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27歳のバレンタイン  作者: 白石 玲
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27歳のバレンタイン 13日の物語

   27歳のバレンタイン   ―――2月13日(金)―――


―――やっぱりプレゼントは手作りじゃないと!―――


 今の彰の好みなら、職場が同じ彼女のほうがくわしいかもしれないと、バレンタインチョコレートを選ぶポイントを訊こうと玲ちゃんにメールすると、間髪入れずにこんな返事が来た。


『もしもし、結衣さん?』

 メールの返事を打ち終わる前に、玲ちゃんから電話が着た。

「あ、ごめん、いま返事を・・・」

『明日の午前中、空いてますか?』

「あ、うん。空いてるけど・・・」

『よかったら、一緒にバレンタインチョコレート作りませんか?』

「え、でも、玲ちゃん、デートなんじゃない?」

 あれだけ製菓材料を買い込んでいる玲ちゃんんだし、そのうえとってもキュートな女の子なのだ。彼氏がいて当然だと思っていたのだけど、どうも、そうでもないらしい。

『残念ながら肝心の彼氏がいないうえに夕方からバイトです。場所はうちでも、結衣さん家でもいいんですけど、朝から作って、で、夜に藤堂さんに渡しに行くんです。藤堂さんその日、21時あがりですから!』

 女子高生ってやっぱり恋愛パワーあるな・・・。

「私、お菓子作りなんて、もう何年もしたことないから・・・」

 それよりなによりお菓子作りが趣味だったことなんて一度もないくらい不器用なのだ。クッキーを焼けば黒焦げで、スポンジケーキは膨らまない。チョコレートなんか歯が折れそうなくらい固い仕上がりだ。

『任せてください!私、結構上手いですよ。なんたってあの意地悪な宗ちゃんをうならせてるくらいですから!』

 “宗ちゃん”というのは玲ちゃんと一緒にバイトをしている三井くんのことだ。私はふたりがカップルだと思っていたが、玲ちゃんに訊くと、ただの幼馴染だそうだ。

「じゃあ、ご指導をお願いしようかな」

『わぁい!じゃあ、材料の買い出しから!明日、何時ならいけます?』

「早起き得意だから、朝イチでもOKよ?」

『じゃあ、私も頑張って早起きします』

 そういうところを見ると、玲ちゃんは早起きが苦手なのかもしれない。

「あ、別に玲ちゃんの好きな時間でいいのよ?」

『大丈夫です。宗ちゃんにモーニングコール頼んでおきますから』

 玲ちゃんはそう言って笑った。

 付き合ってないとは言うけれど、私の中では私と彰より、玲ちゃんと三井くんのほうがベストカップルだ。


―――何を作りたいか考えておいてくださいね―――


 玲ちゃんからのそのあとのメールで私は私の知っている彰が好きなチョコレートを思い出そうとした。

「なんて言ったっけ・・・あのケーキ」

 iPadを開いて検索するとすぐさまヒットしたそれは、大学生の私と彰が最もよく食べていたケーキだと思う。


 大学時代、講義の合間に会える時間があると、大学近くの小さなカフェに通っていた。私も彰も付き合う前からお互いにひとりで来ていたから、最初にそれを知ったときは、私は可愛くも運命だな・・・なんて思ったりしていた。

その店でいつも彰が食べていたナッツ入りのチョコレートブラウニー。私は大概生クリームたっぷりのいちごショートだったけど、いつも彰が最初の一口をフォークに乗せて私にくれていたあの味も、それを頬張る幸せそうな彰も大好きだった。

だから、作るならこれしかない。


 もう一度、あの幸せそうな笑顔を見せて。




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