エピローグ
数年の歳月が流れた。
女王となったスカーレットと、彼女を支える王配となったアルフォンスは、共に国を巧みに治めていた。
スカーレットが導入した画期的な産業振興策や、身分に関わらず才能ある者を登用する新しい教育制度は国を驚くほど豊かにし、活気づけた。かつて彼女が掌握した魔法学園からは優秀な人材が次々と生まれ、国の発展を支える力となっていた。
王宮の執務室では、宰相となったゼノン・アークライトが冷静沈着に国政を取り仕切り、女王の最も信頼できる右腕としてその手腕を振るっている。
王城の警備は、近衛騎士団長となったカイエン・グレイフォートが率いる精鋭たちによって鉄壁の守りが築かれていた。
そして、隣国エストリアとは強固な友好条約が結ばれた。その立役者となったのは、王位を継いだレオナルド王。彼は公私にわたり良き隣人として、スカーレットたちの国を支え続けている。
かつて彼女の人生を彩り、時に心を惑わせた男たちは、今、それぞれの場所でそれぞれの形で彼女を支え続けるかけがえのない存在となっていた。
***
穏やかな陽光が降り注ぐ、昼下がり。
王宮のバルコニーで、スカーレットは夫であるアルフォンスの胸にそっと寄りかかっていた。眼下には、平和と活気に満ちた美しい王都の景色が広がっている。
「見て、アルフォンス。私たちが守りたかった国よ」
「ああ。君が、君の力で築き上げた国だ」
アルフォンスは、愛おしそうにスカーレットの緋色の髪を撫でた。
一度は憎み、断罪した相手。けれど今は、誰よりも深く愛し信頼するパートナーだ。人生とは、なんと不思議なものだろう。
スカーレットは、くすくすと悪戯っぽく笑った。
「悪役令嬢と呼ばれた女が国を治める女王になるなんて、なかなか悪くない結末でしょう?」
その言葉に、アルフォンスは優しく微笑み、彼女の唇にそっとキスを返した。
断頭台から始まった2度目の人生は、多くの痛みと悲しみを乗り越え、最高の幸せへと辿り着いた。
緋色の髪を風に揺らしながら、女王スカーレットは愛する人々と共に、この国の輝かしい未来をこれからも紡いでいく。




