月の巫女と風の賢者、どうやら、出会ってしまった様です②
月の少女と大地の少女は出会う、
その出会いが、悲しみを生む事を、大地の少女は知らず、屈託の無い笑顔を彼女に向ける。
月の少女は、その悲しみを、避けることは、出来るのか?
部屋のドアが僅かに開かれると、
「おや、目を覚まされましたかな?ご気分はどうですかな?」
そう一言述べて、背筋の真っ直ぐに伸びた白髪混じりの男性が顔を覗かせた。
ーー 誰だ…?
「……は…はい、お陰様で…?、と申し上げてよろしいのでしょうか?」
白紫の少女は、戸惑う様に答える。
「それは、宜しゅうございました。」
ーーー 彼が俺を助けてくれたのだろうか?
だが、記憶に残る男の声とは大きく異なっている気がする。
この老人の声は落ち着いた、優しい声だ。
ーーーたしか…あの時の声は、若い男の…
「お〜!目が覚めたんだねー!」
そこまで思考を巡らせた時、執事の様にも見える男性の影から、老人とは違った明るい少女の声が聴こえた。そして、執事の様な燕尾服の老人の腰の辺りから、ひょっこりと金髪の少女が顔を覗かせる。
ーー え?
そう思わず俺の口から漏れそうになったのを、何とか堪えることが出来た。
「一周間近く、目が覚めないから、心配だったよ〜?」
そう言って、彼女は大きな藍色の瞳の上に鎮座する、眉を寄せた。
「でもでも〜流石お師匠様の回復魔法!、私が治療した方の子は、まだ目を覚まさないからね〜」
彼女は、老人の背後から踊る様に、身振り手振りを交えて通り過ぎながら、そう言った。
ーー 明るい…
ふわりとした風が、風が俺の顔を撫でる。
心配…そう彼女が告げた時のどんよりとした声が嘘の様に、彼女は明るい口調で告げた。
心中の言葉が漏れなくて良かった。
彼女が身を翻した時、窓から差した暖かな日の光が彼女の髪に反射して、まるで日の光を纏っているかの様に見え。
窓から入った風が運んで来たのか、はたまた彼女の匂いなのか。何処か杉の木の様な香りが鼻を擽る。
そんな金髪の少女を目で追う様に見つめ、ナフティアは内心愕然としていた…。
金髪の彼女、名を『マナ・ガーランド』。
彼女の事を、……俺は、知っている。
何故なら彼女は、『Light.and.dark〜太陽と月の兄弟〜』その第二作において『メインヒロイン』に位置する存在なのだから…。
『Light.and.dark〜太陽と月の兄弟』第二作の舞台は、第一作から、三か月経った所からスタートする。
魔王の脅威が去り人々は束の間の平穏な時間を、少しずつ取り戻しつつあった。
失ってしまったモノは彼等皆多いけれど、それでも以前の様な暮らしが出来る様になっていた。
ソレはマサト達、人々から英雄視された『勇者パーティ』の皆も例外では無かった。
…が、そんなある日、世界有数の魔術師『四大賢者』の1人で有り以前の旅の友、キールからマサトの元に一つの依頼が齎される。
その内容は『風の賢者の弟子の捜索を手伝って』
運悪く他の勇者パーティの者は、マサト以外キールの元に行く事が出来ず、二人で弟子の捜索を開始すると、
その過程で、二人は新たな『遺跡』を見つける事となる。
この遺跡の中に、その『弟子』が居るだろうか…、そんな若干の不安を胸に、『風の賢者の弟子』の無事を祈りながら、遺跡の中へと2人は足を踏み入れて行く。
そこで、マサトは…遺跡の罠によって、その力を失い…この世界を再び混沌の闇に落とそうとしている科学者と『悲しい過去』を背負った金髪の少女『マナ・ガーランド』と出会う。
ソレが主人公マサトの、新たな物語のスタートである。
そして今、その『悲しい過去』を背負う少女がナフティアの目の前にいる、
今は気さくに…明るい空気を身に纏って見える彼女、俺に語りかけてくれる金髪の少女に適当な相槌を打ちながら、
背中にヒヤリとした、冷たい汗が流れて行くのを感じていた。
先程まで月の妖精達のおかげで暖かくなった胸の内が急激に締め付けられる様な錯覚を覚える。
彼女の『悲しい過去』の原因で有り、加害者は二人、
1人は先程の科学者、
その名を『アーノルド・アクレデウス・アース』
第二作のラスボスで有り、かつての魔王の右腕、
マサトとナフティアの故郷を幹部のデーモンに襲わせた、その原因となる人物。
そして、魔王と共にナフティアを『ナハト』にし傀儡として操った存在。
そして、もう一人は…
元魔王の手下、大幹部の一人にして、対マサトの為に生み出された存在。
