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どうやら俺にお迎えが来てくれたらしいです

人は誰しも心の中に秤を持っている。

右に左に重石を置いて、均等さを保とうとする。


距離を計り、計算を図り、体温を測る。


それと同じように、心の距離を計り、評価を謀り、心に積もった重みを測る。


そして、それらをどちらの天秤の皿に乗せるかを選択する。


月の少女の選択は、どちらか。


太陽がその一日の役目を終えて姿を隠し、風が夜の冷たさを静かに運び始める、最初の星がそろそろ顔見え始めた頃だろうか。



「がはっ!…ゴホッ!ゴホッ!」


紫の少年が咳き込み、右手で口元を塞ぐと。急な嘔吐感に苛まれる。

やがて、少年が纏う黒衣の服…サーコートと同じ黒の手袋に鈍い赤みがさした。…血だ。


「ゴホッ!ゴホッ!」


少年は再び咳き込むと、手の平に滲んだ血痕を握り締め、口元を拭い、そのまま剣を握った。

足腰は嗤い両の手で剣を大地に突き立てる事で、何とか崩れ落ちないのが精一杯という所だ


内臓の何処かが負傷したらしい、


「まさか…ここまでのダメージとはな…」


空の赤よりも尚紅く、己が先程握り締めた血に近い様な紅の瞳で、空の一角を見据え、

少年は小さく呟く…。


暁の空だったか…1番星見ぃつけた!。そうナハトの前世の世界での記憶では、少年時代に友人といっぱい遊んだ帰りに、そう言ったものだ。


異なる世界で、不調を訴える身体、そんな中で瞳に映った夕暮れに、何処か懐かしい記憶を思い出した。


ナハトの、この身が病に犯された訳でも、ましてや相手から危害を受けた訳でも無い。



コレは…『代償』。



人智を超えた、『魔の法則』を使った事への『その代償』だ。ましてや振るったその力は『暗黒の力』


前世で休日もテレビの特番何かでも言っていたっけ…宇宙の『光』が存在しない場所なら、何処であっても存在すると、そう言わしめた程の存在。


暗黒物質(ダークマター)』の力だ。



広い宇宙のだだ一つの星に存在する人間が、何の『準備も無く』それだけ強大な存在の『力』を一部でも借り受けたなど。代償が有って然るべきだろう。


『クッ…クッ…ク…』


ナハトの見据える空、晴天だった昼間と違い赤みに染まったその空には、雲が疎らに見え始めた。


その一角を覆うかの様に浮かぶ存在が一つ。


天空の彼方に在わす、『太陽』の名を冠した天空都市から押し殺そうとしたかの様な笑い声が響く。



『ハー!ハッハッハッ!』


「…ハァ…ハァ…何が…おかしい?」



何処か…芝居がかった様な、こちらの神経を逆撫でして行く笑い声に内心苛立ちを覚え、低く問いかける。


それは、血の通った事で焼けた様な喉の痛み、それだけのせいでは無いと言うのが聴く者には分かる程に。



『コレが、笑わずにいられますか?』



そんなナハトの様子を見て尚、わざとらしく感じる程に声高く空に浮かぶ板状の画面…、ウインドウと呼ぶべきか。その窓に映された男は片手で、両目を覆う様にしてあざ嗤う


『その無様な姿…、ククク…私を笑い殺す気ですか?』


「クッ!…」


明らかに此方を侮った物言いに、苦言を漏らす事しか出来ない。


確かに、そうだ…。


暗黒の弾丸を込めた時の指の痛み。本来ならアレで気がつくべきでは有った。いや…あの時点で気が付いて居ただが、大丈夫だと…無意識に考え無いようにしてしまって居た。

ゲイルを転移させた時も、僅かに目眩は有った。だが…不幸中の幸いか相手に気取られる事は無かったし、俺も無視して居た。


ナハトの胸が…心臓がまるで早鐘を打つかの様に、ドクドクと脈打ち思考が早まる。


多かれ少なかれ『代償』がある事をナハトは『事前に知っていた』にもかかわらず、

ナハトは『暗黒の魔法』を『連続して』使ってしまった。



確かに、『暗黒の魔法』を使う事で、今尚空に浮かぶ『太陽都市』に風穴を開ける事は成功したが、

…だがそれが原因で窮地に陥っては元も子もない。



『暗黒の銃剣を使えないと踏んだ私を罠にハメたつもりでしょうが…無意味でしたねっ!』


「クソッ…」



甘かった、いや…もしかしたら前世の記憶を覚醒した弊害か…、魔法なんて、あの世界には存在せず特にこれと言った病気にもなる事が無かった。前世の時代の自分。


平和な日常の中で、差し迫る様な身の危険も無い。ちょっと疲れただけで死ぬ〜、怒りを少し覚えただけで簡単に殺す、などと言う言葉、日常に気軽に言う事が出来る国に住んでいた自分。


