面談をしなければならないのだ。


 カレンさん曰く国の極秘任務のため吉崎はまだ裁けないらしい。他のSTPのメンバーも同様だった。


 正直に言うと俺は怒りを隠せなかったがカレンさんは土下座して泣きながら謝罪してきのだ。


 それはあの組織から脱出後すぐの事だった。






 

 STP脱出後

 「栗原さん・・・いえ、カレンさん、俺こんなの納得行きません」


 「わかってる。私はそのために来たのよ。」


 「カレンさん。私と光真に話してください。あなたの事、そしてどうすればこの事件を・・・解決できるのかを。」


 「ええ。わたしは父に頼まれてこの仕事を受けたわ。STPの組織なんてものがてきたのは完全にこちら側の国の落ち度よ。でも複雑な問題が絡んでてね。国を使って動くことは出来なかった。だからわたしが指揮を執ることになったの。まあ私がドジをしてしまって粒子変動装置を動かしてしまって結果的に私が栗原として来たわけだけど。」


粒子変動装置とはアメリカで密かに開発が進められていたという装置で物体の形状を粒子の移動に変化を加え続けることで視覚情報が一定時間変化し通常見えているものとは違うものとなるというVRから発展した技術だ。本来データ化社会の先駆けとして視覚を変化させることでより情報を得られ無から有を発生させられるのではないかという試みから始まったものだが、完成はしていなくそれを応用した技術で俺達に栗原として認識させたのだろう。カレンさんの言い方から察するに姿が戻るのに長時間必要なことが伺える。どうやって機関に潜り込んだかは不明だが、罪人を利用するのがSTPだ。そこにつけ込んで脱獄したとでも言ったのだろう。栗原さんからカレンさんに変動したことについて理解出来たので俺は話しを進めさせる。


 「複雑な問題ってのはなんでしょうか。」


 「タイムマシンの実験は2000年前後から始まっていたの。それは国の影でじわじわと侵食を始めていったわ。他国ても陰謀論として語られたけど当時のまだ力のなかったアメリカ大統領は返答として沈黙を貫いた。手がつけられない状況で自分の地位が危うくなることを恐れ隠蔽したの。そして抑えきれなくなった政府は組織を利用して挙句の果てには次の大統領にも隠したのよ。情報を全て抹消してね。わたしの父に継がれるまで明かされることはなかったわ。」


 たしか現大統領は就任直後から歴代アメリカ大統領の問題を次々に明かしたと有名になった。


「その利用ってのが罪人をタイムマシンの人体実験ですね。」


 「ええ、そうよ。そして密かに他の国も広がっていった。国の範囲外で行われるようになりそして日本の裏でも密かに始まりつつあったわ。そして2018年にはタイムマシンは完成してしまった。そこからよ。罪人を作り始めたのは。」


 「七年前って俺達の改変の二年前だ。」


 「本格的な改変のために偽りの罪を着せる準備を始めたわ。日本で利用されたのはAI研究者よ。そして始まったの、シナータイムマシンプロジェクト。通称STP。罪人のタイムマシン計画がAI導入によってね。」


 「人工知能の移植・・・」

 俺の口からはそんな言葉が零れていた。


 「ええ。なんでそんな事が始まったかはお父さんから聞いた?」


 「いや・・・ただ母さんの為だとかって」

 「・・・・・・っ」


 朱葉は顔を強めた。

 「朱葉?」


 「思い出したのよ。私の両親も人工知能の研究者だった。」

 「なっ!?」


 「やっぱりそうなのね。たしか初めの・・・最初の世界では交通事故で亡くなってるのよね?」


 「ええ。」

 そうだ。なにも改変の起きない世界では朱葉の両親は交通事故で亡くなる。


 ・・・・・・まさか


 「機関に交通事故に見せかけて殺されたのよ。一番最初の世界で改変が起きないのは朱葉ちゃんのご両親が何らかの方法で実験を止めるからだと推測されるわ。それを知った牙醒羅達はタイムマシンを使って過去の改変を起こした。人工知能技術に革新を齎して」


