第3回 リュウジ
今日も奴を殴ってしまった。
あれだけ言ったのにも関わらず・・だ。
金を持ってこない奴が悪い。
決められた金額を持ってこないからだ。
奴はちゃんと返事したんだ。
明日には持ってくると言ったんだ。
間違いなく持ってくると言ったんだ。
ならば返事の責任は奴にある。
嫌なら最初から断ればいいんだ。
俺がどんなに奴に凄んでも、どんなに脅しをかけても。
たったひとつ簡単なことだ。
嫌なら。
断ればいいんだ。
リュウジは自分のしていることを無理矢理正当化させていた。
教室で一人イライラしている。
金を持ってこないと、俺が上に怒られるのだ。
今日がそのリミットだ。
金を納めないとこっちが半殺しの目にあってしまう。
金が足りない。
だから、奴の金がなければはアウトなんだ。
あの野朗・・。
なんで持ってこないんだ。
リュウジは舌打ちした。
簡単だろう。
金を作るのくらい。
親に頼めば貸してくれたりできるだろうが。
それでも駄目なら盗んででも持ってくればいいんだ。
まあいい。
また持ってこなければ殴るだけだ。
今度は金額も倍にしてな。
下校中。
リュウジの携帯電話が鳴る。
今まで一度も設定したことのない着信音だった。
着信を見ると奴からだ。
金の用意が出来たのか。
待たせやがって。
遅すぎるぞ。
疑うこともなくリュウジは電話に出た。
何かを喋ろうとしたその時。
顔面が蒼白になる。
意識が飛ぶ。
同時に電話機を地面に落とした。
リュウジの携帯電話は二度と本人の手に帰ることはなかった。
つづく。