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人造魔導人形ホムンクルス

どんな事にも始まりがあり、終わりがある。

始まってしまった、時間は歯車の様にクルクルと周り、

多くの事象と言う歯車達を巻き込んで行く。


その多くの歯車は、また新たな歯車へと…カチリ…カチリ…と噛みあって行く。


どこか遠くの方から、少年の様な声が聞こえてくる。



帰宅の時間なのだろう、友人達と一緒に帰る声や部活動の声の勇ましいさが聴こえて来る。


そんな、朝早くからの学業を終えた者達のどこか楽しげな喧騒が、書斎の窓から、そして部屋の反対側のドアの向こうからと響いてくる。


しかし、そんな浮き足立った声が溢れる外の世界とは打って変わり、


部屋の空気は重く。肩にたくさんの教科書の入った鞄を下げたかの様な圧力(プレッシャー)がのし掛かってくる。


まだ明るい時間だと言うのに、女性の背筋に氷でも入れられたのかと、錯覚する様な冷気が走って行く。



「……見失った…ですか」




それらの生み出しているのは、灰色のスーツ姿の銀髪の男性。


大きな(デスク)の上に指先を組む様にして、肘を立て額を指に乗せる様に(うつむ)いている。


机を挟んで男性の正面に立たずむ女性からは、男性の表情は見えず。

女性の恐怖を増長させる。



「…なるほど…」




ドス黒いオーラとも言える雰囲気を背負い男性は立ち上がると、

机にそっと右手を乗せ、そのまま机に沿う様にして女性の方に向かって歩みを進めて来る。



「確かに、あの時博士の脱出するに当たって、敵に悟られないが為に貴女の隠密性が必要であって。」


「私は、護衛の1人でしたね。」



男性が(かも)し出す殺意にも似た圧力に、女性は男性の歩みに合わせる様に、一歩一歩と後ろに下がる。

男性は、聞き訳の無い子供に優しく語りかける様に、ゆっくりとした歩みと共に語りかけ。


「あ、う…だって!仕方ないじゃねーか!、そもそもアタシら…は…」


「そうそう、ミャーさんご存知でしたかな?」


「え?」


理由を()べ様とした女性の言葉に被せ気味に、先程までの圧力は何処へやら…男は(おど)けた口調で語りかける、

突然の問いに女性はソファーに仰向けで倒れている為、自分の膝の向こうに視線を向ける。


「先日、我が校の生徒達が『とあるモノ』を開発しましてねえ?」


「……」


「その『とあるモノ』と言うのがコレ」


そう男性が言うやいなや、その芝居かかった大きな動作で虚空に伸ばした手が『ナニカ』を掴む様に動く。


「……?」


男性独特の大きな手は、虚空から『ナニカ』を引き抜く様に動くと、手元から扇状に広がる白い『ナニカ』が姿を表した。


「コレは昔、『勇者の遺跡』から発見されたモノのレプリカなんですよお?」


「遺跡…から…?」


最初は仲間なのだから、話せば分かってもらえると女性は思っていた。

もしも怒りのオーラをそのままに、何かを取り出していたなら…女性も直ぐに覚悟も決める事が出来たであろう。

しかし、怒りのオーラは消え、一体何を取り出してくるのかと思えば…勇者の遺産。

レプリカとは言え、とんでも無い代物なのは間違い無い。そして(おさま)ったかにみえた怒りは…そちらもコレだけのモノを出して来たのだから間違い無いだろう。


…やっぱり、怒っていらっしゃる。



「そうですね〜、私も貴女も他の『000(ナンバーズ)』とは異なり善性』を持って産まれた」


「知っていますよ、貴女が自分と姿形の似ている『獣人(けものびと)族』をこっそり助けている事」


「だから、最初に与えられた獣人形の手下の他として、彼らを自分の下においている事」


「だあ〜から…情が移ってしまったのですね、彼らに」


その言葉と共に男性の右手は振り下ろされ…


…スパーン!と言う、何処か聴く者に心地良い響きのある音が聞こえる。



「避けましたか…」


「相変わらず素晴らしい速さですね〜!」