きちんと注意して決められた『法』…言い換えれば『ルール』


その中で過ごしていれば、余程運がなかった場合、そして天の巡りに見放された場合を除き、命や身体に危険は無い。そんな今となっては遠く、何処か寂しささえも感じる世界での記憶。



そんな…こちらの世界での制限にも似た、例えるならば『記憶と言う足枷』を持っている自分。


どこか、異世界に転生したと舞い上がり、魔法を使えた事で調子に乗っていたのかも知れない。

ゲイルの時も何とかなったし…だから、自分は特別な存在なのだと、憧れのゲームの中で登場人物になれたと。


2期でのナハトは、己が力によってあれほど苦しめられていたのに…。

画面の向こうから見ていただけの自分では分からなかった、…苦しみ。


異世界転生と言うジャンルを作品をいくつか知っていたから…。


だから、大丈夫と…、


当たり前の様に自分は無事で、当たり前の様にゲイルを助け、マナの悲しみから救えると…何処か過信していたのではないか…?


敢えて比べ様とするのなら、前世で車や原付の免許を取って、慣れた頃に自分の腕を過信して過ちを犯す。

そんな事にも似た事をしてしまったのではないか?


『病は気から』…気持ちの持ち様で身体にも不調をきたす。


その例え話の逆…それも起こり得る…と言う物なのかも知れない。



抜け行くのは身体の力だけでは無く。

負の連想式は波の様にナハトの心に産まれ、己が自身を苦しめ、瞳のに宿る力さえも奪い去りかねない物になりつつあった。


ゲイルとの戦闘の時にも、考えて居た事が再び、自分の中で渦巻く。




そして、その連想式は現実にも…


『ですが、貴方の頑張りに免じて直接私の『力』で屠ってあげますよ!!』


(ウインドウ)に浮かぶ男が、左手を空に掲げると巨大な黒の魔法陣が太陽都市から展開される。


『さぁ!来なさい!』


男…ノル・メシアの言葉と共に、魔法陣が脈打つ…


まるで水面から顔をだすかの様に、長い爪の異形の両足が覗き始めた。それも一対では無い複数の個体の足だ。やがて鈍い地響きを立てて姿を表したソレは。


ナハトの胴体よりも太い。丸太の様な筋肉質な二本の脚に、分厚い胸板…人の上半身にも似た姿に、頭に湾曲された角。右手には両刃の斧。


『ミノタウルス』と、そうゲーム時代名付けられた魔物だ…。


ソレらが空に浮かぶ魔法陣から一体…また一体と、


次から次へと、その異形の姿を現わすと、ナハトは軋んだ身体に鞭打ち正眼に剣を構えた。


最初の一体が姿を表しても、すぐに襲って来る事は無く。

視界に映るだけで20…?30?、いや…もっと居るかもしれない。鼻息荒く、彼奴らは血走った瞳でナハトを見据えていた。命令待ちなのかもしれない。



『どうです?素晴らしい筋肉を持った子達でしょう?』


『彼らは赤い物が大好きなんですよ〜なので…』


「…」



剣に力がこもる。

ダメだ…、余計な事は考えるな。こんな所では死ねない。


そうは思ってみても、記憶が感情に、感情が心に、心が身体を鈍らせる。


さっきのゲイルとの戦闘時の疑問点が解けた、ノル・メシア…救世主を見送る者。マナのストーリーに深く関わってくる存在、

…この光景を…俺は見た事ある。疑問点…思い出せなかった事の一つ…マナの過去シーン。

まさか今日だったとは…。


彼奴らは太陽都市の攻撃から村を護った事によって、魔力の殆ど尽きたゲイルを食らった魔物だ。


『貴方の血で彼らを楽しませて下さいな。』



その言葉が合図だったかの様に、先頭に立つ一体のミノタウロスが斧を振り上げ、目の前の標的を切り裂かんと迫る。


「…クソっ!」


咄嗟にマフラーに姿を変えた羽衣の能力で障壁を展開するも、ナハトは…一つ忘れていた。



斧が障壁に触れた刹那、一度は防ぐ事が出来た…だが。


『ブモォォォォッォォオォオ』


仕留める事が出来なかった事で怒りに、その身を震わせたかの様にミノタウルスは激昂し、再び斧を障壁に叩きつける。何度も何度も…目にも止まらぬ速度で叩きつけ…やげて。


やがて障壁は、硝子が砕ける様な音を立て消え失せる。


「なにっ!」


ナハトは…この時焦りから忘れてしまっていたのだ…。