その名は『ナハト』
そう…今のナフティア、自分自身である。
操られていた頃の記憶も朧げではあるが、覚えて居る所は確かにある。
その記憶の中に彼女の姿も有った。何故なら自分も彼女を科学者の元から逃す手助けを行なったのだから。
あの時逃したのは3人、1人は卓越した魔術を扱う青年、もう1人は彼女を侍女の様に世話していた風の精霊。そしてマナ。彼女である。
話は僅かに逸れてしまったが、つまり、もう第二作の物語は……物語の主人公マサトとは別に、
もう始まっているのである。
それも『メインヒロイン』と『サブヒロイン』との出会いと言う形で。
……………………………
今回の物語を語る前に、先ず第一作の事の初担を語ろう。
この世界の名は『セイルデーン』
世界樹『アイリーン』を中心に、桜の花にも似た形の島が世界地図の中心に位置し、
その周りを、『』(かぎかっこ)の様な島々が四つ囲んでいる。
世界樹のある中央大陸以外を、魔王はその圧倒的な力によって支配し、
ついに中央大陸に手を伸ばして来た。
その手始めとして狙われたのが、月の里と太陽の里である、
マサトとナハトが住まう里は、他の同じ部族に比べ、規模が大きく中央大陸各所の端に位置して居た。
大陸の中央には世界樹の樹海が有り、その周りにそれぞれの国の王都がある、
その為、花弁の様な形をした大陸の中央に近ければ人は多くなって行く、
そして、部族以外の他の人々が訪れない、月の里と太陽の里は花びらの先の方、大陸の最も王都から遠い位置に有った。何故なら。
月の里の秘宝『月の鏡』
月の力の一端を宿し、かつて月の女神が『最初の魔王』を倒す為に『始まりの勇者』に託し、その鏡に移るモノを慈愛と狂気を与えると伝えられている存在
そして、太陽の里の秘宝『太陽銃』《ソル・メ・デイアス》
太陽の光の一端を宿したと言われる《エクスカリバー》と対を成す存在にして、太陽の神と『始まりの勇者』が、共同で作りあげたと言われ、杖代わり以外の本来の使い方は、製作者の二人しか知らないと言う存在。
里はそれぞれ古より、これらを守っていたからである。
だが、人々の目を避ける事が裏目に出てしまい、魔王に二人の最初は襲われてしまう。
奇しくも、その日は秘宝を天にお返しする、大事な祭り日であり、
そして、太陽の部族長の息子兄弟の次男坊と、月の部族の部族長の娘、
その二人から生まれ、それぞれが別々の部族に行く事になってしまった姉と弟の、太陽の部族と月の部族が共同で行う祭りの数少ない姉と弟の対面の日であった。
3歳離れの兄弟、父と母の部族を超えた禁断の恋によって産まれた二人、
会える頻度は少ないけれど、姉は将来母の跡を継ぎ、女性が中心の月の部族では部族長になるかも知れない、
弟は太陽の部族の次男であり、二つの部族を護る自警団の長を継ぐ、
それぞれに将来を期待されていた。
だが……
魔王の襲撃の際、ナフティアは魔王自ら月の里を襲撃して来たにもかかわらず、母の身代わりとなり月の鏡の使用できる族長の血族として攫われ。
太陽の部族は秘宝を護り切ったが、太陽の部族を中心とした自警団は、科学者の手下によって足止めにあい、
月の里を護り切る事は敵わなかった。
そして、魔王の手に堕ちたナフティアは、
月の鏡の力を用いて大陸の守護を司る四本の魔力の木に宿る精霊から魔力を奪い、大陸の結界を破壊し。
魔王は、その魔力をまるで太陽の光を月の光に変えてしまう夜空の月の様に、
月の鏡を用いて負のエネルギーに『転換』し、その力で多くの魔物を大陸に生み出した。
更に科学者は、四つの魔力を一つの魔力に『転換』し、一人の『精霊』を産み出した、
後に、科学者の元から精霊の世話して居た風属性の精霊と共に『風の賢者ゲイル・ガーランド』によって、救い出された『名も無き精霊』
そして、その名もない精霊は『マナ』と名付けられる。
皆様、こんばんは、こんにちは、おはようございます。
サルタナです、
今回は、投稿が遅れすみません、
そして、今までの説明回となってしまいまして、物語を進めて行けず申し訳ありません。
説明がこれからも多くなるかも知れませんが、良かったら読んで頂けますと幸いです。
誤字脱字について前回と同じく、見つけ次第、少しずつ直して行きますので、どうかお許しください。
最後に、この作品をブックマーク、評価して頂いた皆様、
本当にありがとうございます。
励みになります、本当に。