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月の巫女と風の賢者、どうやら、出会ってしまった様です①

可愛いは正義である、


異存は、認める。



小鳥達のさえずりが聞こえる……。





白いベットの(かたわ)らで、窓のカーテンを揺らす風が…


少女の頰を撫で、白い髪を揺らしている。



紫がかった毛先が…、サラサラと音を奏でる様に、風に遊ばれる。





「…うっ……」



少女の瞼が、(わず)かに揺れると、


…薄っすら淡く、青みが入った白い瞳が開かれる。




「ここは……?」



ーー あれ……ここ…どこだ?



部屋の中を寝ぼけ(まなこ)を擦りつつ、身体を起こして視線を巡らす。





目に留まったのは左手に、壁と小さな棚…、


その隣に、人が一人通れる程度の隙間がベットとの間に有り。




そのまま視線を右側に向けて行くと、外開きの窓に紫の小さな花が飾られており、窓に備えられたカーテンが仄かに揺れていた。




再び視線を左手に戻すと、少女から見て左脚の方に、


ベットから大きく離れた先に、壁と同じく木製の扉が有り、その横に衣装棚の様な物がある。



木で出来た病室の一室の様な部屋。




自分が住まう部屋は、都心に位置する。小さなアパートの一室だった筈だ…

今度発売予定のゲームが、現在熱中してやっているゲームの続編と聞いて、グッズやら引っ張り出して、散らかって居た筈だ、……明らかに、自分の部屋ではないのが分かった。




ーー アレ……?俺、主張中だっけ…?






明らかに自分の部屋では無い所で目覚めた事に、ぼんやりと霞がかかった様な思考がハッキリしてくる。



ーーー 手の感触にも、違和感がある様な…



ーーー それに、なんかどっかで聞いた事がある様な声が、自分の口から聴こえた様な……



少女は、今まで自分の眼を擦っていた手をまじまじと見つめる。



ーー 俺の手って、こんな細かったっけ?もっとゴツゴツしてた様な…


ーー なんか、小さくなってる様な…まだ夢でも見ているのか?



ーー ええっと、俺なんでこんな所で寝てたんだっけ?



少女は記憶を少し手繰(たぐ)り寄せると、《二つの男だった頃の記憶》を思い出す。




ーー そうだ…俺、撃たれて…、ゲームに似た世界に入ってしまったんだっけ?



頭の中で、かつて映像が流れる箱に対面する自分が浮かび上がって行く、

テレビだ、と言う単語が出てきた、

いくつかの凹凸のある歪な板を手にしている…コントローラー。


記憶の中の俺は、強敵に打ち勝ったらしい、年甲斐も無く楽しそうに笑っている。



ー そんで、俺…ナハトに転生して…魔王の元で…、ええと。


記憶の場面が、切り替わる。


何処かの森…風と緑の国だったか、魔王の軍勢と共に、侵略する予定だった。

かつてのコチラの俺は、この時に二度目のマサトとの戦闘を交わした。


その時か、マサトのエクスカリバーが目覚め、彼の太陽銃が力を取り戻し本来の使い方に至ったのは、

ナハトと魔族が召喚した暗雲は、光の剣によって斬り裂かれ、


その光はマサトの魔力を、取り戻し、対称にナハトは女性の身体を強化し本来の姿を隠す、そして己が扱う暗黒の魔力から守っている魔力の身体を一部浄化されてしまい、力が低下してしまった。


