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小豆が落ち着き切る前に小石を周囲に散らばせながらトビーが舞い降りる。
「ごめん!変質者は見当たらなかった!けど、三男雄を連れてきたから。」
「豊虫…。大丈夫…か…?」
三男雄は息を切らして膝に手を当てながらも豊虫をまっすぐ見つめる。
「うん、大丈夫だよ。わざわざ来てくれてありがとう。」
三男雄は安心して道端にも関わらず腰を下ろす。
「話は聞いた。どうにかしないと。俺も手伝う。」
神妙な面持ちの三男雄に豊虫は首を振る。
「警察に任せよう。僕らが関与できる範囲じゃないよ。」
そういうと三男雄は立ち上がり豊虫に詰め寄る。
「なんでだよ!大事な友達だろ?警察が山の中まで見回ると思ってんのか?」
「マタギって伝えたし山の方も見回るって言ってくれたから…。」
三男雄は信じられないと言った様子で掴んでいた豊虫の肩を押す。
「俺はいく。トビーは初めての動物の友達だ。その友達を見捨ててはおけない。」
震える豊虫を見て小豆は三男雄に詰め寄る。
「ちょっと!あなた!だめよ。警察に任せなさい。大人として危険な目には…」
三男雄の肩を取り振り向かせた時、小豆の中の時が止まる。
「駿馬…。」
それを聞いて三男雄も固まる。
しかしすぐさま豊虫をチラリと見て手を振り解く。
「誰ですか?」
「あ、ごめんなさい。」
小豆は自分でもどうしてしまったのかと慌てて謝る。
「豊虫の母さんか。俺は豊虫の友達の三男雄です。大丈夫です、冷静になりました。今日は大人しく帰ります。」
「そう。」
小豆は少しぼんやりした様子でその姿を見送る。
豊虫は慌てて三男雄を追う。
「まって!みのっち!」
小豆は目の前を行く2人の背中に駿馬の姿を重ねまた涙を流す。