 「父さんの利用・・・」


 「アルツハイマーで喜多見くんのお母さんが死ぬことは未来を観測した牙醒羅達は知っていた。それを脅すように使ったのよ。技術を発展させればお母さんを助けれるってね。」


 「つまり、父さんは朱葉の両親を裏切った・・・」


 「手を組んでいたかどうかは分からないけど・・・組織崩壊を辞めさせるよう仕向けたのは確かね。」


 「なんとなく分かったよ。父さんは・・・父さんが自殺した理由も・・・この世界が生まれてしまった理由も・・・」


 俺は怒りから涙が止まらなかった。

 最低だ。最低だ。


 「くっ・・・」


 俺は許せなかった。牙醒羅の行動が全て。組織の行動が全て。感情が高ぶりすぎて何に対して怒りを抱いているのかがわからない。


 朱葉は悔しそうな顔をしている。俺は耐えられなくなってその場に崩れ落ちる。


 「朱葉・・・ごめ・・・」

 「いいの・・・。光真・・・。そんなに苦しまなくていいから。」


 朱葉言いながら優しく抱きしめてくれる。俺はその心地よさで落ち着きを取り戻しふと思ってしまう。

 

 「あい・・・つは?カレンさん。あいつらは・・・どうなったんですか?」


 俺は声にならない声を絞り出していた。

 あいつらは死ぬべきだ。俺は心底思った。

 

 カレンさんは膝をつき、手を床につけ頭をふかく、ふかく下げた。


 「……え?」


 「ごめんなさい!!!全ては私たちに問題があります!!!STPなんて組織が出来たのも、あなた方に辛い運命を背負わせたのも全て我が国の責任です!!!でも・・・だけれども!!いまの状態ではなんにも・・・なんにも出来ないんです!本当に本当にすみません!!」


 カレンさんは涙ながらにそうして深々と土下座をした。

 

 つまり・・・この運命を変えるにはタイムマシンを使うしかないのだ。あの人たちが作り上げた、死体の塊、罪の象徴、俺達を翻弄した最低最悪な兵器とも言える代物に。

 

 だが、それを行うためには明確に日時を確認し父さんと組織を止める。それさえ行うことが出来れば改変は起きないはずだ。


 父さんが朱葉を利用しない=自殺しないに繋がり朱葉に殺人鬼人格を移植されることが無い=犯罪者にならない。誰も殺さない。そうなるのではないか、これが俺達の考えた方法だ。


 そうすることで奈良沢さんたちは組織を止められるはずだ。つまりこの世界で起きた悲惨な出来事は起こらない。


 少なくとも偽りの罪を課せられた人々は救えるという算段だ。


 だが、これは時間の輪という不条理な世界において通用するのかどうかはわからない。


 だからあいつと話すのだ。結局吉崎牙醒羅の力は今のタイムマシン技術には重要な役割を担っているのだ。

 

 「・・・いくか」

 俺は支度を終え、カレンさんの所へと足を運んだ。






 

 「今日の話受けてくれてありがとう。」


 カレンさんと俺は施設の廊下を歩きながら話していた。


 「結局俺がやらなきゃいけないんです。構いませんよ。」


 「朱葉ちゃんには作戦のこと話したの?」


 「いえ、たぶん止められるので話してません。」

 「まあ・・・そうね」


 過去の朱葉が改変によって何をさせられたかは、おおよそ検討がつく。だが、確証は持てないからその話も含めて牙醒羅に聞かなくてはならない。それだけでなく最初の世界からこの世界に至る経緯を時系列順に聞きたいものだ。だいたい俺の中で理解しているつもりだが、俺の場合他世界の記憶なんてのも保持してしまっている。


 なので、どうゆうものかイマイチわかってないのだ。

 この能力と言うべきか脳の異常現象が未来の世界や別世界を明確に順番通りに記憶できるのならばかなり楽なのだが、俺の場合別世界や改変前の過去が断片的に通常の記憶と並行で存在していてゴチャゴチャしたような感じだ。なので決して順番通りに記憶されているのではなく、あくまでターニングポイントでの別選択を見ているようなイメージだ。


