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月の巫女と風の賢者、どうやら、出会ってしまった様です③

出会う筈の無かった者が出会ってしまった時、

かつては定められていた物語は、形を変え、新たな運命へと動き出す。


コンコン…と、引き戸の叩かれる音がする。


「はい、どうぞ」


部屋の(あるじ)がそう答えると、僅かに高い音を奏でながら扉が開かれる。


「ちわーっス!猫ママ印のメモンジュースと特製タバスーコピザ!お待ちしやした〜!」


来客者は扉から姿を見せると元気よくそう挨拶を述べた、その者の容姿は赤い腰までの長髪の薄い青色をしたズボンに同じく長袖、前にツバのついた帽子を深く被り一見(いっけん)配達員の思わせる風貌である。


しっかりと首元まで閉じられた上着の服の下から自己主張をしている胸元や、僅かに高めの声から配達員は女性だとわかる。


帽子や左の胸元、腰に下げた鞄やズボンのお尻の部分などに猫の肉級を思わせる印が付いていおり、配達員の手持たれた箱にも同じ印があった。トレードマークなのだろう。



「ご苦労様です、では、中へどうぞ」



部屋の主の男性が配達員の女性に優しげに僅かに微笑んむと、


「はーい、失礼しやーっす」


彼女は両手で持った箱を傾け無いように、僅かに会釈して扉を閉めた。


「失礼しやす〜、ココ置きますねー」


入室の時と同じ言葉を繰り返し、そう彼女が述べると、

先程まではしっかりと両手で持っていた箱を片手で男性の前に置いた。



「おやおや、お客様の大事な商品に対して随分な対応ですね〜……もう、好きに喋っても…大丈夫ですよ。」


配達員の女性の行動に怒るでも無く、男性は机の上で組んでいた両手に顎を乗せると飄々とした口調で述べた。


「ぷっはあ〜!、うっせえな〜、堅っ苦しいんだよ!コレ!」


女性は乱暴な言葉使いで答えると、帽子を取り胸元を僅かに開く。


「007号、少しはそう言う仕事をすれば口調も治ると思いましたし、博士も同意見だった様ですが…残念、杞憂でしたね」


男性は黒い背もたれに、背を預けつつ両手でやれやれと言った動作で答える。


「変わるわきゃーねだろ!、ってか博士がアタシら作ったんだからソレ1番分かってるよな!絶対!分かってて水の国の諜報活動、とか言いつつやらせてんよな!」


拳を眼前に握ると彼女は、男性に向かって声を荒げる。


「本当に騒がしいですね、貴女は。」


そう一言呟くと、片手の中指で眼鏡をあげ…


「我ら魔導科学で作られしホムンクルスは全てを学習し、人間の様な『寿命』という限られた時間も無く、悠久の時を成長出来ると言うのに…貴女と言ったら全く。」


「ソレでも崇高にして偉大なる博士、そして魔王様によって作られしホムンクルスなのですか?。その自覚がお有りなのですかね?。だいたい貴女は…」



「だー!大きなお世話だっつうの!いちいちウルセーよ!」




男性の早口気味の何処か芝居かかった物言いに、女性は再び牙を向ける。





「…して、007号、彼等の行方の方はどうなっておりますかな?」


男性は咳払いを一つすると、気を取り直した様に机の上で再び手を組み。女性に向かって問いかける。


「っつうか、『この姿』の時は『ミーちゃん』だ!004号さんよ!」


「では、私の事も『この姿』の時は名前か教頭先生とお呼び頂けますかな?」


女性の怒りに染まった表情を向けられても、飄々とした対応で返す男性に女性は内心、えー!えー!立場の有る奴はバレ無いようにこんな大変ですね〜。と一瞬でも言ってやりたい心情に駆られたが…。


