第4回 ユキエ
ユキエが家に帰ると部屋の中は真っ暗だった。
虚しさという言葉が重く部屋の中に落ちている。
静かだ。
静かすぎる。
ついこの前までは幸せだったはずなのに。
幸せな将来のことまで考えていたのに。
同棲相手の男が出て行ったのだ。
男の方が浮気をして、大喧嘩したからだ。
何の落ち度があるのだ?
ユキエは思う。
自分に女としての魅力がなくなったのか。
それでも、他の女へはしった男に怒りを覚える。
謝ってきても許すつもりはなかったのだが、謝るどころか簡単に出て行った。
それはそれで悔しい思いを感じる。
どうせあの子と仲良くやるのだろう。
好きにすれば良い。
私は私の人生を進んでいくだけだ。
心に誓い、冷蔵庫から冷えたビールを取り出し、飲もうとした。
その時。
ザワッ。
悪寒が走った。
髪を洗っている時に、後ろに誰かいる気配を感じるアレである。
同じ感覚にとらわれた。
何かの気配を感じる。
それはバスルームの中から感じた。
ユキエは寒気を覚えた。
身体が危険信号を発していた。
しかし、確かめずにいられない。
バスルームへと近づく。
距離が縮まるにつれ、心臓の鼓動が速くなる。
嫌な予感がする。
だが、止まらない。
止まりたくても勝手に身体が動いているのだ。
引き寄せられるように足が動く。
いなくなった男への助けを思いながらドアに手をかけて、開けた。
目の前が一瞬暗くなったかと思うと、その暗闇はユキエにとって永遠の闇であることがわかった。
わかった時には。
既に。
遅すぎた。
つづく。