 「アイツと話して何かヒントになりますかね」


 「少なくとも私達が考えて行動するよりかはよっぽど無謀ではないでしょうね。仮にも彼は研究者よ。私達が普通に生きていては辿り着けない膨大な知識を持ってるわ」


 「頼る人間があいつなんて・・・納得できませんね」


 「タイムマシンに関する人間は全てSTPの人間よ。なんならサデラさんもいるわよ?」


 「あんまり変わりませんね。」


 俺は苦笑しながらそのままカレンさんについていく。


 「ここよ。」


 カレンさんの目の前には面会のできる一室があった。中は二つの部屋に分かれており一つは面会の部屋で、もう一つは監視のような部屋でパソコンや訳の分からない機械と共に資料が乱雑されている。恐らく面会した際の情報を共有するためのものだろう。または、面会部屋に指示を送られるような仕掛けになっているはずだ。こんなのはドラマなどでしか見たことがない。面会と称しているかこれは取調室と言っても過言ではない。高級ホテルを装っているがここはアメリカが保有する裏組織でもあるのだ。こんなものがあってもおかしくはない。もしかすると今俺はSTPより危険な組織にいるのかもしれない。

 俺は少し恐怖し唾を飲み込む。


 「やあカレンさん。どうされたのですか?」

 「え?面会の予約をしておいたはずよ?」


 面会部屋から出てきた男の人とカレンさんがなにやら会話をしている。この男の人はおそらくここの職員だろう。


 「え?先程サデラと面会は終了しましたけど」

 「サデラ!?誰が面会したの!」


 「いえ・・・それは教えられません。」

 「牙醒羅とサデラは一部の人間しか知らないはず・・・だれよ。」


 「さあ?我々は外に漏らすようなことはしておりませんよ。」


 「でしょうね・・・面会ができたってことはサデラのことを知ってる人間ってことは間違いのだけれど、大した問題ではない・・・けど」


 どうやら同伴したものしか面会の内容は知り得ないらしい。諦めたカレンさんは予約ではなく普通に面会をすることにした。


 俺はなんとなく面会をしたのは朱葉ではないかと踏んだ。この面会が終わったら会いに行こう。なにか一人でやろうとしているのではないか、俺はそう思って仕方がなかった。まあそれに最近あってないし、普通に心配というのもある。なにもなければそれに越した事はないがあの組織にいる時に見た他世界の断片と関係していそうで怖い。


 俺のために自分を犠牲にしようとしているのはこの世界の朱葉にもあるところだからだ。


 俺の選択ミスであの世界のように朱葉が改変を起こそうとする世界になりうるかもしれない。その後あの世界はどうなったか俺には検討もつかないがおそらく組織からは脱出出来なかっただろう。


 そんな不安が募る中俺の目の前にある男が現れる。勿論牙醒羅である。


 「・・・・・・光真か」

 「牙醒羅・・・教えてもらおうか。お前の行った悪行の数々をな。」


 「はぁ。お前の記憶が戻るのが少し遅ければ俺にとって優位に運んだがな。結局捕まっちまった。どれだけ頑張っても2025年には組織崩壊か。まあ・・・だが、タイムマシンはかなり進歩したさ。俺の力でな。」


 「質問したい」

 「ああ。色々聞け。この状況なら小細工なんざしない。」


 「最初の世界について教えろ」


 「最初の世界?ああ。未改変世界のことか。」


 俺達が言う最初の世界とは彼らの中では未改変世界と呼ばれているらしい。そのままの意味で捉えるならあの世界に改変は起きていないということだろうか。


 「未改変世界はたった一つの改変すらも許さない万物流転の世界だ。最もクリーンな世界でな。矛盾を別世界に写す力があるんだ。基本どんな世界もそうさ。ただ違うのはどんな世界も改変があったということを肯定しているのに対して未改変世界は改変を否定できるってところだ。ほかの世界は未改変世界の改変から派生した。だから改変を否定するということはその世界を否定するということ。細かくいえばaという世界において未改変世界で起きた1の改変だけを肯定し2という改変を否定しbという世界に俺たちの配置を変える。多世界論では改変によって新たな世界が生まれるのではなく元々その世界はあったというのが原則だ。つまり俺達が観測していないだけで複数の世界が存在していて改変を及ぼすことによって別世界を観測できるっていう考え方が真実だ。でも分かりにくいからな。感覚的には派生という感じでいい。俺たち人間は予め別世界の結果に直結する世界に移動することが決まられているのだ。簡単に言えばある目的に向かっているがその途中にいくつもの可能性がある、そこに辿り着く世界もきちんと用意されているわけだ。これにより他世界を否定しないことで未改変世界は存在していられる。ちなみにここで言う他世界っていうのは改変世界のことで並行世界とはまた別の話だ。」


