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湯気が立ち込めるようになってきた頃、その場にいた猿たちが姿勢を整え道を開ける。
一瞥もせずまっすぐ前を見て歩く猿帝には間違いなく威厳があった。
「ひぐっさん!いるか?おーい!」
その言葉を聞いて大きなクマがゆっくりと煙が立ち込める小屋の中から出てくる。
「なんだい?ん?誰だい?その子は。」
猿帝は手を叩きながら笑うと
「てめえの女もわからなくなっちまったのかい?そんなら俺様がもらっちまおうかね?」
茶化す猿帝を無視して服部はひぐっさんに駆け寄り抱きつく。
涙を流し突然抱きつく女性に困惑しどうしていいかわからない様子に猿帝をはじめに猿たちが笑う。
「会いたかった…本当に…。急にいなくなっちゃうんだもん…。」
「君は?」
そういうひぐっさんに小指を立てる。
「ようやく約束が果たせたね…!」
その言葉に一瞬の間を置いてひぐっさんはハッとする。
「お嬢さん…あのお嬢さんなのかい…?」
ひぐっさんの目から涙が溢れ出てくる。
服部は再度ぎゅっと抱きつく。
それを片手で包み込むようにひぐっさんも抱いてやる。
「忘れちゃったの?約束。」
「もちろん…覚えてるよ…。こうやって会えただろう…?」
茶化していた猿たちもいつの間にか涙を流している。
猿帝は温泉に頭を浸けている。