「チッ!…ああ、『太陽の勇者』に『裏切り者』だろ?、博士が追わなくて良いって言ったらしいじゃねーか、アレから003の親分から聞いたぜ?大丈夫なのか?」


女性は男の微笑みを、胡散臭そうなものを見る様な目で眺めると、明らかに苛立ちを込めた舌打ちを相手に向けつつ答える。


「ええ、問題ありませんよ…ソレで?」


「ああ、…アンタに言われた直後、手下の奴らを水の中に送り込んで追跡させたんだが…」


「…はい」


答えを急かす様に視線を向けてくる男に対して、女性は言いにくい事なのだろう、その心情が顔にはっきりと出ていた。

その証拠に、彼の視線を合わせず明後日の方に向け、右手で頬を掻く様に答えた。





「悪いな、見失なっちまったみてえだ。」



「……………は?」


女性は、一瞬部屋の中に間の抜けた空気が流れたのを感じた。


男性の背後に広がる校庭から聴こえてくる生徒達の声だけが部屋の中に響き。


固まってしまった男を眺め、あ…ヤベ…アタシ…死んだかも…と言う考えがよぎった。






ーーーーーー

ーーーーー

ーーーー


同時刻のとある村の一室。










マナ・ガーランド、

彼女は『Raito.and.dark〜太陽と月の兄弟』の続編において『メインヒロイン』に座する存在である。ファンの間では通称『太陽と月2(ツー)』と呼ばれる作品で、続編なのだからそう呼んだ方が分かりやすいし、この作品のシリーズに馴染みの無い人に説明する上でも容易だ。


だが、この続編にはれっきとしたタイトルが有った。


ソレが『Raito.and.dark〜太陽と月の兄弟〜ー月光の大地ー』サブタイトルが付いたのだ、この作品からこのゲームを始める人は、タイトルだけをみるとイマイチぴんと来ない筈だ。


春弥だった頃、友人に半ば強引に面白いから!このタイトルからやっても楽しめるから!と貸し出してやらせてみた所、最初タイトルを見た時は光と闇?太陽と月?え?兄弟に月光が刺してんの?コレ?、楽しいのか…?と言う疑問が多々多かったらしい。


確かに自分は、前作の『Raito.and.dark〜太陽と月の兄弟〜』をプレイしていた為このタイトルが誰を、何を指しているのか知っているし、サブタイトルの方も友人にオススメする上で、ちゃんと自分でプレイしてから判断したのだから意味も知っている。『大地』と言うキーワードがどのキャラクター…(いや)、誰を指しているのかを。


金髪に藍色の大きな瞳、膝下の白いフレアスカート、丸めのチュニックと言う出で立ちで、その深い青みがかった(まなこ)を眠たげに開いている少女。

キールが何処か気の抜けた間延びした口調なら、マナは殆ど喋る事は無く身振り手振り、もしくはスケッチブックや紙に自分の意思を書いて相手に伝える様な少女で、どこか危なっかしい様な雰囲気をいつも漂わせいる。


主人公マサトは、幼い頃の記憶が曖昧だった為、自分が独りっ子だと言う風に育って来たお陰なのか、割りと妹が出来た様だと、良く面倒を見ている様なストーリーでの個人会話が最初有ったりする。


一応、マナと出会った時点では母アメリアによって兄ナハトが居る事は知っていても、結局は何年も離れ離れだった事からそう言う意識は薄い様であった。


他のパーティメンバーとの会話でも、何処かその幼い様な雰囲気から、妹の様な扱いをされていて、一応マサトと同じ15歳とマナ本人は豪語して居たが、やはり妹の様なポジションになってしまうと言うちょっと可哀想な女の子である。


……だが、ゲームを進めて行けばソレもその筈と言えるだろう。



何故ならマナ・ガーランド、自称15歳。彼女がこの世に産まれたのは本編開始の五年前。一般的な人間で言う所の5歳児。なのである。


風の賢者ゲイル・ガーランドによって引き取られ、彼女は科学者の実験によって産み出された。


世界樹の在わす大陸中央部を守る、『大地(マナ)の四属性の木』からナハトを操って『月の鏡』の転換能力で魔力を奪い…その強大な魔力の殆どがナハトの『月の鏡』に吸収され、木々の力は弱体化。