マサトを危険と判断した、魔族は村を襲う軍勢を更に召喚し人質にしようとして…、

俺の…ナハトのブラックホールに飲まれた…。軍勢も魔族も。



ーーー 『俺の戦いにケチを付けるなぁ!!』


記憶の中の俺が、浄化によって霞始めた右手を庇いつつ叫んでいる。



ーーー 『こんな事で、俺は負けない!』


ーー『負ける訳がない!』


視界に映るは、正面に佇む赤の少年。


ーー『俺はお前を殺す事、それだけの為に産まれて来た』



ーー『それが!そsれだけが!存在する意義!』


ーー『魔王様に与えられた全てだ!』


ーー 『負ける訳には行かないんだぁぁ!』


その時、マサトと俺は、引き分けた。


再び記憶の映像が切り替わる。



攫われる以前の本来の姿、女性だった今の《自分》だ。


たった8歳だ、その記憶は酷く朧げ、身の回りの世話をしてくれた老婆やと、おめかしして遊んで御本を読んで……、

然程多くの記憶は無いな…、それが何処か寂しくて…仕方の無い事だとわかっていても、でも…少し


ーー 寂しい



不思議と、それぞれの《途中までの記憶》が、一つ一つパズルのピースの様に組み上がって行く様な不思議な感覚を覚えた。


ナハトの頃の記憶は、まるで自分が演劇で誰かを演じて居るかの様に、前世の自分は過去の自分の思い出の様に。


ナフティアとしての女性としての記憶は、母を庇って月の里の秘宝と共に魔王によって、攫われた。

あの日8歳までしか無かったから、と言うのもこの感覚の原因の一つだろう。


ーー そのせいかな、頭の中では気がつけば『俺』に戻って居るのは。




たしか…前世の自分の記憶によれば、今の俺は18歳をもう直ぐ迎える筈だ、


その十年間に、ナハトの記憶と前世の記憶がぼんやりと収まっている様な。


今の自分の頭の中を表すのに、不思議な感覚、その一言だけしか浮かび上がらず、


こんな奇妙な人生を歩んできたにもかかわらず、こんな珍妙な体験をして、1番しっくりくる言葉がそれだけだった。

全く、自分の語彙の無さに現在の状況など棚に上げて笑いたくなった。



「…はっ…」


乾いた様な笑みが溢れる。



自分以外誰も居ない部屋の中で、産まれた『寂しい』と言う気持ちは、やがて自分に降りかかったその奇怪な体験への恐怖によって増幅して行くのが、怖くなった。


「は…はは」



死んでしまった…と言う喪失感、


知った世界で、目覚めた記憶…


知って居る人物だけど、知らない異性になった身体への不安、笑うしか無いじゃないか…



ーーー寂しい…な、


今の複雑な感情を表せる言葉も、また、それだけ。


語彙も、また寂しい…



ーーこれでは…いけないな。


折角、今生の母が生かしてくれたのに、これではダメだ…。



気を失う前の、アメリアとの会話が思い出される。



ーー 落ち込んではいけない



ーー 考えを変えよう

複雑な心境を胸に仕舞う様に、片手で抑え。


前世の記憶に引っかかっていた事を思い出す。


異世界転生の物語のことだ。



良くありふれた転生物語には、記憶が戻った際には頭痛に襲われたり、

意識を失ったり、熱を出したり、悲惨そうだと思った事が有ったが、どうやら俺には該当しなかったらしい。



ーー いや…でも、俺の場合撃たれたショックで思い出したんだったか…俺も大概かも知れない



改めて、転生の記憶が戻るキッカケの恐ろしさを痛感した、


あの時の胸の痛みが、幻肢痛の様にチクリと痛んだ。



先程の様に、悲しい笑みが出そうになってた所で、




…視界に、小さな白い蛍の様な光が横切った。



ふと、その小さな光を目で追って行くと…

その光は窓から流れて居るようで、次第に数を増やして行く



光の粒子は三つに分かれて、集まって行く。


手のひらサイズのぐらいになると姿を変え、春弥だった前世で言う所の蝶々にも似た半透明の羽根が見えた。

その羽根を羽ばたかせた人形の様な容姿。白い髪に紫の瞳が可愛らしい。


端的に言えば、妖精の様な羽根に白いワンピースを着た子供の様な少女達になった。以前のアメリアの顕現に何処か似ている。




ーーー ……月の妖精達か



その妖精達はナフティアの前に現れると、ナフティアの周りを回りながら、まじまじと見つめてくる。


