第二話
「お姉ちゃーん。ご飯だよ…ってなにハルくんまた来てるの」
コンコンとノックしてから私の部屋のドアを開けた一歳下の妹、樹里は志陽を見るとあからさまに嫌そうな顔をした。ちなみに樹里の名前はよく『じゅり』と間違えられる。
「おー。窓から来た。俺の分の飯ある?」
そんな樹里にまったく気分を害した様子もなく窓を指差しながら笑う。左手で私を抱きしめたまま。樹里が本気で志陽を嫌っているわけではないことが分かっているからだろう。
ちなみに私の部屋と志陽の部屋は窓を越えて行き来できる。どこの王道少女漫画の幼馴染だよと思わないでもないが、正直玄関を通るより楽なので重宝している。
「あるよ。元々今日はおじさんもおばさんも遅いからうちで食べるみたいだったし」
志陽の両親はそれぞれ義治、美春のはるはる夫婦である。ついでに志陽の妹は千陽で家族全員『はる』が名前につく。
我が家はといえば、父が千里母が悠莉、私が朱璃で妹が樹里、弟が瀬里で全員『り』がついたりする。
「やっりぃ。母さんのより悠莉さんの飯のが好きなんだよな」
「そんなこと言ってると美春さんに言いつけるよ?千陽ちゃんは?」
小さくガッツポーズをする志陽を呆れて見ながら尋ねてみる。千陽ちゃんは今年中学に入学する。というか明日だけれど。
「今日友達ん家で明日の話し合いやるから遅くなるってさ」
話し合いとはなんぞや。千陽ちゃんもかなりの美少女である。まず髪がストレートロングなのが羨ましい。私なんか癖っ毛で大変なのに……。目は大きなぱっちり二重で肌は真っ白。ああいうのを白磁の肌と言うんじゃなかろうか。そしてちっちゃい。たしかまだ140cmいってないとかだった気がする。170ちょいある私には大変羨ましい。160後半を越えるころからもうこれ以上身長はいらないよとなるもんだ。まあ、普段一緒にいる志陽が197cmだからそんなに自分の背が高いと感じることは少ないけどね。
「もー、お姉ちゃんもハルくんもさっさと下行くよ! 瀬里なんかお腹すいたって死にそうになってるんだから」
「ごめんごめん」
ぷんぷんしている樹里は我が妹ながらとても可愛いと思いました、まる。