その守護の役割を終える事を余儀なくされた。その力の多くは『月の鏡』に吸収され、その残った魔力と四体の木々に宿って居た『精霊』をその身に封印されて生まれた存在。


この木々を人々は『大地の四属性の木』と呼び、そして今作に置いての重要な(かぎ)になる。



二期始まった直後、遺跡で出会ったマサトとマナ、そしてキール。彼等はマサトが遺跡に潜んで居た科学者によって罠にハメられ。

マサトは、エクスカリバーの力を封印されしまうが、ナハトの助力により、なんとか遺跡を脱出する。


しかし戦える術の殆ど、そして、兄であり戦友を失ってしまったかもしれないと言う事実に、マサトは途方にくれる事となる。



そんな彼を勇気付けたのが、マナだった。


彼女はマサトに自分の旅の目的を語り、マサトに協力を願った。キールは付き合いが長い分、そっと口を閉じ何も言えなかった。


そしてマナの願いは、『師匠の仇』を倒す事。仇は…2人。

1人はこの時点では知らない名であったが、もう1人の名を聞いた時、マサトは愕然とする。


マナの師匠であり、恩人を手にかけた張本人の名は…『ナハト』


かつての魔王の配下であり、マサトの兄弟、魔王城が倒壊する際に最後にマサトがぼんやりとみた白に近い魔力を放って居たナハト……そして遺跡から救い出してくれた。


彼の名だった。


しかも師匠が殺されたのもつい最近だと言う、外見も放っていた魔力も同じ。マサトは信じる事が出来なかったが、もしかしたら何か訳が有ったのかもと思い直し、……そして。


マサトとマナ、そしてキールの旅が始まる。





旅の最中、物語で言う所の序盤で、かつての仲間達ともマサトは合流を果たしつつマサト達は、アメリアの元に訪れる。


その導きによって、『大地の四属性の木』を復活させる事で大陸の平和もたらせれる事を聞き、世界樹から…


道中…マナの秘密と…


ナフテ…




…………





「あなたっ!……だ、大丈夫…?ねえ!ちょっと」



そんな言葉が聴こえて来たと同時に視界が大きく揺れ、仄暗い水の底に差し込む海面の太陽光の様に、何処かあせった様な言葉に意識が押し上げられる。

数回瞬くと太陽の光に照らされた麦畑を思わせる黄金が目に映った。



(幻覚…か…?)



