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「俺は死ぬはずだった、殺されたはずだった。俺、物怪だろ?しぶとくこの世にしがみついてたんだよ。弟がずっとこの世に繋げてくれてた。」
「弟…?君はいつから生きてるの?」
その問いに三男雄は首を振る。
「生まれたのは数百年前。だけど生まれた瞬間殺された。なんでかはわからないけど、殺されたんだ。だけど、人の血が大量に注ぎ込まれた。それでなんとか瀕死の状態で生きながらえたんだ。」
豊虫は倒れた三男雄の前まで行くと座り込む。
「残念ながら俺にはその数百年の記憶はない。ずっと気を失ってたんだ。だから、実際記憶があるのは14年前。豊虫、お前が生まれた時と同じ時に生まれたんだよ。」
「なんで、そんなことが?」
三男雄は体を起こし真っ直ぐ見つめる。
「それはわからない。運命としか言いようがない。でもそれは偶然じゃないと思う。お前の父さんが繋げたんだと思う。」
それを聞いて豊虫は身を乗り出す。
「さっき父さんを殺したって…。」
「そうだ。俺が殺した。俺が食べたんだよ。」
「復活するために…?」
三男雄は黙って頷くと涙がこぼれないように顔をしかめながら上を向く。
その様子をみた豊虫は怒りや父に対する興味よりも三男雄へ対する心配の感情が膨らんでいく。
「そう…復活するために弟が呼び出したお前の父さんを俺は喰った。弟と一緒に…。」




