番外編 私の中は空っぽ②【菜緒】
それから私は定期的に渡辺里美をマークすることにした。
彼女にはどうやら彼氏はいないようだ。
私は渡辺里美と拓実君の二人が結婚しないように阻止することにした。
里美と拓実君は友人関係でしかないのか、二人でたまに食事や飲みに行くことはあっても、互いの家では二人きりにはならないし、ホテルなどに行く気配も全くない。
なんなのこの人達の関係は。
友人以上恋人未満?そんな関係が現実にあるものなの?
まさかこれって、「健全な交際」というやつ?
だとしたら引くわ。いつの時代のカップルなのよ。
でも拓実君は渡辺里美に気があるのは確かだと思う。
あんなにリラックスして楽しげな彼を見たことないから。
彼の完全な片思いなのは、一度振られたとかなのかな?
渡辺里美にとっては恋愛対象ではないということなの?それか、里美があり得ないほど鈍いだけ?
漫画とかでいうムズキュンというものなの、これが?
ムズキュン、ジレジレなんてまるでヒロインよね。
なんかムカつくわ。
絶対に邪魔してやる!
『負けそうになったら、相手の足を引っ張るとか、邪魔してでも勝つのよ』
これはあの最低な母が昔私に言ったことだ。
嫌だな、私もクズな母と同じ思考と行動をするなんて。
それでも、拓実君には復讐したい。
私に死ねと言って去った人なんか、絶対に許さないんだからね。
そうだ、里美の元彼と復縁させればいいわ。
そしてその元彼と結婚させてしまえば、拓実君は苦しむわよね。
私はその後里美の元彼の富樫という男に里美の後輩を装って接触した。
富樫に里美と復縁しないのかと聞くと、あいつは今頃深町って奴と付き合ってるんじゃないかなと言った。
「里美本人は気がついてないかもしれないけど、結局深町のことが好きなんだよ。だから俺は馬鹿らしくなって別れたんだよ」
そういうことなのね。
「ええ~、そんなこと無いですよ、里美さんはこんなことなら元彼の富樫さんと別れなければ良かったって言ってますよ。早く結婚しろと親にしつこく言われて無理矢理お見合いさせられて困っているそうですよ」
「えっ?深町と付き合っていないのか?」
「そうです。だって深町君は私の彼氏ですから、それだと私が困ってしまうんです。だから富樫さん、頑張って私に協力して下さい!」
私は最も男性が好むであろうお願いポーズと表情でしなを作った。
富樫は目を見開き頬を紅潮させている。
これならもうひと押しね。
「そ、そうなんだ」
「取り返すなら今がチャンスですよ」
今日はここまでにして、後日、深町君と自分は別れたので、早くしないと里美さんを取られてしまいますよと富樫を煽る予定。
「里美先輩にはとてもお世話になったので、先輩には幸せになって欲しいんです。富樫さんなら絶対に幸せにできますよ!」
以前から拓実君への対抗心もあったのか、単純な富樫は里美に復縁を迫ったようだ。
まずはこれでよし。
その後私の思惑通りに富樫と里美は結婚した。
フフッ、これで拓実君の悲しむ顔が見れるわね。
いい気味だ。
なのに、里美と拓実君は、結婚してからも友人関係は変わっていないようだ。
この結婚があまりあの二人にダメージを与えていないようで癪だった。
─── 本当になんなのあの二人は!?
私の空っぽな心は、今では復讐で一杯なの。
私の復讐はまだまだこれから。
だからもう空っぽなんて誰にも言わせないわ。