 「なら並行世界ってのはなんなんだ」


 「この世界は大まかに言えば二層になっててな。まず一層が一つの線で出来ている単線世界。二層がいくつもの線が交差したり大きな枠ごとに区切られた多重線世界。この多重線世界での多重線の中の一つが俺達のいる世界でその中に未改変世界や改変世界という名の複数の線が存在している。その他の複数の線がパラレルワールド。つまり並行世界だ。単線世界という括りでみれば結果は同じだが細かくみれば別物でな。そして単線世界の外側にもまた別の単線世界が存在していてそれがいわゆる異世界や別世界と言われるものだ。」


 ひとつの世界でも何個もの線に分かれているということなのだろう。


 なんだかマトリョーシカみたいな感じだ。大きな一つの人形の中にまた人形があって・・・みたいな感じに聞こえる。


 「科学者でもないお前がこの話に着いてこれるか?」

 嘲笑するかのように見下される。


 いつもなら食らいついてやりたい所だが、残念ながらこの手の話の知識量では到底こいつには適わないと思い知らされる。


 「お生憎様ついていけそうにないから質問を変えるよ」


 正直ここまでの話でついて行くのがやっとだ。できれば原理を聞き出して後々に生かせないかと考えていたが無理そうだ。


 「未改変世界で起きたことを教えろ」


 「無知な人間に教えるのは骨が折れるなあ。かつわかりやすくだしな。俺は教師でも何でもないのだがね。」


 「会話は記録されている。難しい言葉は後で調べるさ」


 「んじゃあ遠慮なく」

 牙醒羅は大きな深呼吸をした。

 





 これはあくまで俺目線で起きた出来事だ。影でなにかが起きていてもそれは管轄外だ。


 それを踏まえて聞いてもらおうか。


 俺は大学での成績や功績が認められタイムマシンを研究する組織STPに仲間入りすることができた。研究生時代から影で危険な行為を行っているからなのかタイムマシンに関しての技術は最先端だと聞かされていた憧れの組織だ。影でどんな事が行われていようと時間という超次元技術の最先端組織に加入できたのだ。そんな噂上等だった。どんなことをしてでも攻略したかった。完璧に暴きたかった。この世界の謎を。そして手に入れたかった『時』という至高の力を。その力を手にすることで俺は満たされる。新たなる世界の幕開けだと思った。

 どんな欲求も満たされる完璧な社会が生まれるのではないか。どんな人間も思いのまま自在に操れるのではないか。そんな高鳴りで一杯だった。そして俺の今まで満たされなかった謎への解明を全て注ぎ犯罪ギリギリのラインを詰めていった。そして遂に完成したのだ。完全なるタイムマシンが。だが、いざ完成し国に取り合ったがどこも取り合ってくれなかった。


 そう、観測できていないからだ。実績がなければなにも許されない。そしてどのような影響を及ぼすかも分からない代物だ。暫くして国から、いや、全世界から極秘に破壊の警告が訪れた。


 俺は何とかしてこのタイムマシンの力を証明する必要があった。


 そして思いついたのだ。この組織にいる人間の家族を実験台にすればいい。みんな、ここに全てを捧げているはずだ。俺だってそうだ。そして事故を装ってどうにか実験に使えないか俺は考えた。そしてある時AI技術者の研究を見てこれしかないとおもった。人工知能の記憶データを人間に移植すればいいのではないか。人工知能に移植したりせず記憶の損傷を抑えるためでもなくだ。