再度瞬き、僅かに頭を振って目を開けると、窓から刺す日の光に反射して輝く金髪の少女が困った様に眉を八の字にして、自分の目の前で手を振っている。


どうやら考えごとに没頭し過ぎて、心配されてしまったらしい。仄かな暖かみを感じて見れば、目の前の女性の両手が肩に乗せられていた。


「あっ…ごめんなさい。……少しぼうっとしておりました」


「まだ意識が戻ったばかりなんだし、仕方ないよ!……でしょうけれど…」


金髪の少女は、幼さが感じる口調を改めつつ、そう微笑んで見せた。

その様子に微笑ましい気持ちにもなったが、ナフティア自身が話す言葉が『丁寧な女性を思わせる口調」に変換されてしまう手前、

彼女の様に意識してるのと無意識の自分、違いはあれど親近感も胸に広がる。


何より彼女は、自分が好きだったゲームのキャラの1人だったのだ。こうして会話出来るだけで、凄い事なのかも知れない。


きっと、もしも、前世の世界で彼女らゲームの声優さんと直接会話する機会があったなら、今の自分と同じ気持ちだっただろう。


今の自分と同じ様な、言葉に言い表し難い気持ちの事を、形容し難い気持ちとは良く言ったもで、この少女となった自分の胸に広がる気持ちを、形にする術は無いだろう。


「それで、色々と質問しなきゃいけないんだけれど、大丈夫…かな?」


「質問…ですか?」


金髪の少女は、困った様に眉を寄せると、白に近い紫の髪の少女に問いかけてくる。

思わず興奮にも似た気持ちを落ち着かせる為に、深く息を吸い、ため気味な声で返事をしてしまった。



「うん…質問。体調が優れないならまた今度にするけど…どうする?」


「えっと…私が答えられるのであれば……」


……大丈夫です、そう続けようとした時金髪の少女と老人が入ってきた扉からコンコンと、ノックの音が響く。


金髪の少女が扉の近くに佇む老人へと一瞬視線を合わると、老人が小さく頷き扉を開く。


僅かに開いた扉から姿を表したのは年若い男性だった。男性は部屋の中までは入って来ず小さく老人に耳打ちすると頭を下げて去って行った。


男性が去って行くと老人は扉を閉じ、控えめに『マナ様』と金髪の少女に声をかける。


「ちょっと待っていてね。」


金髪の少女はそう言い残すと、ベットから離れ老人の元に進む。

秘密の言伝だろうか。老人は金髪の少女の耳元で何事かを呟くと、少女が頷き『分かったわ』と一言返事を述べ…


こちらに戻って来た彼女の


「おまたせっ!じゃあ、始めるわよ」


そんな一言から、質問と言う名の尋問にも近い時間が始まった。



「…はい」







「先ずは、名前」



「ナフ…ティア…です、姓はありません。」


「ナフティアちゃん…ね。姓が…ない?って捨て子だったの?…あっごめんなさい。…でも、だとしたら孤児?孤児院の名前とか貰わなかったの?」


「え、いや…有るかも知れませんが…今は思い出せなくて…」


「…ふうん…そう」


ナフティアは、一瞬偽名を名乗る事も考えたが、すぐにボロがでそうで諦める事にした。

部屋の端でこちらの様子を見守っている老人の方から、何かの魔術なのか風が流れたのを感じたから。


…前世には経験する事のなかった危機感が、頭の中で警鐘を鳴らし始め…

…そっと布団の上に乗せられてた両手に力がこもる。



それから………


……時は過ぎ。




ナフティアは、何故あの場に倒れていたのか?。何者か?と言った質問に対してや、一緒に倒れていた男との関係など問われた。

当たり障りのない様に怪しまれない様にと言う気持ちで答えたが、質問されて初めて知った内容なども有り。答えにならない事などが有った。


有る意味、姓が思い出せないと言う所から始めた手前、都合よくは会話が進んだかに思う、記憶喪失と言う風に見られているかも知れない。


マナが優しくこちらに問いかける一方で、部屋の片隅に控える老人の瞳や纏う空気、気配と言うべきか?、そちらは時が経つに連れて重くなっていた様に感じた。


こちらが知らない事など、マナが説明してくれた。


だが、もしかすると、かなり怪しまれたかも知れないな、マナとは対照的に殆ど会話に参加して来なかった老人からの静かな視線を感じつつ、後悔は先に立たず。ナフティアはそう思ったが、自分の知る前世の記憶と照らし合わせる為に必要と感じたナフティアは、素直に収穫として老人の方を極力見ない様にする程度にした。



この…何処かナフティアの知る彼のゲームに『似た』世界について知る事が出来た。



『似た』と言うのにはいくつか理由がある。


ゲーム内では語られ無かっただけかも知れないし、現実になった事による変化なのかも知れない。だがソレを確かめる術はなく。諦めるしか今の段階では無い。


だが、確認出来た事もあった、今いるのは、四つの国の一つ『風の国、ガーランド王国』…その国の1番端っこで、魔王が討伐されて7日後の朝。


魔王の討伐、情報伝達様の通信魔導具によって世界全土に向けて、発信されたと言う。

ナフティアはこの世界に、そんな道具が有った事に驚いた。


確かに、ゲーム内で冒険を進めて行く上で現代世界に似た物がいくつか出ていたのを覚えている。


例えば、食べれば補助効果のあった料理や、コンビニでゲームを予約した人だけが手に出来るシリアルコードをゲーム内で入力して手に入れる、現代に似た制服のコスチューム、そして宿屋などで起きたサービスシーンや日常シーンなどで伺える下着などの服装技術。


ゲーム内を自由に飛び回る事が出来る、古代遺跡で発見された飛空挺など。


考えてみれば異なる世界なのに、現代にに過ぎじゃないか?と。


道具について、マナに尋ねてみれば、遺跡から発見されたのだと言う。




遺跡とは、はるか昔、時間にして数百年前に『始まりの勇者』と呼ばれる存在が作った物らしい。


『始まりの勇者』は異なる世界から創造の神によって遣わされ、時の聖女や仲間達と共に『最初の魔王』を倒した存在らしい。


その勇者は『創造の神に遣わされた』と言うだけあって、世界に様々な道具や異世界の知識を持ち混んだらしいのだが……


らしいらしいばかりなのは、マナの説明が下手なのが理由でも、ナフティア自身が聞いた話だから、と言う訳でも無い。


数百年も時間が経ってしまった為に、正確な知識の殆どが現在は失われた上に。

この世界は『始まりの勇者』を始めとした多くの『勇者』が召喚されているそうだ、その為に遺跡から発掘されてる中で『始まりの勇者』の痕跡残っているのは多く無いと言う。


分かっているのは、始まりの勇者は現代に似た多くの道具を残して去った。

始まりの勇者の時代は、人族は『最初の魔王』によって、滅亡の危機で数が少なかった事、多種族のエルフやドワーフ、獣人は更に少なかったと言う事のみ。


もしかしたら、未だ発見されていない遺跡に、その痕跡が残されているかもしれないと言う事らしい。


そう言った理由から、現代に似た道具などが多いらしい。





「なるほど…、この服ってそんな凄い人のお陰であるんですね…」


「そうなのよー!、それにしても、結構常識な事なんだけどね〜」


「こんな事も知らないとなると、記憶喪失なのかな〜?、」


「今時、子供でも絵本とかで語られる話だったりするしね〜」


「子供の絵本…」


自身の首元の裾を指で摘み、改めて大好きだったゲームの新しい面を知ったナフティアはキラキラとした瞳で、部屋の中を見回し、丁度老人と目が合ってしまったタイミングで、子供の根枕に聴く話だったと言う事実をマナに突きつけられ、自然に目を逸らして俯く事に成功した。

