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27歳のバレンタイン  作者: 白石 玲
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27歳のバレンタイン 12日の物語

   27歳のバレンタイン   ―――2月12日(木)―――


『来年は結衣ちゃんからのバレンタインチョコレートがほしいな』


 そう言ってくれたのに、結局私は彰に一度もバレンタインチョコレートをあげることはなかった。今でも、私からのバレンタインチョコレートを受け取ってくれる?


『じゃあ、今年のバレンタインに渡せばいいじゃないですか。7年越しのバレンタインチョコレート!』


 昨日、彰との馴れ初めを話すと、玲ちゃんは目をきらきらさせて私に言った。玲ちゃんはさすがは女子高生。恋愛話とお菓子作りが大好きだという。それに引き換え私は、お菓子作りなんて、いつ振り?それこそ高校生の時に好きだった先輩に作って以来?・・・まあ、結果は玉砕だったけど。

「やっぱり、大人っぽくどっかの有名店で買うべきだよね」

 独り言を言っている私の後ろ頭にげんこつが落ちてきた。

「痛っ・・・」

「山口、お前、気持ち悪いぞ」

 振り向けば、完全に禁煙表示を無視したくわえ煙草の先輩が私がコピー機にかけっぱなしだった書類を拾ってきてくれていた。

「気持ち悪いって、ひどくないですか?」

「今朝からやたら独り言が多い。何か悩みか?聞いてやらんこともないぞ」

 私の隣の椅子に座って書類をバチバチとホチキス止めし始める。私も一緒にパチパチする。

「先輩、バレンタインチョコレートって、毎年彼女からもらってます?」

「あん?・・・もらってないな」

「え?彼女いないんですか?」

「いや、いるけど、俺、甘いもん食わねーし。いらなくね?」

 ああ・・・。だめだ。この人。全然参考にならない。

「なんだ、山口もお菓子作りとかかわいいことすんのか?」

「え、あ、いや・・・どっかで買おうかなと・・・」

 閉じた書類をトントンとそろえる。さて、今日はこれで帰れる。

「お前不器用そうだもんな。ま、お前と付き合ってる男は偉いと思うわ」

「ちょっ、それ、どういう意味ですか?」

 いや、確かに不器用ですけど!高校の時編み物が流行っても私はマフラーひとつ編めませんでしたけど!

「お前の彼氏ってきっと、ものすごく心広いんだろーなって思ってよ」

「ど、どうしてですか?」

「短気だし、怒りっぽいし、なんでもきちきちやんなきゃ気が済まねーし。だから、多分、山口にはおおらかで気が長い男があってんじゃねーかなって、思っただけ」

 そういうと私の手からそろえた書類を取り上げた。

「じゃ、お疲れ」


 彰、先輩の言ってたものすごく心が広くておおらかで気が長い男って、きっと彰のことだよ。でも、なんか、私って、欠点だらけみたい。そんな私でも、引き受けてくれるくらい、彰の心は今も広い?





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