 忠実な人工知能を作り上げそれを人間に移植し俺にも忠実な人間を生み出せばいいのではないか。


 俺はその意見を組織に提出した。切羽詰まっていた組織は呆気なく承諾をした。だが、その情報がどこからか漏れてしまったのだ。


 奈良沢や喜多見の策略により機関はどうすることも出来なくなった。焦った俺は過去に跳びこんな現実変えてやろうと思った。この身がどうなろうと構いはしない。


 その想いが作用したのが数時間だけ何故か未来に跳んでしまったのだ。2045年という想像も及ばない未知だらけの世界に。その時の俺の持ち合わせていた理論では何故跳んでしまったのか全くもって証明できなかったが、未来のある一人の青年がデータ上のプログラム、現在でいうテレビのようなもので力説していた。この世界には『宇宙の反発性修正力』が存在すると。


 その理論は完璧なものだった未だ誰も解明できていない謎を次々と顕にして言った。聞いていると2045年の初頭に起きた人工知能の暴走も彼が止めたという。その世界のだれに聞いても俺の存在はありはしなかった。科学という分野においての常識はこの青年によって将来的に塗り替えられるのだと思い知らされた。


 その青年の名は喜多見光真と記されていた。


 こんな未来俺は許さなかった。急いでタイムマシンに乗り込み全力で稼働させた。そして何度も死にそうな思いをしやっとの思いで2018年にたどり着くことが出来たのだ。直接の過去かどうかは知らないが過去にたどり着くことが出来たんだ。俺は興奮したよ。


 やはり俺の理論は間違っていなかったのだと。俺は早速過去の俺を殺した。


 あとは組織の崩壊を止め人工知能をものにすればSTPに確信が訪れると思ったんだ。


 だから喜多見初実のアルツハイマーを利用して喜多見終真を動かしたのだよ。


 未改変世界の組織では終真が我々を裏切り奈良沢夫妻と手を組んだことで崩壊へと向かった。


 そして人工知能は彼の技術により進歩し初実の病気を治してしまった。ならば悪化させればいいと踏んだのだ。人工知能のデータをハッキングし盗み出すことに成功した俺は彼女に誰の記憶かも分からないデータを移植したんだ。毎日違う人間のデータを移植し続けたさ。そして病院側は手をつけられなくなってな。これが狙いだった。そうして俺は終真に組織に協力するならば初実の治療をしてやろうという提案をし協力してもらえることになったのだ。これにより記憶データを使った極秘情報は漏れることはなくなり2年間の準備は終了し、俺は最後の改変を起こしたのだ。研究を邪魔したもう二人を潰す為にな。


 奈良沢夫妻は俺の改変により死ななくなったからな。

 2020年の八月七日。そう世界的な大雨が観測された日だ。俺は人工知能の実験のため、記憶変動維持装置の性能確認のため、STPのために、奈良沢夫妻の死因を変えた。


 仮説であったがこの世界が多重線で出来ているのならば俺は元の配置に飛ぶはずだった。それはつまり記憶がなくなるということだった。それをすれば何が起きたのか分からなくなるし次の実験には繋げられない。だから記憶を維持できる装置を開発したのだ。飛ぶはずの座標を計算しそこに一定時間記憶データを送信し続けた。


 そして俺は全ての改変を終え、もとの時間へと飛んだ。


 すると世界は大きく変わっていた。そして俺の記憶も継続状態であった。


 元の座標に戻ることで俺が改変を齎したことは確定し俺の世界に改変が訪れたのだ。否俺の観測しなければならない世界が変わったのだ。


 こうして俺たち人間の多重線世界における座標は改変世界へと移動したのだ。





 