彼女達は、露出した肩に白いワンピース姿と言う今の自分と似た姿をしていた。

その赤子の様な手で顔に肩に髪にとペタペタ触れる様にしてくる。

妖精は魔力の集合体だ、1番しっくり来るのは霊体のソレに近い、そのおかげなのか……触られる感触は無いのが…、少し違和感がある。


彼女らに触れる事が出来たなら…きっと暖かいだろう。

子供は体温が高いと言う、先程まで気落ちさせていた原因の前世の記憶の中で、そんな知識が思い出される。




散々自分の周りをクルクル飛び回った挙句、最終的には脚、正確に言うと布団の上に舞い降りた。

僅かに大きな瞳の上に鎮座する眉を潜めて、困った様にこちらを覗き込む。



なんとなくだが、この子らはどうやら心配してくれたらしい。



不思議と感情が伝わってくる。


テレパシーの様に、明確な意思を言葉に乗せて伝えてくるのとでは違い、

はっきりとはしないが…まるで彼女達の感情が直接流れて来る様だ。表情からも…少し察せる。


そんな精霊達の様子に、胸の奥に暖かいモノが広がって行く様な気持ちになった。


「心配かけちゃったみたいですね、ごめんなさい、私は大丈夫ですよ」



自分を気遣ってくれている小さな妖精、彼女達を安心させたくて、

出来るだけ笑顔で話かける。




我ながら今生の母…アメリア程、慈愛に満ちた微笑みは出来無いと思う。


ゲームに登場していたナフティアは確かに親子なんだと納得する程に、それはそれは優し気な微笑みを見せていた。


ーー ……だが今は?


ーー きっと…違う


ココに居るのは外見や言葉使いは同じでも中身がゲームの時とは異なる。


その為に、あんな綺麗な笑顔を彼女達の向ける事が出来るだろうか?、そんな不安が有った。…けれど、少しでもこの子達を安心させたくなった。


この暖かい気持ちのままに、笑ったつもりだ。





そんなナフティアを見て安心したのか、妖精達も笑顔をこちらに向けてくれた。


幼な子様な純粋な笑顔を。


ーー 良かった、笑ってくれたぁ。




すると、彼女達はナフティアの正面でふわりと浮かび、楽しいそうに部屋の中を飛び回る。





そんな彼女達を慈愛に満ちた笑顔をで、ナフティアは眺め続けた。






………






妖精達は、あらかた飛び回ると、疲れたのかナフティアの元でウトウトして眠りについたりしている。


幼な子の大きな頭がコテンッと、時折傾く様子がとても愛くるしい…。



ーー ヤバイ、可愛い…これ。



まだ起きている子は、なにやらお腹が空いている様に、小さな手でナフティアの指先に噛り付いたりしている。


「…あらあら」


ーー俺の指は食べ物じゃないぞ!、全然嚙られてる感じしないけど!



と言いたかったが…赤子、いやこの場合は猫の赤子か。

ペットの赤子が指に戯れついている様で微笑ましく。男らしい言葉が飲み込まれる現状も相まって、言葉が口から出ない。



ふと餌…一つの想いが頭を過ぎった


ーー 餌…いや、この場合はご飯か…ご飯とかあげたいな。


そんな欲求にかられた。



ーー そう言えば、人間が使う魔力に惹かれて近ずいて来たりするんだっけ、精霊や妖精って




そんな事を記憶の何処かで思い出すと、その後の行動は早かった。



ーーー あの時…


ーー 城の中で初めての変身魔法を使った時は、無我夢中だったけれど、初めて魔法、使ったんだよな……俺…



愛くるしい精霊を見つめつつ、ナハトに変身した時の事を思い返した。



ーー 魔力……出せるかな……



そう思って精霊達に玩具にされてる右手に集中してみる……と、僅かにだが暖かい様な冷たい様な『流れ』が、胸元から右手に向かって行くのが分かった。



ーー 魔力は、イメージ…だっけ、魔法は…イメージだったっけ?、どっちだ…?


ーー まあ、いいや、お菓子のイメージ、いや…飴のイメージがいいかな?甘い物の方が喜んでくれるよな…



ーー ん…と、なるほど、コレが魔力か……コレは不思議なモンだな



そんなイメージをしてると、魔力が右手から指先に流れる。



そして、指先から光輝く『こんぺいとう』様なモノが出て来た。



ーーお……おお?コレは…成功…なのか?



