第6回 コウジ
朝、目が覚めたら9時を回っていた。
時計を確認したコウジは慌てて起き上がった。
完全に遅刻だ。
今日は大学の仲間達で遊びに行くのだが、気になっている憧れの子も一緒ということで気合が入っていた。
たまたま、紹介されて、一目惚れに近いくらいの衝撃だった。
すぐに電話交換して、何度か電話し、誘ったりもした。
ガードはかたく、二人きりというわけにはいかなかった。
それで、こんかいのグループで遊びにいくこととなった。
最近付き合い始めた彼女とは早速喧嘩したばかりだ。
浮気なんてしていないのに、浮気したと問い詰められて頭にきたのだ。
「まだ」何もしていない。
向こうも「まだ」その気はない。
その後のことはわからないが・・。
そんなうるさい女のことはどうでもいい。
この日のために用意した服を出すためにクローゼットに近づいた。
事前にさりげなく聞いていた好みからチョイスした服。
今日でなんらかの返事をもらうように動いてみる。
その結果良し悪しで今の彼女と別れるかどうか考えよう。
瞬間。
背筋が凍るほどの悪寒が走る。
奥に「何か」いる。
「誰か」いる。
クローゼットの中に。
「誰か」が。
だが自分以外に誰がいるというのか。
今の今までそんな気配もなかったのだ。
コウジは構わず開けた。
不思議と驚きはなかった。
恐怖もなかった。
むしろ幸福感さえある。
このままこの感覚がずっと続けばいいと思った。
コウジは実現することのない幸福感をいつまでも感じていた。
つづく。