 「っ!!!」


 俺は気づくと牙醒羅の首を絞めていた。

 「牙醒羅ぁあああああああああっ!!」


 こいつは俺の両親を殺したに等しい人間だ。

 もはや人間と呼ぶ定義を成していない。

 「実験できれば・・・なにをしたっていいのか!!お前は!!!」


 「ああ・・・っ!!そ、・・・そうだよ!」


 苦しみながら枯れた声で息を交えながら開き直る。

 「殺してやる・・・俺がぁああっ!!」

 「喜多見くん!!やめなさい!!」


 カレンさんから物凄く力のこもったこぶしが飛んできて俺の体は吹っ飛ぶ。


 一瞬なにが起きたのが理解が追いつかなかった。


 「未来を変える前に犯罪者になってどうするの!!」

 「こんなやつ死んだほうがいいに決まってる!」

 「いい加減にしなさい!!!」


 その怒声に俺は思わず息を止めてしまう。そして数秒の静寂が訪れる。先に口を開いたのはカレンさんだ。


 「彼を殺しても・・・なにもならないでしょ?」


 悲しそうに涙を浮かべながら話す彼女に俺の心は落ち着きを取り戻した。


 だからといってこいつのしたことは絶対に許され事ではない。


 「すいませんでした。」

 「もう今日はやめにしましょう」

 「少しだけ、待ってください。」

 「はぁはぁ・・・まだなにかあるのか?」

 「どうしたら未改変世界に戻れる?」


 「知らないね。改変を起こしたとはいえまだ仮説しか立てられない。イマイチどういうことが起きたのか分からないしね。それにな、未来の俺やお前がこの世界や他の改変世界において改変を起こしている。もしかしたら偶然改変が起きたのかもしれない。改変は出来ても修正は無謀だと思うがね。」


 「・・・・・・」


 「一ついいことを教えてやる。確かに最初に改変を起こしたのは俺だがこの世界や他の世界に改変が齎されたのは俺が改変した世界のお前がほかの世界に移動して同じようになるように働きかけているからだ。」


 「どういう意味だ?」


 「つまり、この世界が悲惨な結果になるのは未来のお前・・・他世界のお前が繰り返すように仕向けているからだ。」


 「何を言ってんだ?」


 「まだ分からんのかね。お前が黒幕ってことだ。」


 「なっ!?」


 「俺が改変を起こしたのは未改変世界から0、5%ズレた世界だけだ。この世界は俺のいた未改変世界より9、5%ズレてる。まあ理解できるならしてみるんだな。」


 「っ・・・もういい。」

 俺はその場を後にした。

 

 

 




 「牙醒羅の理論は少し間違ってるわ。喜多見くんはどう思った?」


 「イマイチ理解が追いついていません。」


 「まあ・・・あんな話されたらね。私なりに色々考えてみるから喜多見くんはもう休みなさい。」


 「考えるってなにをですか」


 「一応これでも並行世界の研究者なのよ?私。だから父から依頼されたのよ。」


 「そういう事だったんですか。」


 「彼は凄い研究者よ。でも改変のプロセスはまだまだのようだったわ。」


 「そうなんですか?」


 「まあ・・・突き詰めてこの分野をやっていないとわからないと思う。よくタイムマシンの研究だけであそこまで辿り着けたと思うわ。」


 「あいつには才能があるんですよ。それは俺も認めます。けど使い方を間違えてるんです。」


 「ならあなたが救ってあげなきゃね。」

 「そんな未来あるんですかね。」


 「あるからあなたは選ばれたのよ。」

 「え?」


 「この時間の、この世界の貴方にしか出来ないことがある。だからみんな、あなたに掛けたのよ。未来のあなたもきっとなにか事情があって黒幕なんてのをやってるのよ。」


 「そう・・・だといいですね」

 「やっぱりショック?」


 「いいえ、この世界で例え俺が幸せだったとしても別の世界では今回俺が体験した以上の悲しみを抱えているんです。俺が今抱えている、目にしたこの体験が結果的に未来の俺の仕業なんて言われても・・・よくわかりません。きっと周りに関心がなかった俺が引き起こした罰なんです。きっと予兆はあったはずなんです。でもどの世界の俺も止められなかった。それは周りに関心がなかったからだと思うんです。きっともっと早く止められたんでしょうね。」


 「そう思えたあなたがこの時間に生まれたのなら、なにかが変わるのかもね。」


 「カレンさんの話はよく分かりませんね。」

 「そうかしら、そのうち分かるわよ。」

 「そうだといいですね。」

 俺はその言葉を後にし、その場を立ち去った。

 

 

 

 

 

 