そう男性は、どこか楽しそうに述べると、視線を壁側の本棚へと巡らせる。


「危ねー!だろ!殺す気かっ!!」


見ると女性は、先程とは少し違っていた…紅い髪の頭に一対の猫を思わせる耳を生やし、

両手をふかふかした猫の手に変化させ、今にも飛びかからんという体制で四つ脚で立っていた。


「半獣化で避けましたか…大丈夫ですよ〜?痛くありませんからコレ」


「嘘つけ!ってかすんげー音でてんぞソレっ!」


「大丈夫ですってえ、これは『ハリセーン』と言いましてね!可愛い可愛い我が生徒が再現したんですよ〜!」


「いやいや!、信用出来ね〜から!ってか持ち手の所、ソファーめり込んでっから!」


「派手な音はしますが、相手へのダメージも無くコレを改良すれば模擬戦などでも重宝するでしょうね〜!」


「聞けよ!オイ!危なっ!今絶対本気で狙っただろっ!」


「はっはっは〜、何の事でしょうね〜!次はちょっと本気で行きますよ〜」


壁に床に本棚に…所狭しと先程と同じ高い音が幾度か繰り返しされ…ソレを猫の様に避ける女性。


「ちょっ!待て!『筋力強化』の能力まで使って本気(ガチ)じゃねーかああああああ!!!」


女性の悲鳴が放課後の校舎の中に響き渡る……。





……





魔術と剣の世界『セイルデーン』


この世界には大きく分けて五つの大陸が存在する。


北西の『アドム』


北東の『カーラム』


南西の『サームス』


南東の『ターチム』


そして、中央の世界樹を中心とした大陸『セイルダム』


セイルダムは四つの国によってなる。


先ずは、今代の勇者を輩出した『火の国』ストラダム教国

人族が多く住まい、太古の昔は砂漠が多い気候だったと言われているが、今は半分は草原になっている。


『風の国』ガーランド王国

エルフや獣人が多く、森が国の大半を覆っている国で、四つの国の中では住まう精霊もまた1番多い。


『土の国』アース帝国

ドワーフと人族が多く、遺跡から発見されたモノを研究、開発などを行なっている。


そして、

『水の共和国』アトラ・スフィア

自由国家を掲げ、土地を川に沿って分担しソレらの代表達が話し合って祭り事を決める。




………





「……それで?見失ったと言う理由は?後…その本はそちらではありません、手前です。」


男性は、『冒険家であり勇者の旅!知られざる4大陸の秘境集!」と言う本をパラパラとめくって、視線さえ向けずに指示を出す。


「うっせー!ってかアンタがコレやったんだから!少しは手伝ってくれよっ!」


女性は、部屋の中に乱雑する本をいくつか、抱えると本棚に戻す作業をしていたが、呑気に1人だけ椅子に座っている男性に食ってかかる。


「……それで?」


…が、再びハリセンを出して催促する男性に女性が折れた。


「……なんて言うか…」


「…不思議なんだよ」


「不思議…ですか」


「ああ、あの場所は確かに、嵐の様な気候の場所だ、流れは早く風だって強い」


「…はい」


「信じられないかもしれないが、その後海の上を探し回った、そしてオレは…あの時、確かに海の上で見つけたんだ。」


「だが、オレが船で見つけた時、突然アイツらの上に光の玉みたいなのが現れて…」


「この中央大陸の方へと、消えて行った…」


「………」


「…成る程」


「だから、手下どもを使ってコッチの海岸のあたりをいくつか調べさせては居るんだが……まだ」


「そうでしたか…」


「報告お疲れ様でした、今日はもう下がって…」


「いや…待ってくれよ」


粗方(あらかた)片ずけを終えて、報告を聞いた男性は少し考える様にした後、女性を下がらせ様とするが…


「もう一つ、報告しなきゃならない事がある」


女性は、意を決した様に真っ直ぐと男性を見つめると


「大地の精霊の居場所が分かった」


そう切り出した、


「…なん……ですって」


その言葉に男性の驚きの表情を浮かべ。


「アンタが昔、博士から面倒をみる様に言われた…あの精霊だよ」


