第10回 刑事2
刑事は思う。
そうだ。
考えれば簡単にわかることだった。
死んだ7人の中で唯一血縁関係なのはオカダカズユキとその娘キヨミだ。
他の人間はそういった関係はない。
ということは妻のムツミの身にも何かあって然るべきだろう。
そんな可能性や根拠は、はっきり言って何もない。
しかし、頼れる情報や僅かな確率はコレしかなかった。
刑事は素早く車に乗り込んだ。
渋滞に巻き込まれることもなくすんなりオカダ邸に辿り着いた。
家の敷居に入ると、異様な雰囲気に圧倒された。
なにがあったわけではないのだが、異様な空気を肌で感じた。
チャイムを鳴らす。
・・・・・・。
誰も出ない。
もう一度鳴らす。
・・・・・・。
出ない。
まさか外出?
こんな時にか?
いやそんなはずはない。
そんな女に見えなかった。
そんな非常識な女ではないはずだ。
葬式でのあの衰弱ぶりを見れば、あれで何処かに行こうという気には絶対になれない。
予想は当たったのだ。
何かがあったのだ。
何かに巻き込まれたのだ。
あるいは「誰か」に。
ドアに手をかけると鍵はかかってなかった。
今のこの物騒な世の中、鍵がかかっていない時点でおかしいではないか。
間違いなく事件の予感を感じた刑事は迷うことなくドアを開けた。
ゆっくりと開いていくドアの目の前には。
この世で一番おぞましい物でも見たかのような醜い表情で。
死んでいるムツミの姿があった。
刑事はヨロヨロと扉にもたれかかった。
「遅かった」と一言呟いた。
吐き気を覚え、口に手をやる。
瞬間。
身の危険を感じた。
気づいた時は。
「遅かった」
つづく