 暫くして朱葉の元へと向かった。

 朱葉はホテルで俺の隣の部屋にいる。

 ノックをすると朱葉が出迎えてくれた。


 「久しぶりに会ったのになによ、その難しい顔は」

 「うるせーな。色々考えてんだよ。」

 「どうだかね」

 「・・・久しぶりだな。朱葉」

 「そうね。ま、入って」


 俺は朱葉に促され部屋に入る。部屋の感じは俺とほぼ一緒だった。


 「こんな高級ホテルはなんだが、落ち着かないと思わない?」


 「まあな。でも用意してくれてんだから、文句言うなよ。学生じゃあお目にかかれないぜ?」


 「まあ・・・そうだけどさ」


 「まあ近いうちにはもっと普通のところに行けるさ」

 「・・・やっぱり過去行くの?」


 「ああ。意外と俺たちだけの話じゃないからな。色んな世界の運命的なのがかかってんだ。」


 「肩の荷が重すぎるよ。・・・・・・私には・・・」

 「・・・絶対に戻ってくるから」


 「そんなこと約束できないじゃん」

 朱葉は少しばかり涙を浮かべている。


 「信じてくれ。この時間でしか救えないんだ。」

 「私には・・・光真しかいないんだよ?私はもう光真がいればそれでいいの」


 「朱葉・・・それじゃ駄目なんだ。その結果がこの世界なんだよ。こんなの終わらせなきゃ・・・だろ?」


 涙を浮かべる朱葉に心が苦しくなるがそれではダメなのだ。

 「そんなの知らない!!!光真はもう充分傷ついたよ!もういいんだよ!私のそばにいてよ!!」


 朱葉の心からの想いに俺は一瞬揺らいでしまうが気持ちを落ち着けさせ、冗談っぽく笑い飛ばす。


 「・・・あーあ。その台詞この世界じゃなきゃ即OKしたんだけどな。」

 「・・・ばか」


 朱葉はふてくれたように小声で言い放つ。


 「絶対に戻ってくるから。その台詞覚えておけよ?どの世界でも言わせてやる」


 「・・・・・・世界変わったら覚えてないわよ。」

 「思い出せるさ。」

 「・・・・・・そう、ね、」


 「あ、それと、さっきみたいに変なことするなよ?またお前勝手になにかしただろ?」


 「・・・・・・だって、教えてくれないから」


 「知ってんだろ。俺がどうするかなんて。」

 「でも・・・」


 「そうならないようにするよ。」


 「止められないよ。光真が知ってるやつよりも巨悪なんだよ。あの頃の人格って。」


 「まだわからんだろ。倒れてたのが本当に俺なのか、さ」


 「未来なんて変えなくていい。生きて帰ってきて」

 「そのつもりだよ。」

 「・・・」


 朱葉は不意に俺の頬に触れる。

 「少しぐらいワガママさせて」


 朱葉の頬が少しばかり桃色に染まっているような気がした。緊張しているのだろうか。そんなことを考えているとゆっくりと顔を近づけてくる。不思議と俺まで緊張してくる。これってもしかして、そういう奴なのか。頭が真っ白になり、疑問を口にする。


 「・・・・・・え?」

 「・・・やっ、やっぱり・・・辞めます!」


 すると朱葉は急いで顔を逸らした。

 「え?お、おう?」


 部屋全体に悶々とした空気と何とも言えない緊張感が広がる。


 「も、もお!!なんかヤダっ!かえって!」

 「・・・」


 俺は朱葉の頬に触れそのまま顔を近づける。思った以上の恥ずかしさが襲ってくる。俺の手は小刻みに震え出す。俺は勢いに任せて朱葉の唇を優しく塞ぎ、重ね合う。朱葉の柔らかな唇の感触が伝わってきて胸が高鳴っていく。そしてゆっくりと唇を離す。


 唇を離しだが、襲ってくる猛烈な恥ずかしさと胸の高鳴りは留まることはなく、朱葉の顔をよく見れない。

 

 「じゃ、じゃあ俺帰るな」

 「う、うん。私・・・待ってるから」

 俺は逃げるようにして部屋を去った。




 

 

 

 俺は自室に戻り一人今日起きた出来事を考えていた。


 母さんの死因までこの件に関係してるなんて思わなかった。どうして俺はなにも気付かなかったのだろう。父さんの葛藤や刃蘭の想いに気づけていればこんなことにはならなかっのだろう。