「偶然、オレも海岸を探してた時に見かけた…間違い無い」


「場所は、風の国ガーランドだ」


「そん…な、そんな所に…」


男性は、その話を聞くと同時に片手で顔を覆う。


「アンタが、あの日、奴らに奪われた事の責任を感じていたのも知ってる」


「……ずっと探していた事も…」


「だから、アンタに報告しなきゃって思ってさ。」


「アンタも…オレも善性を持って産まれた…だから、あの子の面倒をアンタが任された」


「そして、その責任を感じたから、博士から距離を取ってココで働いてるんだろ」


「博士も、アンタは『彼」を元にして作っちまったからなのか…、近ずか無いし…」


「アンタも、情が移ってるんじゃねーか…。』


どこか、自分の事の様に寂し気に力無く語る女性。


「それに…アンタはオレの事、博士に報告して無い…よな。」


「優しいよ、やっぱり」


両手で、顔を覆い俯く男性に向かって話かける。


「アレは…アンタの所為(せい)じゃないよ」


「ソレに、博士も…」


「うるさい!、分かっている!」


男性は、今までの丁寧な言葉使いも忘れ、厳しい口調で怒鳴りあげると女性は、僅かに怯えた様な目を向けるが…それでも彼に真っ直ぐと見つめている。


「……すみません」


「報告は分かりました、下がってください、追ってまたお願いしたい事を伝えます」



「……分かったよ、またな、…『ノル・メシア』教頭先生…」



そう最後に言い残し、女性は部屋を後にした。部屋を出る際そっと彼に背を向けて、彼の名を呟く……





1人残った男は、眼鏡を外し指で目元を解す様にすると、脳裏に自分達が『大地の精霊』と呼ぶ彼女の姿が浮かんだ。





『はじめまして、私は精霊、よろしくお願いします』


『名前…ですか、まだありませんね』


『はい、まあでも、数字で呼ばれるよりマシでしょう…多分』



……ああ、感謝します、007号……ミャーさん



『大地の…精霊ですか?、だから私の呼び名がそうだ…と…成る程、この髪がその色だと…』


『ハハハ、どうでしょう?私、少しは上手に笑えてますか?』



……やっと



『私、明日で消えてしまうかも知れません』


『でも、コレが私の存在意義だから、博士の命令だから、頑張ります』


『もし、明日の実験上手くいって、私が無事だったなら』


……やっと見つけた、……やっと…


『もしも…だから、その時は!私と…』



……キミに会いに行くよ。


『友達になりましょう!、約束です!」



……約束を果たしに。




……博士、責任を果たして来ます。



……物語のプロローグは終わった。



……魔王は死に、人の世界は平和へと動き出す、



……だが、私の…いや…



……博士の安寧は未だに来ていない



……だから私は…彼女を……




……そうすれば、貴方様は私を見て下さいますか?





………私の忠誠は…本物だと認めて下さいますか?





……私を…彼の方と被せて見ないで下さいますか?



……私をお作りした時の様に笑って下さいますか?





……博士。

おはようございます、こんにちは、こんばんは、

おばんでございます。

皆様いかがお過ごしでしょうか?最近は暑かったり寒かったり、凄く暑い日々が有ったかと思えば、雨が多い日もまたあって、睡眠などのバランスが壊れがちなサルタナです。


今回は間話、と言う物を初めて投稿してみました。

物語の構成など長編に当たって初めての事は多く、悩ましい日々を送って居ます。


もしも矛盾している点や違和感、

そして誤字脱字などをお見かけしたら是非教えて頂けますと幸いです。


……七夕のお願いに、執筆速度が早くなりたいと書けばよかったかな……



閑話プロローグの終わりから、人造魔導人形ホムンクルスにタイトル変更

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