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「面倒ついでですがな、先生が動こうとしてるみたいですぞ。」
「あの子か…。ずっと長い間、食指が動くことはなかったのに…。運命は止まることを知らんな。」
「そうですなぁ。物怪の子も彼に惹かれております。森のものも一目置いている。」
先生…もう何ヶ月も会っていない。
初めて会ったのは山ではなかった。
「おはよう。おはよう。おはよう。」
豊虫は1人ベンチに座りランドセルから給食で出た食パンをちぎり地面にばら撒く。
「馬鹿にするのも大概にしろよな。」
「ほんと。人間は私たちをまるで馬鹿みたいに扱う。」
「さんざん賢さを見して手紙を運んだりしたのにね。」
木の上から豊虫を見下して鼻で笑う。
「君たちのためじゃない。腹をすかした動物がいれば食べてもらいたいだけだよ。」
クルルと低く鳩たちが笑う。
「ならなんで地面に置く?」
「人間はわざわざ地面に置いて食べるんでしょうよ。」
豊虫は俯くと唇を噛む。
「何にも言えなくなっちゃったわ、あの子。」
「かわいそうだよ。人間は頭が足りないんだからしょうがないよ。」
いつのまにかカラスも混じって悪口を言い合っている。
豊虫は涙が出そうになるのをこらえながら残った食パンをランドセルに入れる。
それを嘲笑うようにカラスは豊虫めがけてフンを落とす。
その時豊虫の頭上で傘が開かれ影を作る。
ベチャ
突然できた影に驚き豊虫は顔を上げる。
そこにはショートカットに鋭い目つきの美しい女性が傘を差し立っている。
「あら、だーれ?文化的な生活を営む都会でフンなんて落とすのは。」