 そして俺が黒幕・・・ときたか。


 俺も覚えている。あの大雨の日の青年を。


 心に不安が過ぎっているのは事実だ。あれがこの世界の俺ではないはずだが、一歩間違えれば俺も同じになってしまう。


 牙醒羅の話を聞いていて少しばかり引っかかったことがある。過去を変えたのに2年間も変動が起きなかったのは何故なのだろうか。あいつは2年間の準備期間を経て朱葉の両親を殺した。そこから改変が起きた。あいつはタイムマシンで元の座標に戻ったことで改変が確定したと言っていたが違うのではないのだろうか。あの時は感情が高ぶりよく考えてはいなかったが、そんな気がしてならない。そして明日カレンさんは過去を持つ変えるための手段を考えてくると言っていた。そして間違いがあるとも言っていた。単純に考えてもおかしい自分を殺すという大きな改変をしているにも関わらずなにも起きていないのだ。多くの改変を行って蓄積されたものが改変というものだろうか。それとも改変が起きる改変と起きない改変があるのだろうか。とちらにせよ、牙醒羅の話は少しおかしい。

 

 俺はそんな疑問を抱いていた。明日になればきっとカレンさんが説明してくれると信じて俺は眠りについた。今日は色々ありすぎて本当に疲れた。


 未改変世界からここに至るまでの世界の流れ。難しいこの世界の理論。タイムマシン開発者でも間違えてしまう並行世界のプロセス。未改変世界の俺。複数世界の俺。そして黒幕である未来の俺。


 俺という存在はどれだけの世界に影響を及ぼしているのか、正直ゾッとする。自分という一つの個体だけで世界がこんなにも複雑になっているのだ。


 そう考えるとなんだか自信が湧いてくる。朱葉にも生きる理由を貰った。


 絶対に運命を変えてみせる。俺はそんなことを考えながら眠りについた。






 

 翌日の朝。俺はカレンさんから牙醒羅の理論をまとめたものを貰い、かつ、矛盾点を指摘、俺とカレンさんの二人で討論を繰り返し、過去改変の計画を進めて言った。その際様々なトラブルにも見舞われたが比較的順調に進んでいった。

 そして今日がついに計画の実行日だ。

 

 

 「この計画で本当にうまく行きますかね。」

 俺は不安を隠せずにいた。


 「大丈夫よ。牙醒羅の理論は完璧にわたしが完成させたわ。」


 「ほとんど粗探しっていうか・・・間違え探し?でしたけどね。」


 「まあ、わたしの血筋はそういうのが得意なんでね。ファステリアデューク家を舐めない事ね」


 「舐めてませんよ。」

 俺は苦笑し、気持ちを切り替える。

 ついにこの時が来た。


 「ラストチャンスってやつかな?」

 「ラストチャンスっていうか最初で最後ってやつですね。」

 「そうね」


 「じゃあ行ってきますよ。」


 目の前には台のような装置があり、上部にも台のようなものが取り付けられた空間が存在している。この中に入ると重力場が発生し磁界の中で電力が行ったり来たりする。色々な科学運動の末チャージされた空間は隣に配置されている緑色の液体を経由し爆発的なエネルギーを放出する。その高科学強力レーザーを全身に回転しながら当て続けられることで過去へのジャンプを可能にする。


 俺はその装置の中に迷いなく入る。


 高エネルギーを全身に喰らい続けるため二回のジャンプが限界だ。つまり、往復で二回飛ぶことになるので過去に行って改変可能なのは今回だけなのだ。


 「朱葉、じゃあ行ってくるよ。」


 俺は送りに来た朱葉の方を見やる。


 「必ず戻ってきてね。色々話したいことがあるんだから」


 「改変できたら次の世界で聞くよ。」


 「・・・それでもいいよ。」

 「じゃあな」


 「こういう時はまたなでしょ」

 「そうだな!未来を変えてきます!またな!!」


 刹那ーーーー。俺の意識は別のところへと飛ばされた。

 

 未来の俺が齎した改変は俺に様々な絶望を抱かせた。でも今ならわかる。これは、この絶望は未来を変えるための絶望だったのだと。


 自分の描いたシナリオ通りに動かされるのは納得いかないが、この世界を救ってやろうじゃないか。


 俺は未来を変える決意をしたーーー。

 

 

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