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公園にて

駅に近い公園でお互いブランコに座り、酔い醒ましのコーヒーを飲んでいる。

ベンチが先客で埋まっていたから、ブランコにした。


「深町君はまだ結婚しないの?」

「······いつかはしたいとは思っているよ」

「子どもは······やっぱり欲しいよね?」

「うーん、それは授かり物だからな。いくら欲しくてもできないケースはあるんだし」


そういえば里美もまだ子がいないのだと気がついて、これは無神経な発言だったかもしれないと焦った。


「不妊治療してでもって思う?」

「もしかして······してたのか?」

「ううん、その逆。子どもはいらないって言われちゃったんだよね。私は欲しかったんだけど。それなのに不倫相手には産ませるんだから、殺意湧いたよ」


(······あいつ、ぶっ殺す!)


「俺が代わりにあいつを殺してやろうか?」

「ははっ、もうね、悲しいとか辛いとか、怒りを通り越して殺意しか感じなかった。別れ話で相手を刺したり撲って殺しちゃう人の気持ちが物凄くわかっちゃったのよね」

「本当に殺さなくても、殺したる!ぐらい言って脅してやれば良かったのに」

「うん、本当、そうしておけば良かった。自分で自分の殺意の強さにびっくりしちゃって何もできなかった」


里美はブランコをゆっくり漕ぎ始めた。コーヒーはすっかり冷めている。


「今からしばきに行くのもアリだぞ。助太刀ならするよ」

「あははっ、ありがとう。でも殺すほどの価値も殴る価値もない人だから、あんな人のために私達の大事な人生を棒に振ることはないよ」

「······なあ、そもそも何であいつなんかと結婚したんだ?正直、里美とお似合いだとは全然思っていなかったよ」

「······そうだね、私の恋愛経験値が低すぎたんだと思う。恋愛経験がもっと豊富だったら、真意を見抜けたか、もうちょっと上手く関係を築くとか、改善することができたのかもしれない」

「······あいつが初恋だったのか?」

「まさか!全然違うよ。初恋の人も初彼も別の人だよ」


友人として本音で色んなことを話すことはあっても、お互いの恋愛についてだけは突っ込んで話すことは今までなかった。

恋愛事は同性の友達の方が話しやすく、役に立ちそうだったから。


大学を卒業した後二人は一旦別れていたのを俺は知らなかった。

彼女達はずっと続いているとばかり思っていたのだ。

大学時代もラブラブなところを彼女は他者にアピールしたりはしていなかったから、気がつかなかった。


「他の男にお前を渡したくないって言われたら、誰だって自分にそれだけ好意があると思うものでしょ?」

「普通はそうだな」

「私はそこを見抜けなかったのよ。私が三十近くなって親に見合いをさせられている話を誰かに聞いたらしくて、それでそう言われたから勘違いしちゃって。あの人、アピールするのだけは上手いから。私はそれ程好きでもなかったのに絆されてしまって、本当に馬鹿だなって思うわ」

「そんなことなら、俺と結婚しておけば良かったのに。······な~んてな」


思わず冗談めかしてそんな鎌を掛けてしまった。


「うん、本当にそう思うよ」

「······えっ?」


俺は耳を疑った。


「私のことが好きで誰かに渡したくないからではなくて、好きでもないのに他の男に単に負けたくなかったからという理由だけで、自分がマウントを取るためだけにプロポーズするなんてクズよね」

「······あいつがそう言ったのか?」

「そう。別れ話の時に泣きもせず、すがりもしない可愛げの無い女、お前は昔から可愛げの無い奴だったって言われたから、じゃあ何でそんな私と結婚したのよって聞いたら、そう答えたのよ。それで余計に殺意増し増しよ」


里美は勢いよくブランコを漕いだ。

沈丁花の花の香りが漂っている。もうじき花粉症の季節がやって来る。


「ああもう、一生の不覚、占い師としても汚点、黒歴史~!」


俺と結婚しておけば良かったという同意は聞き間違いなのか?

さらっと流されたような。

きっと今はまだそれを彼女に問い質すタイミングではないのだろう。


「·····愚痴ってごめんね」

「いいよ、いくらでも愚痴れよ。それで里美のしんどさが減るならさ」

「······ん、ありがとう」

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