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三男雄に追いついた豊虫は気まずい空気に苦しんでいた。
「ミノッチ…。」
言葉が続かず豊虫は俯いてしまう。
三男雄はその様子にため息をつくと首を振る。
「心配すんなよ。冷静になったって言ったろ?無鉄砲に突っ込んだりしない。それに台風もじきに来る。お前に絡んだやつもそんな時に山には入らないだろうよ。」
それを聞いて安心するが三男雄の顔を見て察する。
「嘘だ…。行くんだね?」
三男雄は笑顔を見せる。
「なんでだよ?話聞いてたか?行かないって。」
「ダメだよ、みのっち。なんでかわかんないけど君の嘘はわかるよ。」
三男雄は笑顔のまま頭を掻く。
「そっか、そうだよな…。そらそうだ…。」
「?」
三男雄は悲しそうな笑顔に変わり優しく豊虫を見つめる。
「俺がお前の親父だって言ったら信じる?」
「は?」
突然の言葉に豊虫は素っ頓狂な声を上げる。
それを見て三男雄はいつものような明るく笑う。
「ごめん、ちょっと言いすぎた。けど、間違ってるけど間違ってないんだ。さっきお前の母さんが俺を見て駿馬って言ったろ?」
「あ、うん。父さんの名前だよ。僕が生まれる前に死んだって。」
三男雄はいつものような笑顔を貼り付けたまま立ち止まって豊虫に向き直る。
「そう。お前の父さんは死んだ、というより俺が殺したんだ。」
「!? どいうこと?」
笑顔のまま涙を溜めた三男雄は豊虫に駆け寄ると口元に軽くキスをする。
驚いて豊虫は突き飛ばすと三男雄はその勢いのまま力なく倒れる。
「な、なんだよ!急に…」
「聞いてくれるか!」
豊虫の言葉を遮り三男雄は大声で叫ぶ。
驚き黙った豊虫はそのまま小さく頷く。
「ありがとう…。」
倒れたまま三男雄は話し出す。




