第2回 キヨミ
今日はキヨミの誕生日。
大好きなパパがキヨミの欲しかったぬいぐるみをプレゼントとして買ってきてくれる。
前からおもちゃ屋さんを通る度に欲しかった物だ。
ショーケースの前にへばりついて、怒られて引っ張られるまでみていたぬいぐるみ。
キヨミは欲しいとは何も言わなかったが、パパしっかりと見てくれていた。
誕生日前になると、パパが「キヨミはあのぬいぐるみだろう?」と言ってくれた。
とても嬉しかった。
ちゃんとキヨミのことを理解してくれている。
キヨミのことをわかってくれている。
キヨミが欲しい物は、なんでもわかっているんだ。
キヨミは今日で5歳になる。
早くパパ帰ってこないかな。
待ちきれなくてキヨミはそわそわと家の中を動き回った。
「キヨミ〜静かにしなさい」
遠くで声が聞こえる。
ママは台所で誕生日に出すご馳走を作ってる。
きっと大好物のハンバーグだ。
パパの帰りが待ち遠しい。
みんなで一緒に早くご馳走食べたいな。
キヨミは窓の外を見る。・・?
何かが家の前に立っている。
パパかな?
いや・でも様子が変だ。
違う人だ。
黒い何かが・・物・・人だ。
「誰か」が立っている。
キヨミは「誰か」をじっと見る。
変な気分になった。
嫌いなピーマンを残すことができずに無理矢理口の中に押し込んだような。
押し込まれたような。
吐き気のする気分だ。
瞬間「誰か」の顔が動いてキヨミと目が合った。
ドス黒い視線がキヨミの瞳に入ってきた。
キヨミの誕生日は同時に命日となった。
つづく