この障壁が物理攻撃に弱い事を…そして、この『魔法や魔術を跳ね返す障壁』の耐久力が、現実となった今どれ程の物なのか?を。


己の肩から胴を切り裂かんと眼前に迫る斧に、剣で受け止め様とするも力の入らない足腰で支える事が出来ず。


ナハトは、剣ごと背後に吹き飛ばされ、木に叩きつけられる。


「ぐっ…あっ…」


衝撃が身体を駆け抜け、口から血が漏れ出す。


「ゴホッ!ゴホッ!」


『良い眺めですねぇ…』


『さぁ…トドメです!』


ミノタウルスが、ナハトに再び迫る…



…その時。



………チリーン



何処からか…鈴の音が聞こえた。


牛の魔物ミノタウルスが、斧を振り上げ…



……チリーン



木の麓に身体預ける様にして横たわるナハト、かつての身体能力を維持する為の変身の力は、己がダメージによって解けかかり…目は虚ろになっていた。


…チリーン


虚ろな瞳が、目の前に上弦の月を描く様にして迫る斧を捉え…



そこで斧が、ピタリと…止まった。




「こんな所に居ったんですか…」





眼前に有った斧が、まるで角砂糖の様に細切れになり…。


大きく振り下ろそうとした体制のまま固まって居たミノタウルスも、また身体にいくつもの線が走ったかと思うと、異形の血を吹き出しながら崩れ去る。


「なに…が…」


ナハトがそう呟いた時、暗黒の粒子になったミノタウルスの背後に、人影が佇んで居たのが見えた。


ナハトに背を向ける様に立つ者は、男の様だ。

白い長髪を一つに後ろで束ね、白い着物を着ている。腰にはわらの上に腰当ての様な鎧を纏い。

背には釣り糸のついた竿を背負っている。


そして刀を二本、腰の左右に刺している男。その刀の塚の部分にそれぞれ紐のついた鈴を下げている。




その男は首だけで背後のナハトに振り向くと、特徴的な口調でこう言った。


「やっと見つけたと思ったら、何なんかね〜この状況?」


「姫さん探すのに、色んな所駆けずり回って、疲れてもうたわ、全く。」


『貴様は!?』


ノルメシアの顔が驚愕に染まる。


「まっ、無事見つかったし、結果おーらい、って事でええやろ」


片手で頭の後ろを描きつつ気の抜けた様な口調で呟く


『何故!?何故!?、貴様がココにいる!?』


ノルメシアの事など眼中にないのか、それとも、そう言う男なのか彼の言葉な無視し

背後にいるナハトに首だけ向ける様にして口を開く。


「とりあえず〜、お迎えにあがりましたで」



「月の巫女はん」



竜宮りゅうぐう月城つきしろ!!』










……………






時同じくして、邸の一室



『……サト』



『誰か』の眠る部屋の中、何者かの声が響く



『…起きなさい』



「…ううっ…」



『誰か』の瞳が、ゆっくりと開いて行く。



『そして…どうか…彼女達を救って』




『お願い…マサト』



「…かあ…さん?」



遠くの廊下から、誰かがドタドタとかけだして来る音が聞こえてきた。

皆様、こんにちは、こんばんは、おはようございます。最近読み返してみて、誤字脱字の多さに悶絶しているサルタナです。


自分の力不足、何度も読み返し。そうしてまた誤字脱字を発見してしまう無限ループ。

本当に読者の方々に申し訳無い気持ちでいっぱいです。


では今回、改て以前感想で頂いた描写について最初のほうから少しずつですが手を加えつつ、誤字脱字も修正し始めた次第です。

もしかしたら、読者の皆様の想像と異なってしまうやも…と言う点が気になって手を今まで出せなかった事ではありますが、何卒ご容赦ください。


そして、寄り道と言う点で、いくつかの短いページをまとめるべきか?現在検討中です。

申し訳有りませんが今後の展開でも、以上の事を踏まえつつ物語の軌道を修正して行きますので、そちらもご容赦頂けますと幸いです


最後に、このweb小説を手にとって頂きありがとうございました。

では、また次の更新でお会いしましょう。


感想、ご指摘などお待ちしております。



追伸、時々書いている、前書きの意味は、深く考えないでも大丈夫です。

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