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でもんず  作者:
1/37

 ――とてもイヤなイヤな、笑い声。

 どこか遠くで、すぐ近くで。

 耳元で含むように、こだまのように。

 やがて、割れんばかりの大音声が……真後ろから。


 ――飛び去るように、振り返る。

 ほんの少し離れた小さな丘の上で“何か”が呵々(かか)として笑っている。

 ……小さな、丘?。


 ――ちがう。

 あれは、屍の山。

 その上に、アレは立っている。

 ぬらりと流れ足下を濡らすのは、生暖かい血河。

 ほんの一瞬。

 足裏に意識を取られ……気付くと、声は止んでいる。


 ――途端、背筋が凍る。

 見られている(・・・・・・)

 視線が矢のように降り注ぐ。

 頭の天辺から足指の爪先まで、身体の全てが射貫かれる。

 身体が動かない。

 指先はおろか、目の動きすら思うようにならない。

 嫌だ嫌だと身体中が叫びながら、視線は丘の上へ吸い寄せられる。


 ――やがて、いつしか。

 “何か”と真っ正面から向き合ってしまう。


 逆光に隠れ、影に塗りつぶされた姿。

 その中心でいっそうに暗く、呑み込まれそうな闇を放つ、空虚な眼窩。

 そこにはたっぷりと、純粋な憎悪が詰めこまれている。

 突き詰めた憎しみには、狂気すら混ざる余地はないのだ、と、実感する。


 ――再び放たれる、無数の害意。

 身体の奥へ深くへと、真っ直ぐに突き刺さる。意識が薄く、遠くなる。


 *


 そして、どこからか。小鳥の囀りが聞こえる。

 ……空を飛ばない、口うるさく囀る方の、小鳥。


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