番外編 第2話「騎士の誓いは二度、彼女に」
カイエン・グレイフォートは、今でも時々、夢に見る。
1度目の人生。聖女リリアの涙ながらの訴えを信じ込み、スカーレット・ヴァレンティナを断罪する側に立ってしまった、あの日のことを。正義を信じて疑わなかった自分の剣が、無実の女性を死に追いやった。その罪悪感は時を遡った後も、彼の心を重く苛んでいた。
だから2度目の人生では、何としても彼女を守り抜くと誓った。たとえ彼女が悪役令嬢を演じ非道な手段を使おうとも、その裏にある真の目的を見極め、彼女の剣となることを決めたのだ。
最初は彼女のやり方に反発も覚えた。だが、彼女が一人ですべてを背負い孤独に戦っている姿を知るうちに、彼の心は同情からやがて深い敬愛、そして恋心へと変わっていった。
建国記念パーティーでの最終決戦。リリアが本性を現し、スカーレットに襲いかかろうとした瞬間、彼の体は考えるより先に動いていた。彼女の前に立ちはだかり、その命を賭して彼女を守った。
彼にとってそれは騎士としての当然の務めであり、そして自らの罪を償うための唯一の道だった。彼女が生き、幸せになってくれること。それが、カイエンにとっての贖罪なのだ。
彼女がアルフォンス王太子の求婚を受け入れた時、カイエンは心からの祝福を送った。もちろん一人の男として、胸に痛みを感じなかったわけではない。けれど、彼が愛した女性が国中の人々に祝福され、幸せな未来へと歩み出す。それを見届けられただけで、彼は満足だった。
彼の騎士としての誓いは、一度目は王国へ、そして二度目はスカーレットという一人の女性に捧げられた。
これからも近衛騎士団長として、彼女の最も近くでその幸せと、彼女が治めるこの国を守り続ける。それが、カイエン・グレイフォートが見つけた新たな生きる意味だった。