その際、マナが視線を少し老人の方に向けたのを、見逃さなかった。


「ふむ、記憶喪失だと何かと不便だよね〜」


「あっ!そうだ!今から村の中を歩いて見ない?」


「え?村?」


「そう!もしかしたら、記憶が戻るキッカケが見つかるかも知れないしさ!そうしよう!貴女が着てた服持ってくるねー!」


そう言って彼女は、風の様に扉から消えて行った。



「え…ええー」


ナフティアと老人を残して…。





余りの速さに、2人で少女の消えた扉を見つめる事数秒、

執事の様なロマンスグレーの老人は、片手で表情を隠し大きく溜め息をついた。外見に似合わない仕草に少し見つめてしまい、老人が視線に気がついて微笑みを向けられるまで、眺めてしまった。慌てて視線を逸らす。



「……」


「……」


「ええと、良いのでしょうか…?あの方」


ナフティアは、老人と2人っきりにされてしまい、無言と言う訳にもいかず、問いかけると。


「ええ、大丈夫ですよ」


優しい微笑みを浮かべて、そう返されるだけで、また無言の空間になってしまう。




「……そうだ、ナフティア様、マナ様の事が気になるので有れば私とお部屋の外に行かれませんか?」



「良いんですか?ココで待って居なくても?」


「ええ、大丈夫ですよ、マナ様はナフティア様のお召し物を取りに行かれた様ですし、丁度そちらは化粧室や屋敷の出口もそちら側ですので…」


「外に行かれるのであれば、丁度そちらをご利用になるのも良いかと…」


そう微笑みを絶やさず語りかけてくる老人に、反対する理由もなく分かりましたと、了承する旨を伝え。


老人と共に、部屋を後にした。




部屋を出ると、廊下には窓がいくつかあり、窓の傍に台の上に蕾の様な物がいくつか花を添えて飾られていた。


ナフティアは、老人の後ろを逸れない様にしながら視線を巡らす。



長い廊下歩き、途中階段を登って行く辺りで、違和感を覚えた。

向かってるのは出口の方角の筈である、先程目の前の老人はそう言っていた、しかし、向かってるのはどうやら出口とは逆の方に思う。


何処に連れて行く気ですか…そう老人に問いかけ様とした所で…。




老人は一つの扉の前で歩みを止めると、一度部屋をノックする。


中から男性だろうか、入れと言う声が聴こえて来た。


「こちらへどうぞ」


そう一言告げて、老人はまるで執事の様に扉の影に立つ様に開くと……、



突然…開いた扉から、強烈な風が吹いた。



「きゃあ!」


ナフティアは、余りの風の強さ驚き両手で顔を守る。


風は真っ直ぐ、扉からナフティアに向かって吹いていて、廊下の窓や調度品には被害は出て居ない、

何より老人はそんなナフティアを静かな瞳で、見つめて…



「風の賢者様、魔族ナフティア様をお連れ致しました。」



そう扉の傍で頭を垂れた。


「これ…は、いったい…」



風は次第に、意識持って向きを変え。

透明なロープに縛られ、部屋の中に引っ張られる。

ナフティアは余りの力に逆らう事が出来ず、


部屋の中に引き込まれる…




そこで見たものは、部屋いっぱいに本棚が広がる、書斎の様な部屋と、ソファーに寝かされたマナ。


そして、奥の本棚に腕を組み背を預ける様にして佇む影。


「ようこそ、我が別荘に…」


影はゆっくりとこちらに向かって歩みを進め、部屋の中を照らす窓の光によって、姿が露わにする。




「魔族…ナフティア」



影…海岸で助けてくれた男性が…瞳に背筋が冷たくなる様な意思を宿して、そう告げた。




更新だいぶ遅れてしまった事、深くお詫び申し上げます。

感想などで、ご指摘を頂いた点を1ページ目から手直しし、ついでに読みにくい点や分かり難い描写などを手直ししたり、

読み進めて行く内にキャラの姿などがだんだんと想像しやすい様にするスタイルは、そのままに。

いくつか書き加えたりしている内に、リアルの都合など読者様には言い訳がましい事しか言えないのが心苦しいのですが…、そう言った事情から更新が遅滞しておりました。

タグに一部多々修正中と残した程度で、突然の停止申し訳ない。


またゆっくりと更新して行きますので、お時間が有りましたら読み返して頂けると幸いです。


今回は初の長文ページとなっておりました。

どうでしょうか、世界観など伝わってたら幸いです。


また、誤字脱字や、違和感など教えて頂けましたら幸いです。


では、また次の更新で。


前話との違和感により、ナフティアが目覚めたのが魔王討伐の3日目→7日目に修正しました。


海外→海岸の誤字を修正しました。


次回、月の巫女の葛藤

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