最初は突然光った右手にびっくりしたのか、ひっくり返ったり慌てたりして居た精霊達は、

その『こんぺいとうの様なモノ』が出て来ると、それぞれの者達がそのクリクリしたつぶらな瞳で覗き込んだ。


その中の1人が、恐る恐る手を震わせて『こんぺいとう』を手にしてくれた。


指先でツンツンしたり、再び持ち上げて様々な角度で観察したりしている。


俺に緊張が走った。


どうやら、最初は集まった魔力で何かされると考えた子が居た様だが、その子の心配も杞憂だと分かる、なにせこちらは何の危害も加える気は鼻っから無いのだから。


まあそんな事はさて置き、『こんぺいとう』の様なそれを、手にとって最初の勇気ある彼女を、真剣に見つめてしまう俺…



そんな俺が他の妖精達が握り拳を前にして見守ってる中…、手に取った妖精が小さな小さな鼻で匂いを嗅ぐと………途端に、瞳を輝かせ噛り付いた。



妖精の一人がその小さな口を懸命に開けて、あっという間にこんぺいとうを平らげると、

他の妖精も、まるで『オー!』感嘆する様に口を動かした。


…声はまるで聞こえ無いが…、真剣な瞳で両手を突き出し、私にも!とアピールしてくる。



今度は二人の手元に出してあげると、さっき食べられなかった妖精が、噛り付いつくと、彼女らも目をキラキラさせて食べ始めた…どうやら御満悦のらしい。


そして、最初の一人目が、食べ終えてしまった様だ。他の二人を指を咥えて一瞥すると、すかさず両手を広げて来た。


ーー もっとちょうだい!


と言う意思がありありと想像できる。


……どうやら本当に気に行って貰えたらしい、何よりである、



再び『こんぺいとう』を渡すと、満面の笑顔で噛り付いた。



「…ゆっくりと、お食べ…」



その言葉と共に、自分の頬が緩むのが分かった。


そんな自分が、いい歳こいて気持ち悪いかもな…と思ってしまったが、

それでも、不覚にもナフティアは、自分の大好きだったゲームの世界に来て良かった。と原作とは全く関係の無い所で感激してしまった。


小さな部屋の中を、何処か穏やかな風が流れた気がした。









……………




あらかた妖精達に餌付けし、両手で大事そうに、小さな手で『こんぺいとう』を支えつつ食べる妖精達を眺めながらも、再び考えてしまう。


もっと〜、くれ〜!


無くなった子らから、そんな言葉が聞こえそうな彼女達に、手の平に乗せた『こんぺいとう』を渡す。


「…まだ、有りますよ、喧嘩してはいけませんよ」


そっと彼女達の頭を、そっと撫でる様に手を動かす。



ーー さて、ここはどこなんだろ…と言うか、これからどうしようか…。




ナフティアは窓から見える青空と、薄っすら昼間の空に見える月を眺めてながら、そんな事を考えて居た、




ーー あの攻撃は、やっぱり『アイツ』だったのかな…?魔王幹部の一人であり負の科学者…名前は……なんだったか…?



思い出されるのは、あの光線。

2D戦闘形式だった時には、ジャンプして避けたり、レオンを壁にして耐えた記憶がある、科学者の使うロボット、及び、ステージ上の仕掛けで使われた光線に似ている様な気がする。




ーー それに、あの…海岸での男は誰ったんだろう…?




ぼんやりとしか見えず、声も何となくしか覚えていない、曖昧な記憶の中に浮かぶ。


謎の男の姿。



ーー 彼が、俺を助けてくれたのだろうか、だとしたらマサトも…そうだ!!マサト!!…





記憶が覚醒してから現在に至るまで、気を失う前までの事を思い返している内に、弟…マサトの事を思い出し、


ナフティアは、妖精達がベットから転げ落ちそうになるのを支えつつ、素早く布団から出ようとした時。



木製の扉から、ノックの音が部屋の中に響いた。



皆様、こんばんは、こんにちは、おはようございます。

サルタナです。

前回の次回予告と、なんか違う…とお気づきの方もいると思いますが…




すみません、今回は、出来心で書いたものが少し違う形になってしまい…ですが、


ちょっとでも、ナフティアの優しさが、暖かい気持ちが伝わるといいな、あの時のアメリアの気持ちが…少しだけでも…と思いつつ書きました、



そして、毎度こんな作品をお手にしてくださった皆様、ありがとうございます。


評価して頂けた皆様、こんな自分を支えて頂けて居るんだ、と、

とても励みになります、重ね重ねですが、本当にありがとうございます、






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